ピロン
1つの聞き慣れた音が部屋に響く。
そして固い決意を込めた紙を手に握る。
既に紙は手汗で濡れていた。
discordに入ると、既に全員集まっていたが、 誰も会話をしていない。
けれどマイクはONのまま。
小さな物音ですら部屋いっぱいに反響し、やがて静まり返る。
決めたんだから、やるしかない。
そう自分の中で思いを乗せて、口を開く。
☃️「…みんな、」
☃️「寂しくない、の…?」
まとまりのない内容で、聞いてもらえるか不安で仕方なかった。
微かに震えを含んだ、ビブラートがついたような声であると自分でも分かるくらい。
空間は静かなままで、でも何か小さな物音が聞こえる気がする。
少し気まずい空気が流れ、その場に居られなくなる前に。
手元の紙きれを見て、深呼吸を1つし、話し始める。
☃️「あの日…みんなの絆がバラバラになった日…。」
☃️「今でも鮮明に覚えてます」
☃️「もっと自分に、なにか出来たんじゃないかって」
☃️「何か…言えたんじゃないかって」
☃️「後悔の気持ちで、いっぱいでした」
☃️「無力な自分を責めたくなりました」
☃️「そしてそれは、今も同じです」
☃️「今の今まで、何で話してこなかったんだろうって」
☃️「ずっと臆病な自分のままで居て」
☃️「何も変わりはしないこの関係」
☃️「…せめて、もう少し早ければ」
☃️「もう少し…ッ」
☃️「苦しみがッ、なかったのかなってッ…!」
目元が熱い。何かが零れ落ちるような感覚。
後悔。寂しさ。悔しさ。無力さ。
溢れ出る想いを重ね、言葉を積み上げる。
☃️「僕はッ…みんなと話せない毎日がッ」
☃️「辛くて…苦しくて… 」
☃️「だからッ…!!」
更に最たる想いを、誰かが聞いているのか分からない空間で、語りかける。ぶつける。
──────はずだった、その瞬間。
『おらふくん』
誰かに自分の名を呼ばれ、思わず言葉を引っ込める。
それどころか、何を言おうとしていたか手に握っていた物を見ても暫く思い出せなかった。
自分の思っている以上に動揺していた。
何処か温かみと懐かしさを含んだ声で呼ばれたのだから、尚更。
🍌「まず、最初に言わなきゃいけないことがある…」
僕の名前を呼んだのはおんりーだった。
何を言われるのか、半ば上の空の心のまま少し身構えようとする。
🍌『苦しい思いをさせて、ごめんね。』
想像していた言葉よりもずっと重くて、でもどこかが軽くなると同時にずっしりとした何かが胸にのしかかるような気がした。
そして不意に、視界がぼやけた。
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