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翌日。返却された数学の定期テストの結果を見て、渉は勝ち誇った笑みを浮かべた。
「……フハッ、勝った! 勝ったぞ、筋肉ダルマ!」
渉が突き出した答案用紙には、赤い文字で大きく『100』と書かれている。一方、瑠衣の点数は『98』。証明問題のケアレスミスで、惜しくも2点を落としていた。
「マジか、負けたわ。渉、おめでとう」
瑠衣がいつも通り爽やかに笑うと、渉はそれが気に入らないと言わんばかりに、ツンと顎を尖らせて鼻で笑った。
「フン、当然だ。お前が昨日、僕の時間を無駄に奪ったからな。お前がミスりそうな難問を予測して叩き込んでおいたんだよ。僕の頭脳にひれ伏せ!」
相変わらず可愛げの欠片もないクソガキ発言だが、勝てたのが相当嬉しいのか、渉の口元はニヤニヤと緩みっぱなしだ。
「はいはい、凄い凄い。で? 勝った渉様は、俺に何か命令でもあるわけ?」
瑠衣が机に頬杖をつき、面白そうに覗き込んでくる。すると、渉は不敵な笑みを浮かべ、ポケットから1枚のメモ帳を差し出してきた。そこにはびっしりと、学年中の「女子の連絡先」や「ファンクラブの噂」が分析されたデータが書かれていた。
「今日から1週間、お前に告白してくる他校の女子、全員『好きな奴(男)がいるから無理』って言って断れ」
「……は?」
「お前がモテるの、見てて虫酸が走るんだよ。その無駄に爽やかなイケメンのツラを台無しにしてやる。男子校の『東寺田』で男が好きとか、一気に噂が広まってファンも全滅するだろ。せいぜい絶望しろ」
ふんぞり返る渉を見て、瑠衣はしばらく絶句していたが、やがて肩を震わせて笑い出した。
「くくっ、あはは! お前、100点取ってやりたかったことがそれ? 嫌がらせの方向性がクソガキすぎるだろ。いいよ、契約成立。今日から全員そうやって断るわ」
「……え?」
あまりにもあっさりと承諾され、渉の拍子抜けしたような声が漏れた。もっと嫌がったり、絶望したりする顔が見られると思ったのに、瑠衣はどこか楽し気にすら見える。
「じゃ、さっそく実行するわ。……ほら、これ」
瑠衣はスマホの画面を渉の目の前に突きつけた。ちょうど他校の女子から届いていた告白のメッセージだ。瑠衣はその場で慣れた手つきで文字を入力し、送信ボタンを押した。
【ごめん、他に好きな人がいるんだ。……男なんだけど。】
「っ、本当に送りやがった……!」
「命令だからね。でもさ、これだと『誰が好きなの?』って絶対に聞かれるよね」
瑠衣はスマホをポケットにしまうと、椅子に座ったままの渉の机に両手を突き、ぐいっと顔を近づけた。完璧なイケメンの顔が、逃げられない至近距離まで迫る。
「男子校で『男が好き』って噂が広まるなら、俺の『好きな男』役、お前がやってよ」
「はあ!? 何言って……っ、誰がそんなこと」
「だって、言い出しっぺはお前だし。それに、俺をこんな目に遭わせておいて、自分だけ無傷でいられると思ったら大間違いだよ、渉」
瑠衣が意地悪く、でも極上の笑みを浮かべると、渉の脳みそは完全にフリーズした。瑠衣のプライドをへし折って孤立させるはずが、気付けば自分がその「男が好き」な噂の渦中に引きずり込まれそうになっている。
「ぼ、僕はそんなの、絶対認めないからな……!」
渉はボッと音がしそうなほど顔を真っ赤にし、カバンを掴んで立ち上がった。愛嬌皆無のくそガキらしく、精一杯の睨みを利かせるが、耳まで真っ赤なのは隠せていない。
「明日も学校で、他校の女子に言いふらすからね。俺の好きな奴は、東寺田中で一番可愛げのないクソガキだって」
「お前、本当に変態筋肉ダルマ……!! 死ね!!」
渉は捨て台詞を残し、教室のドアを乱暴に閉めて飛び出していった。静まり返った教室で、瑠衣は渉が走って逃げていく足音を聞きながら、楽しそうにクスクスと笑い続けるのだった。
コメント
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みぅです🤍🥀 渉くん、100点取ったのにまんまと返り討ちに遭ってて笑った…! テスト勉強で仕留めたつもりが、まさかの「好きな男役やれ」返しで真っ赤になって逃げるところ、完全にやられ役じゃん🥀 でも僕は瑠衣くんのこういう、ニコニコしながら確実に相手を絡め取っていく感じ、めっちゃ好き。勝ったと思ったら逆転されるの、読んでてゾクゾクしました…🌙 次の展開も楽しみにしてますね!