テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
家に帰ると、母は父と話し込んでいて、二人きりになる時間ができた。
「……また今日も学校で聞かれちゃった」
〇〇が小さくつぶやくと、亮は軽く笑った。
「うん。でも〇〇、全然気にしてないみたいだし、俺も安心した」
二人でソファに並んで座りながら、テレビをぼんやり眺める。
亮は時々、冗談っぽく〇〇をからかいながらも、肩や髪に軽く触れてみたり。
家でも学校でも、二人だけの特別な時間――
甘くて、でもまだ恋愛にはならない、不思議な日常が続いていった。
翌日
〇〇はテスト返却の片付けをしていると、亮がクラスの女子の一人に話しかけているのが目に入った。
「わからないところあるなら教えるよ」
亮の笑顔はいつもの優しい顔。
でもそれが、〇〇には少し刺さった。
(……なんで、私じゃなくてあの子に……?)
胸がぎゅっと苦しくなる。
でもすぐに思い直す。
(これくらいは我慢しないと…)
亮は気づかずに丁寧に教え続けている。
〇〇は視線をそらして、心の中で小さくため息をついた。
(……私、なんでこんなに気になるんだろう)
自分の胸の奥に芽生えた感情に、〇〇は戸惑いながらも、表情には出さないように必死だった。
それでも、心のどこかで亮に注目されたい気持ちが芽生えていることは隠せなかった。
授業が終わり、教室を出るとき、亮はいつも通り隣にきた。
「〇〇、帰ろう」
何もなかったように声をかけ肩に手を回す亮に、〇〇は心臓が高鳴りながらも、平静を装って頷く。
(……家族なのに、なんでこんなにドキドキするんだろう)
帰り道も、浜辺みたいに特別な場所ではないけれど、〇〇の胸の中は小さな嵐のように騒いでいた。
それでも表には出さず、亮と一緒に歩きながら、少しずつ心を落ち着ける。
――恋愛じゃなくても、亮と過ごす時間は特別。
だけど、その特別な気持ちを、まだ誰にも見せられない。
第7話
〜完〜