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テラーノベルの小説コンテスト 第3回テノコン 2024年7月1日〜9月30日まで
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一方――。

「成海、今日この後時間ある?」

退勤後、残業もなく帰宅しようと思っていた時に遥さんから話しかけられた。


「はい、大丈夫です」


「ありがとう。私もすぐ行くから一階のエントランスで待っていてくれる?」


「わかりました」


私、なにかミスとかしたかな?

いや、業務内のことだったら社内できちんと注意してくれるもんね。

なんだろう。遥さん、機嫌も悪くなさそうだったし……。

そう思いながら一階のエントランスで待っていると

「お疲れ様」

遥さんが声をかけてくれた。


「お疲れ様です」


「駅まで一緒に帰ろうか。ごめんね、呼び出しちゃって……。実は、桜にお願いがあって?」


お願い?遥さんからのお願いってなんだろう。


「遥さんのお願いってなんですか?私で力になれることなら良いんですけど」


「今度の日曜日、何か予定とかある?」


今度の日曜日、特に予定はない。

蒼さんの家を掃除しようと思っていたくらい。


「用事はないです。お部屋の掃除をしようと思っていたくらいで」


私の返答を聞くと、遥さんがパッと笑顔になった。


「良かった。実はね、遊園地のチケットを貰ったんだけど、一緒に行かない?その日、旦那が休みなの。だから日中だけなら子どもを旦那に見てもらえるし……」


遥さんと遊園地。


「えっ!?良いんですか!?行きたいです!」

遥さんと遊園地なんて、絶対楽しいに決まっている。


「そっか。良かった!!じゃあ詳しいことはまた連絡するから、その日、空けといて」

「はい、わかりました」

遥さんは要件だけ私に伝えると、足早に帰って行った。

嬉しいな。胸が躍る。


帰宅し、いつも通り夕ご飯の支度をする。

夕食を済ませ、お風呂に入り、テレビを見ていた。

そろそろ蒼さん帰って来ないかな。

時計を見ると、二十四時を過ぎた頃だった。


<ガチャン>


玄関のドアが開く音がした。


あっ、帰って来た!

「おかえりなさい」

いつも通り出迎える。


「ただいま。良い子にしてた?」


いつ見ても、椿さん《蒼》は綺麗だ。


「はいっ」


「私、このままお風呂に入って来るから。先に寝てていいからね?」


「わかりました。夕ご飯はいつも通り、テーブルの上に出しておきます」


「ありがとう」

フッと微笑みかけられる。

ドキッ。

何回見ても、女の私でもドキドキしちゃう。


蒼さんがバスルームへ向かい、私は蒼さんがすぐ食べられるように夕ご飯をテーブルに並べる。

あっ、今日、遥さんから日曜日に遊園地に誘われたこと、一応伝えておいた方が良いかな。

なんとなくそう思い、リビングで蒼さんがお風呂から出てくるのを待っていた。


「どうした、桜。寝なくて平気?」

蒼さんがお風呂から上がり、リビングへ戻ってきた。


「あっ。ちょっとしたことなんですけど、今度の日曜日、遊園地に誘われたので、行ってきます」

もう遥さんから連絡来ているかな。

蒼さんは私の言葉にしばらく何も言わなかった。


もしかして怒っている?

部屋を借りたり、生活費をほとんど出してもらっているから、そんな贅沢しちゃいけないよね。

でも……。

蒼さんだったら「そっか。良かったな。行っておいで?」って言ってくれると思っていた自分がいた。甘えてた。


「ごめんなさい!やっぱり断ります!こんな贅沢な生活をさせてもらっている分際で、遊園地なんて……。遊園地はチケットが余っているからって誘われたんですけど……。ごめんなさい!」


蒼さんに嫌われるのが怖い。

この前、自覚してしまった気持ち。

私は彼に恋愛感情を抱いてしまっている。

けど、報われるはずのない恋だから自然と諦めるしかない。


蒼さんとは今みたいな関係で仲良くしていたい。この関係は壊したくない。


「いや、ごめん。そんなこと思ってないから行っておいで。たまには息抜きも必要だし……。すぐに返事できなくてごめんな」


「いいえ。私、蒼さんが優しいからずっと甘えてしまっていて……。あっ、そうだ。蒼さんは日曜日、お仕事ですか?もし良かったら、私の代わりに行って来てください。その方が《《遥さん》》も喜ぶと思いますし……」


そうだ。私じゃなくて、蒼さんが遥さんと一緒に行けば良いんだ。

なんだかんだで仲良しだし。


「えっ、ちょっと待って。誘われたのって、姉ちゃんから?」


「はい、遥さんが誘ってくれました」


蒼さんの「はぁ」と言う声が漏れたのが聞こえた。


「ごめん。今勘違いをして。男から遊園地に誘われたかと思っちゃったんだ。だから……。何て言うか、すぐ返事出来なくてさ?」


えっ?あっ、そうか。

最初、遥さんから誘われたって言わなかったから。


「すみません。遥さんから誘われて……」


「あ―。びっくりした」


蒼さんはソファーに座った。


「桜が男と遊園地に行くと思って想像して、いろいろ心配になったのもあるし、正直、嫉妬もした。姉ちゃんとか……。安心した」


嫉妬?どうして嫉妬なんてするんだろう。


「俺も日曜日、蘭子さんに誘われて外出する予定なんだ。姉ちゃんと遊園地、行ってきな。楽しんでおいで?」


蒼さんも蘭子ママさんと出かけるんだ。どこ行くのかな。


「どこに行くんですか?」

「んー。なんか今度教えるって言われてはぐらかされた。どこ行くんだろう」

天井を見ながら、蒼さんは呟いていた。


「あっ、ごめんなさい。蒼さん、ご飯冷めちゃいます!」

「あぁ、そうだな」

その後はいつも通り別々の時間を過ごした。


蒼さんと遊園地……。

いつか行ってみたい。

そんな我儘な妄想をしながら、私は眠りについた。

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