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輝瀬黒(ペア画中
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うわあ、このエピソード、めちゃくちゃ好きです。ボスの「ちっさ」に対する主人公の口滑り、あれで一気に距離感が掴めましたね。それでいて母親たちの過去――小さい頃からKEELにいた、体術だけで全てを乗り越えてきた、誰にも追いつけないスピード――という情報がボスからぽろぽろ出てくる。しかも「今どこにいるか私たちも知らない」ってオチ。この“知らないを知る”構造、設定として本当に巧いです。伏線の掘り方が丁寧で、読んでてゾクゾクしました。
廊下の一番奥へたどり着いた。今までにない重厚な雰囲気が溢れるその扉に手をかけた。1枚がとても分厚く、とても重い。部屋は最小限の光になっていて、細かい部分まではあまり見えない。でも、ハッキリと人影は見えた。
「誰かな?」
「御神愛楽です。レヴィとペアを組んでます」
「レヴィはどこにいる?信用ならん」
「れ、レヴィは…まきをさんに連れていかれました」
「あっ、そうなの?そりゃあ仕方ないわ」
急な軽い喋り方にずっこけそうになる。その時、部屋の明かりがパッとついた。
「あどーもどーも、KEELのボスです」
「…ちっさ」
「え?」
「あ」
思わず口を手で塞いだ。本音がついこぼれてしまい、殺されると思って立ちすくむ。ボスは椅子から降りて、私の目の前まで歩いてくる。後ろで手を組みながら。
「本当に御神たちにそっくりだねぇ」
「えっ?」
「髪色とか目の形のような見た目もそうだけど、そうやって本音を隠せないところがよく似てる」
「ど、どうも…?」
急に褒められてどうリアクションしたらいいのか分からなくなる。とりあえずお母さんたちの娘として信用されているみたいだ。
「レヴィのペアになったんだろ?早速任務を与えようか…それとも」
「違うんです!」
私は今になって思い出した。本来の目的はお母さんたちの任務内容を知ることだ。
「任務をするのは、まだなんです。今日は、お母さんたちの任務内容を知りたくて…」
「あ、そうなの?いいよ」
「いいの!?じゃなくて…いいんですか!?」
「もちろん。今まきをちゃんに過去の資料を持ってこさせるよ。いやぁこんなに真面目な子がKEELに入るとはねぇ。殺し屋の勉強する子は珍しいよ」
違う、この人は勘違いしてる。それか、はぐらかしてる。お母さんたちの今の任務内容を私は聞きたいのだ。
「私は、今お母さんたちがこなしてる任務内容を知りたいんです」
「それはムリだ。今御神たちにやってもらってるのは極秘の重要任務。安易に教えるわけにはいかない」
「でも…っ」
「なぜ知りたい?」
「レヴィから聞きました。命を落とすかもしれない。もう二度と会えなくなるかもしれないって。なら、私たちでサポートできないかって思って」
「はっ、ははははは!」
急に笑われて戸惑ってしまう。こっちは本気なのに、笑われると腹が立って仕方がない。
「いやぁごめんごめん。君たちにできるわけがないんだよ。あの子たちのサポートなんて」
「なんで、そう言い切れるんですか」
「あの子たちは小さい頃からここにいてね。あれでも裏の社会では名の知れた殺し屋さ」
「うそ…」
衝撃だった。あんな脳天気なお母さんたちが有名人だなんて。しかも、小さい頃からKEELにいたという。
「嘘じゃないさ。あの子たちには厳しく指導してきた。体術だけを教えてしまったのが私の後悔だけど、体術だけで全て乗り越えられる力を身につけた」
「でも、レヴィがそれだけじゃ越えられない壁もあるって」
「そうかもしれない」
「だから、私たちでサポートを」
「今どこにいるのかも知らないのに?」
「それを教えて欲しくて」
「無理だね」
「なんでですか!」
「私たちも知らないからさ」
「…え?」
私はボスの顔を見た。笑顔だけど、眉間にはシワが寄せられていた。
「あの子たちにGPSはついてないし、定期連絡も必要ないと言ってる。何より、速すぎるんだよ」
「速すぎる?」
「私たちが追っても絶対に追いつかない。だから、今の場所がわかっても数分後にはすぐどこかへ移動するだろう」
「でも、潜伏したりとかしないんですか」
「しないね、あの子たちは。敵が移動する先を目指すから。そういう動き方を教えたんだよ」
つまり、私たちは手出できないのだ。今現在もお母さんたちは誰にも追いつけないスピードで敵の先を目指しているかもしれない。私たちが脳を回すよりも速く。
「だから、今は見守っててあげよう」
「…はい」
私はお母さんたちを知らなかったのだ。