その日の仕事は、誰もがプロ意識だけで乗り切った。
康二の体調を最優先に、撮影は早々に切り上げられる。楽屋では誰も康二を一人にせず、常に誰かがそばに付き添った。
そして仕事が終わると、まるで壊れ物を運ぶかのように、8人全員で康二を自宅マンションまで送り届けた。
康二が部屋のドアの向こうに消え、エレベーターの扉が閉まった瞬間。
8人が纏っていた穏やかな空気は、跡形もなく消え失せた。
💛…阿部の家、行くぞ
岩本が、地を這うような低い声で言った。誰も、それに異論を唱える者はいなかった。
そして数十分後。阿部亮平の自宅リビングでは、これまでで最も重く、殺気に満ちた話し合いが開かれていた。
💜…で?阿部ちゃん。さっきのアレ、どういうつもり?
ソファに深く腰掛けた深澤が、テーブルに肘をつきながら口火を切る。その目は全く笑っていなかった。
💙あんなにあいつが追い詰められてんのに、『言わなくていい』って…マジで意味わかんねぇんだけど
渡辺も、隠すことなく苛立ちを露わにする。
他のメンバーも、説明を求めるように阿部を睨みつけていた。
しかし、その視線を一身に浴びながらも、阿部は驚くほど冷静だった。
彼はテーブルに置かれたホワイトボードマーカーを手に取ると、すっと立ち上がった。
💚みんなが怒る気持ちはわかる。でも、聞いてほしい。あれが犯人を捕まえるための、一番確実な方法なんだ
そして、彼はホワイトボードに一つの名前を書いた。
『スタッフA』
💚俺と佐久間は、前からこいつが康二にだけ当たりがキツいことに気づいてた。
おそらく、犯人は100%こいつだ
阿部は、これまでの経緯とAの怪しい言動を、よどみなく説明していく。
💚康二は、自分を責めてる。
だから、俺たちが問い詰めても絶対に犯人の名前は言わない。
💚それどころか、俺たちが犯人を探そうとしてるって知ったらまた心を閉ざして、自分一人で抱え込もうとするだろうから
だから、と阿部は続けた。
💚だから…俺たちは、康二の前では『もうこの話は終わり。犯人探しはしない』っていうスタンスを貫く必要があるんだ。
💚あいつを完全に安心させるためにね
🖤…安心させて、どうすんだよ
目黒が、低い声で問う。阿部は、その目に宿る殺意を真っ直ぐに見返すと、静かに、しかしはっきりと答えた。
💚油断させるんだよ。犯人を。
阿部は、マーカーで『A』の名前を丸で囲んだ。
💚康二が誰にも言わなかったことで、Aは完全に安心しきってるはずだ。
💚『あいつは誰にも言えない』って高を括ってる。俺たちは、その油断を利用する。
💚あいつがまた康二に手を出そうとした、その『現場』を押さえるんだ。言い逃れできない、完璧な証拠と一緒にね
阿部の瞳は、いつものクイズ番組で見せるような、知的な輝きを放っていた。
しかし、そこに宿っているのは、クイズを楽しむような明るさではない。
獲物を追い詰める、冷徹な狩人の光だった。
リビングは、水を打ったように静まり返った。誰もが、阿部の計画の全貌を理解し、そして戦慄していた。
🩷ははっ…最高じゃん
最初に沈黙を破ったのは、佐久間だった。その顔には、いつもの笑顔とは似ても似つかない、獰猛な笑みが浮かんでいた。
🩷そいつ、どうする?半殺しでいい?
その物騒な一言を皮切りに、8人のベクトルは、再び、そして完璧に一つになった。
康二を守る。
そして犯人を、地獄に叩き落とす。
静かな住宅街の一室で、Snow Man史上、最も冷酷な作戦会議が始まった。
コメント
8件

あべちゃんの頭脳作戦輝いてる
さすがっ!!あべちゃん!!

なるほど〜‼️‼️‼️‼️