テラーノベル
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_雪也Side_
春_それは出会いの季節
人々は出会い__そして共に過ごした時間に別れを告げる
そんな季節に_俺達も別れを告げた
だが_似合わない
_XX年前煌Side_
黒_黒_黒_黒_黒_黒_黒________.
この季節に_一番と似合わない
規則正しく並べられた指定席に_一色で着飾ることも知らない人々が集う
主役を知らない百合の花は_俺達に精一杯の反抗講義を続けていた
だが_歯車を止めた俺の目に_そんなものは写らなかった
見ず知らずの和服を身に纏う男性は_もうそこには居ないアイツに対し_念を祈っていた
どんどん耳から遠くなり_どんどん姿は近くなる
大きな額縁に閉じ籠もった琳は_満面の笑みで俺を迎えている
こんなに笑っているお前は_何処に居るっていうんだろう_
渋い色で包まれたこの会場で_お前がこの笑顔になることなどない_
赤・黄・青・緑
こんな色が好きなんなんでしょ_俺しか知らないのかな
おばさんも居るはずなのに_
お前が生きていたならば_真っ先に_「赤がいい!」とか_「こんな色じゃないもん」とか今にも言いそうな
好き_嫌い_そんなものなんて無い世界
境界線で引かれあった供花
もう見えない声も_周りの中で沈黙化していく
小刻みに整う時計の音も_俺の中に前夜7時30分で止まっていた
_煌Side_
トイ・プードルを愛でることを諦め_俺が辞めた分の資料を上司へプレゼン用意へと向かった雪也
「首輪、うんと明るい色にしような」
部屋の掃除を済ませた俺は_ネット通販のカゴを渋滞させながら数年前の出来事を思い返す
カゴの中は暖色で埋められ_疲れた眼球には少しのダメージがあったものの_苦ではなかった
隣では_新しい環境に疲れたのか_それともただ走り回った影響なのか子犬の様子も_少し落ち着いてきたようだ
「お前の名前も、決めないと」
_二日後潤矢Side_
午前九時半_インターホンに指で触れる
鳥の囁きだけが響く廊下には_機械音だけが一人目立ちしていた
当然のように_何度トライしても反応はない
昨夜父に渡された_小さな合鍵を回せば_それに応えるかのように音を鳴らす
ベッドで眠るお前の身は_八ヶ月前と随分変わっていた
目には見たことのない程深いクマ_絡まった茶髪は_元の姿へと帰り初めていた
大きく身体を揺さぶると共に_煌太郎は深い瞼を支え明けた
「煌太郎さぁ、一週間音沙汰無いから来てみたら、大丈夫?」
ゴミ屋敷の中で重い瞼をなんとか支えていたのは_煌だ
散らかりきった資料に_コーヒーのシミが落ちない制服
ソファには_花を放ったブーケが寝そべっている
足場のない程に敷き詰められたゴミ袋と睡眠剤が散々と舞っている
親も心配するわけだ
反応がない_顔を出したのは良いものの_俺の顔に唖然としている
今日ここに俺が立ったのは_実に八ヶ月ぶりだ
どれだけ連絡をしても既読すら付かないお前のことを_両親に頼まれ偵察に来たところだ
働き過ぎか_
ここからよく見えないがシワとシミが共存した制服が_単独に出迎えている
ばらまかれた袋に手が伸びると_細長い_力もとうに抜けたような腕が俺を止める
一瞬口を開けたと思えば_アイツの口から言葉が溢れる
だがそれは_花になりきれずに宙を舞う
「取りあえず、中見るからね?」
俺の口を読みっ取ったのか_煌太郎は何も言わずにただ_俯くばかりと
袋の中には_多くの睡眠薬
これをいつ_この短期間でこれだけの量を
周りを見渡せば_アイツの名前が書かれた同様な封筒に_大型の紙類が収納されたゴミ袋が広がっている
唯一綺麗と言えるのは_ここ数年使われた形跡のないキッチンと_写真が立てられた小柄なダイニングテーブル一角のみ
水色の小さな額縁の中で存在し続ける彼女は_いつ見ても笑っていた
煌がこの部屋にいる中で_変わらない_いや変われない物を_俺はこれしか知らなかった
煌は変わった_いい意味であれば良かったのかもしれないが_これは_とてもそうとは言えなかった
彼女が死んだ二年前から_おかしくも歪みつつある煌の中で_何を安定剤に生きてきたのか
血の交えた両親や俺でも_解らなかった
_煌Side_
午前九時半過ぎ_久々な人肌の揺さぶりで身体は期待のように意思を明ける
珍しくもンリの声は俺に届かず_珍しくも日差しが眩しいと感じた
昨日まで俺を抑えていたこの部屋は_数日前と同じ有り様か_それよりもヒドイのか
それこそもわからずに朝日を受ける
ンリのベッドが届いたのだろうか_
それよりも_あの後俺は購入までしたのだろうか
昨日のことだと理解するはずが_強意の頭痛に見舞われるザマに考える暇など無い
俺の足と床が不協和音を奏でようとも_俺の耳にそんなものは届かない
ただ_そこに居たのが雪也らしき人間だということは_俺でもなんとか理解したようだ
「煌太郎さぁ、一週間音沙汰無いから来てみたら、大丈夫?」
俺を見つめながらも床に手を落とした人_人
雪也だろうか_容姿に変わりはないようだが_一つ
目元のホクロが妙にも目に留まった
それが_周囲との色別作用のせいなのか
それとも___違和感から来たのか
処理が遅れるほどにブーケの花びらが目に散らつく
辞めたはずの制服_粗大ごみで思い切って捨てきったはずの資料_
ソファには_何処かで見覚えのある地味なブーケが任務を果たしていた
ンリのゲージがあったはずの位置には_ファイルノートを
雪也と喋った玄関には_収納された袋を七つ
俺が用意しているようだ
俺が___?何のために
頭を持っても抱えられないような莫大の情報は_更に俺に留めを刺す
人が_俺のものに触れた
触れた_知っている
でもなぜ?_でもなぜ_こんなに俺は焦っている
これまでもあったのに_散々と触られてきただろう
アイツにも_雪也にも
ここに居るのは_雪也だ
いや_違う
雪也のようで_雪也でないのかもしれない
でもなぜ_俺に身に覚えのない袋
ならば触られても大丈夫_なんの異常も無い_
無い_?
あ__
咄嗟に口が開いた
助けてと_やめてと叫んだ
だが_たった三文字なはずなのに_その三文字に対して俺の喉がやけに乾く_
緊張だろうか
人の手には_小さな錠剤
身に覚えはない
たった三文字の言葉なのに_人の口は倍同様に動きを見せる
焦っていた_
そうだ_でも_誰が?
俺が?_それとも_人が?
分からない_俺も焦っていた
でも_人の顔は_もう焦りを通り越し_感情は「名前が欲しい」と願っていた
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ふぉぉぉおおおおおお