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風花🎧🫧🥀@中学受験生
219
かんな
123
「おい、万事屋……!」
荒い息を吐きながら、俺は副長室の襖を勢いよくぶち破った。
そこにいたのは、俺の座椅子にどっかりと腰掛け、総悟が置いていったハート型の菓子箱をこれ見よがしに指先で弄んでいる、あの忌々しい天然パーマの男だった。
俺の姿が視界に入った瞬間、あいつの死んだ魚のような目が嘘みたいにキラキラと輝き、その口元がだらしなく、しかし最高に嬉しそうに釣り上がる。
「ひーじかーたくーん! 俺のことそんなに大好きだったのー?」
ねっとりとした、上機嫌極まりない声。
あいつは座椅子から弾かれたように立ち上がると、大股でこちらへ歩み寄り、抵抗する隙も与えずに俺の身体を正面から力いっぱい抱きしめてきた。
「がはっ……! てめぇ、何しやがる……!」
「何しやがるじゃねーよ! 聞いたぞ山崎から! 他の女のチョコは全部ゴミに回して、銀さんへのハート型だけは大事に引き出しの奥底に封印してたんだって? もー、可愛いとこあんじゃん土方くん! だったら昼間、路地裏でうじうじしてねぇでさっさと渡しに来いよなァ!」
腕の中にすっぽりと収まった土方の身体は、夜回りの後だからか、驚くほど冷え切っていた。
だけど、俺が抱きついた瞬間に、その背中がビクッと強張って、それからみるみるうちに耳の裏まで真っ赤に染まっていくのが分かって、愛おしさが限界突破する。
昼間、あんなに寂しそうにチョコを抱えてたあいつが、まさか俺への本命チョコを引き出しに隠してただなんて、思ってもみなかった。男から貰うチョコなんて、とか、余計なことを考えて一人で勝手に傷ついてたんだろう。バカだろ。
バカだけど、そこまで俺のことで頭を悩ませてたんだと思ったら、もう心臓がバックバクで堪らねぇ。
「ほら、冷てぇ。どんだけ外でうろついてたんだよお前は。銀さんの極上の糖分摂取タイム、お前のせいで何時間遅れたと思ってんだ」
耳元で囁かれる、あの甘ったるくもあるが、ひどく暖かいあいつの吐息。
鼻腔をくすぐる、安っぽい駄菓子の匂いと、あいつ自身の匂い。
そして、俺の首筋に容赦なく擦りつけられる、あの不揃いでモジャモジャな天然パーマの感触。
それらすべてが、あり得ないほどの至近距離で、俺の五感を容赦なく支配していく。
(……あぁ、クソ……本当に、アイツだ……)
俺から逃げていたどころか、俺の部屋で、俺を待っていてくれた。
総悟の付箋のせいで、何故か
「俺がハートのチョコを用意していた」
という凄まじい大誤解が生じているが、そんな勘違いをしてまで、あいつは俺に抱きついて
「大好きだったの?」
なんて聞いてきているのだ。
あまりの幸福感と、すぐ傍にあるあいつの体温に、俺の理性の限界は一瞬で吹き飛んだ。
「……勘違いすんじゃねぇ、万事屋」
俺は震える手で、あいつの白い着物の背中をぎゅっと掴み返した。これ以上ないほど強く、もう二度と離さないと言わんばかりに、あいつの胸に顔を埋める。
「そのハート型は総悟の悪戯だ。……俺が、てめぇのために買ったのは……」
自由になった左手を懐に滑り込ませ、ずっと俺の胸を焦がし続けていた、あの銀色の小さな包みを引き抜く。
そして、あいつの視線の前に、ぶっきらぼうに突き付けた。
「……こっちだ、コノヤロー」
一瞬、銀時が丸い目をさらに丸くしてきょとんとした。
だが、すぐに俺の意図を察したのか、その顔が、今日一番の、見たこともないほど優しくて甘い笑みに変わる。
「……へぇ。じゃあ、銀さん両方貰っちゃっていいわけ? ハート型も、その銀色のも、あと……お前自身もさァ」
「うるせぇ……全部、くれてやるよ」
冷え切っていた真冬の副長室は、二人の不器用で、だけど溢れんばかりの熱い想いによって、あっという間に甘い糖分の色で満たされていった。
コメント
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あおいです🤍 第10話、めちゃくちゃ良かったです……! 銀さんが土方くんの背中の強張りや耳の裏の赤みを感じ取るところ、あの距離感の描写がもう胸に刺さりました。誤解から生まれた“両方貰っちゃう”の流れも不器用な二人にぴったりで、ラストの甘さにやられました。バレンタインにぴったりの一編ですね🌷