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───数時間前────
佐野はドラマの撮影現場に到着していた。朝から愛しの吉田と甘い朝を過ごせてご機嫌だった。その様子は誰が見ても上機嫌なんだとわかるほどに。
吉田パワーのおかげか、いつもよりも撮影に身が入る。真面目すぎる性格のせいでアドリブなどは前日までに念入りに考えてからしかしてこなかったのにこの日は何故かその場でスラスラと出てきた。そのくらい調子が良かった。
おかげでドラマの撮影は1時間も巻で終わらせることができた。これで1時間早く吉田に会えると佐野は歓喜した。
楽屋で荷物の整理をしているとドアがコンコンと鳴った。吉田と会えることが楽しみすぎて「はーい」と気の抜けた返事をすると今共演中の女優が入ってきた。女優のキツイ香水の匂いが楽屋中に振りまかれる。佐野は正直この匂いが苦手だった。
「おじゃましまーす。勇斗くん今時間ある?あるよね。」
正直ないと言いたかった。1秒でも早く吉田に会いに行きたいからだった。だがここで断れば印象が悪くなる。のもあるが女優から放たれる雰囲気が逃がさないとでもいいたげに感じとれたため、ほぼ反射で承知してしまった。
「なんです?」
「んーぶっちゃけ言っちゃうとね。私勇斗くんのことが好きになっちゃった。だから付き合ってくれない?」
またか。と佐野は思った。学生の頃から何かと女性に言い寄られることが多かった佐野は告白されるなんてこともう数え切れないほど経験して来た。今回もそのなんでもない1回だと思った。
いつも通り断ろうと口を開いた瞬間、その女優は続けて言った。
「あ、ちなみに断れないよ?」
は?断れない?どういうことだ。
意味がわからず立ち止まっていると女優はスマホを取り出し画面を少し操作すると一枚の写真を佐野の前に出した。
画面の中に写っていたのは今朝の佐野と吉田だった。唇が合わさっている瞬間をバッチリ撮られている。佐野の目はスマホの画面に釘付けになっていた。どこからどう見ても佐野と吉田だった。
なんで。どうやって。どうして。
疑問だけで頭の中が埋め尽くされる。何も言えない佐野を見て女優はスマホの奥で怪しく笑う。スマホを自分に向け、画面をスッスッと操作する。
「これ、なんの写真かわかるよね?これ色んな週刊誌に送ったりーSNSでばらまいちゃおっかなー。」
佐野は目の色を変えスマホを持つその細い手首をガっと掴んだ。それにも女優は動じることなく続ける。
「こればらまいたらどうなるだろうねー?まぁ少なくともM!LKは終わるよね。何よりリーダーの吉田くん?だっけ?まぁ名前なんてどうでもいいけど。彼はどう思うかな。自分の色恋沙汰で10年以上続けてきたグループが壊れるなんてなったら。」
怒りのあまり佐野の呼吸が荒くなる。佐野は誰よりもM!LKを愛している。この10年間どの仕事をしてもM!LKのためだと思えば頑張れた。それが今自分と愛する恋人の一枚の写真で壊されそうになっている。その事実が悲しいと共に女優に対して、自分に対しての怒りが腹の底からグツグツと煮え上がってくる。
「これ、ばらまかれたくなかったらその吉田?とかいう男なんかと別れて私と付き合って?あの女に全く揺らがないって業界でも有名な佐野勇斗をゲットした私って最高に魅力的じゃん?それに……あんただってそんな男よりも女の私の方が絶対にいいと思うよ?」
吉田を貶された。それが佐野は許せなかった。愛する恋人を、メンバーを、チームのリーダーを。こんなふざけた理由で壊されてたまるか。だったら俺が自分で。
そう思った。自分から吉田に嫌われればいい。吉田がもう佐野を見たくなくなるほどに。そうすればM!LKは壊れることはない。佐野と吉田がただ気まずいだけ。そうすればいい。
怒りで沸騰しそうな脳で何とか絞り出した案はどちらともの首を締めてしまうものだった。
「わかったよ。その条件受けるからその写真今すぐ消してくれ。」
「えーー?どうしよっかなぁまだあんたのこと信用してる訳じゃないし?結構この写真使えそうだからまだ残しとくね。だから逃げるとか考えないでね?」
今すぐにでも殴りかかりそうな程の怒りを覚えたのは初めてだった。怒りを何とか堪えようと力いっぱい拳を握りしめているため、掌に爪がくい込む。その時の佐野は痛みなど感じなかった。これから吉田を自分の手で傷つけないといけない事実の方が何倍も痛かったからだ。
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みえりな@多忙の為あまり居ない
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コメント
2件
え😭😭!!😭え😭😭!!え!😭😭😭😭続きめっちゃ気になります!!更新楽しみにしてますね😭😭😭😭😭😭😭
もう第6話、胸がギュッと苦しくなったよ…😭💔 佐野が吉田を守るために自分から嫌われる道を選ぼうとしてるの、痛すぎる。あの女優の狡猾さも鳥肌もんだし、何より「M!LKを壊したくない」って気持ちがひしひし伝わってきて、切なすぎる…。次の展開が気になって仕方ない!のりもちさん、この胸キュン&胸苦をありがとうございます…!