テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
白い天井を見上げるのが、もう日課みたいになっていた。
音が少ない。
自分の呼吸だけが、やけに大きく感じる。
スマホを手に取る。
何度も、開いては閉じる。
彼の名前は、もうどこにもない。
自分で消したくせに、確認してしまう。
消したのに、まだどこかで繋がっている気がしてしまう。
BeRealだけが残っている。
そこにある写真は、いつもと変わらない。
何でもない日常。
それが、ひどく眩しい。
「……ごめんね」
誰に向けた言葉なのか、自分でも分からない。
ただ、あのときの自分の選択を思い出す。
——別れたほうがいい。
——君を、これ以上巻き込みたくない。
そう思ったはずなのに。
今、こうして一人でいる方が、ずっと苦しい。
彼の顔を思い出す。
困ったように笑う癖。
優しく名前を呼ぶ声。
それを全部、自分から手放した。
「……会いたい」
小さく呟いても、届く相手はいない。
もう遅い。
そう分かっているのに、諦めきれない。
スマホの画面を見つめる。
ブロックした連絡先たち。
もう戻せないわけじゃないのに、戻す勇気もない。
——それでも。
最後に残したかったのは、きっとこれだった。
彼と繋がっていた“唯一の場所”。
「気づいてくれるかな……」
そんな小さな願いだけを残して。
目を閉じると、夜の海が浮かぶ。
あの日、手を繋いで歩いた感触。
——ごめんね。
本当は、ずっと一緒にいたかった。
その言葉は、もうどこにも届かないまま。
555
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!