テラーノベル
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仕方無さそうに許可を出してくれたギレスラと、消極的に賛成してくれたペトラの様子を確認したレイブは二つ三つ咳き込んでからラマスに向き直って告げたのである。
「じゃあさっきの続きだラマス! 俺でさえ十歳になるまで飲み干す事が出来なかったモンスターの絞り汁を良くぞ飲み干せたなぁ、これは途轍(とてつ)もなく凄い事なんだぞ? なぜならここに一緒に暮らし始めてお前はまだ二ヶ月しか経っていないんだからなぁ! お前が最年少でモンスターの搾り汁を克服出来た、って事なんだっ! 胸を張れ、誇れば良い! これほど幼いというのにぃ、う、うううぅぅ、良く乗り越えられたなラマスぅ…… まだ八歳、九歳か? 幾つだったっけ? ラマス」
ラマスは口中の気持ち悪さと臭みを消す為だろう、ガリガリと自らの舌べらを両手の爪で齧りながら答える。
「え? アタシだったら今十二歳ですよレイブ叔父様、あー、あと少しで十三歳ですけど? それが何なんですか、かぁー苦っ! オエエェー!」
『『…………』』
レイブは表情から色を消し去って、だけれども即座に答えたのである。
「あー、えっとあれだぁ、んと、俺ほどでは無いけど結構早く対応できたよね、って事! 良かったね、えっと、ラマス?」
「そうなんですか? ふーん、うぁ、苦っ、臭っ! もおうぅっ! 本当に嫌っ!」
賞賛の声を一気に曇らせたレイブはこの夜が更けるまで幼いラマスのご機嫌を取り続けるしかなかったのであった。
フォローに徹するために準備を果たしていたギレスラとペトラ、ついでにこのやり取りにすっかり慣れてしまったカタボラとエバンガも、次々と慰めの言葉をラマスに掛けて、いつも通りのこんな夜はいつも通りに更けていくのであった。
更に数ヶ月が過ぎた。
レイブやギレスラ、ペトラ、それにラマスとカタボラにエバンガの日々には特筆すべき変化は一切見る事は出来なかった。
学院の周囲に迫ったモンスターを狩り続け、干し肉を作り続け、岩塩を探しては製塩を欠かさず、燃料となる木材を集め続けて乾燥させては切り割り、学院の備蓄庫へと運び続けていたのである。
それ以外の多くの時間を学院を囲んだ柵の修繕や、引き込んでいる飲み水の水路の整備、ちょいちょいやらざるを得ない下水の始末などが占めていたが、魔術師の学院、バストロ魔術院の生徒たちの目を引いてしまった最たる出来事は、忙しい仕事の合間を縫って所構わず行われていた、レイブがラマスにつけ続けた指導、厳しい戦闘訓練、それであろう。
学院に転入の挨拶をしたその日の内に退学し、『役立たず』であるレイブの内弟子となった事は、同学年の一回生には、程無く知れ渡ってしまったが彼女が注目されたのはその後の事であった。
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