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毎日の様に大量の荷を背負って、学院の備蓄庫へ日に何度も何度も納入に訪れるレイブに従って、よろよろとした足取りで後ろを付いて歩く彼女の姿は全学年の生徒の目に触れる事となった。
『役立たず』が数往復する間に、数分の一の荷物を背負いながら足元をふらつかせながらも一所懸命に歩く彼女の姿は、生徒達に男女の違いなく『頑張れっ!』そんな惻隠の情を沸き立たせたのだ。
いつしか彼らの学科間の準備休憩は、ラマスを見つめ続け内心で応援する時間へと変化して行ったのである。
そんな風に生徒達の習慣が変化し始めてから二ヶ月が過ぎた頃、いつも通りにレイブの背を追いつつも、数回の周回遅れで荷を運んでいたラマスを見つめていた一人の生徒、魔術師見習いの彼がふとある言葉を漏らす。
「あれ? 若(も)しかしてだけど、ラマスさんの背負っている荷物ってぇ、何か増えてないかぁ?」
っ!!
その言葉を聞いた生徒達は改めてよろよろ歩く彼女の背に注目したのである。
そうして気が付いたのだ、背負われている物資、その有り得無い程の物量に……
そして、時を置かずに何人かの生徒、特に分類するとすれば、学院で優秀な成績を修めている生徒を中心に思ったのである。
――――あんなに大量の荷物を? 果たして俺(私)に背負って歩く事が出来るだろうか……
と。
何人かの生徒が、備蓄庫に積まれた荷を背負ってみようと試みた様だが、力自慢だった筈のその生徒達は、揃って数日寝込んでしまい学院を欠席せざる得なくなってしまった。
その日から、生徒達の注目は徐々に増え続けていくラマスの背に負われた荷の量にだけ集中していたのだ。
彼女の背負う物資の量は増え続け、いつしか『役立たず』と同量にまで辿り着き、何日もしない内に往復する回数まで彼に追いついてしまっていた。
生徒達は驚きと共に、彼女の成長に自分達見習いの先行きへの期待を重ねそれまで以上に、応援する気持ちを高めていたのである。
その頃からだ。
物資の搬入を終えたレイブと、彼の後ろを付いて追っているラマスが学院の外、住処である小屋の方へ姿を消した後、大きな衝撃音が響いて来る様になったのである。
音がし始めた最初の内は、一々驚きの声を上げて騒いでいた生徒達であったが、毎日聞こえる音に慣れてしまった後は、然程気にする事も無くなり、元通り自分達の授業に集中して行ったのである。
それまでの間、音が響く度に生徒達を注意し続けた教師や、講師役の魔術師達のどこか懐かしそうな表情も彼等彼女等を落ち着かせる一助となっていたのかも、知れない。
そうして数ヶ月。
魔術師学院の午後は大音量の衝撃音が響き渡る事が常識となっていた。
重く、大きく、時には秒間に十数回の甲高い金属の様な響きを持ってその音は届けられていた。
音は衝撃波を伴い、学院の石造りの校舎は共鳴音と共振を伴って、その力の強さを伝え続けていた。
誰もが気にしなくなった頃、偶然遅刻してきた男子生徒が言った、奇(く)しくもラマスが背に負った荷物が増えた事に最初に気が付いた彼、些事(さじ)に気が付くことに定評があるスカウト村出身のランディである。
「おいおい皆っ! 毎日午後くらいから聞こえてくる馬鹿でかい音の正体が判ったぜぇっ! あれな、『役立たず』のレイブさんとラマスさんが稽古している音だったんだよぉ! 俺、見たんだ!」
ザワッ!!
ランディ・スカウトの目撃談は、アッと言う間に学年を飛び越えて学院中に知れ渡る事となる。