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「やはりお前は奇妙だ……。絶望し切っていたかと思えばまた……その笑みを浮かべるのだな……!」
そして、レオは剣を下ろした。
「悪かった、ヒノト・グレイマン。お前たちに、国や、生徒たちのことを任せ……。救いたいと思ってしまった。俺は……一国の王でありながら……キルロンドも……魔族の民たちも救いたいと思ってしまったのだ……!!」
その言葉に、全員が目を見開く。
「今まで……ヒノトのことは何かあれば “愚民” って呼んでたのに……名前で呼んだ……」
しかし、
ゴォッ!!!
ヒノトは、いきなりレオに剣を向ける。
「何をする……ヒノト・グレイマン……!! やはりおかしくなったのか……!?」
「違ぇよ……!! 謝ってんじゃねぇよ……!!」
その叫びに、キルロンドの全員は苦い顔を浮かべた。
同時に、ヒノトの拳には更に力が入る。
(図らずもコイツは……勇者ラインハルトと、同じ道を選ぶことになったんだな……)
「俺たちに任せた結果がコレ、みたいな、そんな言い方してんじゃねぇ!! お前一人が魔族の力を得たとか、それで王様失格とか……勝手に決めんな!!」
「しかし、俺はすぐに戻らなかった……!! 戻っても意味がない……力を付けなければ同じことの繰り返しだと思った……。しかし……それで今までお前たちのこと、キルロンドのことを見てこなかったのもまた事実だろう!!」
「そうじゃねぇだろ!!」
ゴォン!!
そして、ヒノトはレオを吹き飛ばす。
「お前こそ変わっちまったんじゃねぇか……? 俺のことなんか、いつもみたいに、見下げたツラで “愚民” って呼んでおけばいいんだ……!! お前は、お前のやれることを精一杯……やってきたんだから!!」
再び剣を握るヒノトとレオ……その間に、
「そこまでだ」
仲裁に入ったのは、リオンだった。
「ヒノトくん、レオがこういう性格……一人で抱えるようになってしまったのは、俺が次代の王としての責任を、全てレオに押しやってしまったからなんだ……。悪いのは、長男としての責任から逃れたこと……レオと、向き合ってやれなかった俺が悪いんだ……」
そして、今度はレオに向かい合う。
「今更、ダメな兄貴からこんなことを言われても、レオは何も思えないかも知れない。でも、今になってしまったけど、兄として言わせてくれ。お前は、孤高の王なんかじゃない。お前は、沢山の国民に愛される王だ……!!」
「俺は……もう……キルロンドの王になる資格は、この魔族の力を得た時に……」
「そういう硬い考え、もう要らない! 国もめちゃくちゃで、魔族もみんなも救わなきゃならない。それこそ、魔族蔑視な考え方じゃないのか? むしろ、魔族の力を得たからこそ、今後の国政にはお前が必要なんだろうが!」
「兄貴…………」
「ああ、そうだよ。頼りなくて悪いけど、俺はお前の兄貴なんだ。兄貴って……呼んでくれよ。そんで、ルークを救い出そう。俺たち……二人で……。いや、みんなで……!」
「あぁ……」
そうして、レオは静かに立ち上がった。
「なあ、レオ」
ヒノトは、再びレオに剣を向ける。
「お前との約束、次こそ絶対に果たすからな」
「約束…………?」
「公式戦で……この世界が一つになって、戦士育成の為じゃない、本当の競技として昇華されたブレイバーゲームで、お前をぶっ潰す……!!」
ゾクリと笑うと、レオもまた剣を向ける。
「ふっ……抜かせ。潰すのは、俺だ、”愚民” ……!!」
その言葉に、ヒノトはニシッと笑った。
――
その後、魔族軍四天王 セノの部隊の魔族たち、同じく四天王 織田弓弦と、その部隊の魔族たちも交え、キルロンド生と全員で、今後の会議を進める。
基本的に、キルロンドを代表してレオ、魔族軍を代表して弓弦が会議を進めるが、リオンの提案により、シルフと共にエルフ帝王 アザミ・クレイヴを追い、行方不明になっているルークの救出、また、魔族三王家 アダム=レイス討伐班に向かったきり、連絡が途絶えてしまっているキルの救出を行う為、二班に分かれることとなった。
まず、キルロンドに向かうのは、織田結弦率いる魔族軍と、キルロンド生の半分の部隊。
ヒノト・グレイマン(光/ソードマン)
リリム・サトゥヌシア(闇/ウィッチ)
グラム・ディオール(岩/シールダー)
ロス・アドミネ(風/ファイター)
アズール・ウォール(雷/メイジ)
グロス・ラドリエ(岩/シールダー)
モモ・フレア(炎/メイジ)
ララ・フレア(炎/メイジ)
ルル・フレア(水/メイジ)
ゴヴ・ドウズ(岩/シールダー)
アイク・ランド(水/ナイト)
エル=クラウン(風・闇/ウィザード)
ルルリア=ミスティア(風・闇/ウィッチ)
レオ、リオンを中心に、再びエルフ帝国を訪れ、ルークとキルの救出に向かう部隊。
レオ・キルロンド(雷・炎/ソードマスター)
リオン・キルロンド(水/ガンナー)
ファイ・ソルファ(岩/シールダー)
キラ・ドラゴレオ(雷/ロングソードマン)
ニア・スロートル(氷/メイジ)
キャンディス・ウォーカー(雷/シールダー)
クラウド・ウォーカー(水/シールダー)
リゲル・スコーン(炎/ソードマン)
シャマ・グレア(炎/メイジ)
キース・グランデ(氷/ロングソードマン)
ユス・アクス(水/ナイト)
イーシャン・ブロンド(炎/メイジ)
リューシェン・ブロンド(炎/ヒーラー)
シグマ=マスタング(岩・闇/シールダー)
キルロンドへ向かう部隊は、倭国を通り、更なる戦力の増強を加味し、魔法職の多い部隊を揃え、エルフ帝国へ向かう部隊は、エルフ族の戦力を加味し、前衛・後衛の多い部隊を編成した。
そして、残されたエルフ族の兵士たちは、バランス良く両方の部隊に入る。
「事は一刻を争うが、急いては仕損じるとも言う。今夜はゆっくり休息し、明朝より行動を開始する。もう我々は敵同士ではない。互いに協力し合い、陽の差す未来の為に行動を共にする。一つの命も無駄にするな!!」
セノが居なくなったことで不安の表情を浮かべる者も多かったが、弓弦の一声で、魔族軍の兵士たちはこぞって顔付きが変わった。
「やっぱ、弓弦は俺たちの代でも一味違うよな。流石はセノと張り合ってただけのことはある。部下の兵士たちを奮い立たせる威厳ってのがあるよな」
「そういや、エルやシグマやルルリアって、セノと同級生なんだよな? 弓弦とセノは四天王で……お前たちはどういう立ち位置なんだ……?」
「俺たちはただの部下だよ。まあ、肩書きって他の兵士たちをまとめる為に要してるだけで、弓弦は単体で四天王って言えるけど、セノは俺たち同期組を全員含めて四天王の一角って感じかな」
「じゃあ、他の四天王は……? まだ敵がいるんなら、備えておかないとじゃねぇの……?」
「いや、お前たちが倭国で倒した指揮官を気取っていたリムル=リスティアーナが、四天王の一角だったんだ。セノや弓弦とは反りが合わなくて、でも、他の種族を恨んでいた点から、リリア様のお気に入りだったんだ」
「リリア=サトゥヌシアも魔王の娘で、三王家であるディアブロさんも仕えてる感じだったから、現在の魔王はリリア=サトゥヌシアってことなのか?」
「いや、現在魔王は存在しない。リリア様も、実の娘であることから三王家の一人だ。今の魔族三王家は、リリア様とディアブロさん、そして、レイス家だ」
「なるほどな……。でもそしたら、やっぱり四天王ってもう一人足りなくねぇ……? 四人いるから四天王なんだろ……?」
「最後の四天王は、アダムの妻、エルサ=レイス。しかし彼女と敵対しても、敵になることはない。彼女は魔族切っての発明家であり、戦闘能力はないからな」
キルロンド生、魔族、そして選ばれたエルフ兵士たちは同じ時を過ごし、少しずつ会話を広げ、互いに開かれた距離を少しずつ狭めていく。
この休息は、彼らの心の距離を近付けるのにちょうど良く、様々な相手と交流しながら夜は更けていった。