テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
4件
愛染の桃さんは🐿さん達からクズ男など言われてますけどそこを逆手にあおば様らしくて好きです...、!! 他サイトでも見たことがあるんですけどここでも見れて嬉しいです...💕 青さんの優しさといい桃さんの大人しいけどそこにある可愛さといい最高すぎます! またまたFAにしたい候補が出来てしまいました...😖😖🩷
最高です! 続き待ってます!
これからもがんばってください!! とても読みやすく、よんでいて、世界観に入り込めました!!
【お願い】
こちらはirxsのnmmn作品(青桃)となります
この言葉に見覚えのない方はブラウザバックをお願い致します
ご本人様方とは一切関係ありません
「ありがとう~」の青さん×「愛〇中毒」桃さんのパロ。
愛〇の桃さんってクズっぽい感じで捉えられがちですが、あれってオタク目線からであって、本人はアイドルとしては当然のファンサをしている範疇なんじゃないかな…本当はクズでもなくて、もっと純粋にファンを喜ばせようとしているプロなんじゃないかな…なんて今回は解釈しました。
こういう解釈があってもたまにはいいんじゃない、くらいの気持ちで読んでいただけたら嬉しいです。
限界社畜青×疲れたアイドル桃のお話です(全3話)
毎日毎日自宅と会社の往復ばかり。
山積みのタスクをこなしてふっと息をついた頃にはもう夜が更けている。
疲れ切った顔をした人たちでごった返す電車に乗り、カーブのたびに揉まれるようにして揺られる。
そうしてようやく辿り着いた最寄り駅で見上げた、駅舎の時計。
時刻を確認してはため息が出る。
…あぁ、もう後6時間もしたらまたここに立って出勤しているのか。
逆算したら何時間寝られるんだろう。
夕食はこの際もういい。家に帰り着いたらまずベッドに倒れ込みたい。
一分一秒でも惜しいくらい、自分のことで精いっぱいだ。
人助けなんてしている暇はない。
暇なんてない…のに、どうして足を止めてしまったと自問する。
駅前の、嘘のように綺麗に作り上げられた花壇の縁に腰かけた一人の青年。
キャップを目深に被り、足首を交差させ両腕は自分の身を抱くようにして顔を深く俯けている。
具合が悪いのだろうか。こんな時間だから酔っ払いかもしれない。
それでも考えるよりも先に声をかけてしまっていた。
「大丈夫ですか?」
遠慮がちにかけた声に、彼は弾かれたように顔を上げた。
キャップの下から覗く目がこちらをまっすぐに見据える。
ただそれだけのことだったのに、何故か射抜かれるような感覚を覚えて俺は一歩だけ後ろに後ずさってしまった。
「…あ、大丈夫……です。すみません…」
キャップを被り直し、彼は顔を隠すようにまた俯く。
…雰囲気からして全然大丈夫じゃなさそうだ。
黒いパーカーは厚めで夜の冷え込みに耐えられないわけではなさそうだけれど、確か天気予報はこの後雨だ。ここに放置しておくのも気が引ける。
「お兄さん、住所言えます?タクシー拾いますよ」
花壇のレンガ部分に座っている彼に目線を合わせようと、俺はその場にしゃがんだ。
またこちらを見る瞳。
ピンク色のそれは夜の闇の中でもきれいに煌めいていて、思わず息を飲みかけた。
恐ろしいほど顔の整った青年だった。
多分年は俺とさほど変わらない。
だけどこんなくたびれたスーツと革靴で毎日馬車馬のように働かされる俺とは、生活は全く似ていないのだろう。
首から提げたシルバーのネックレスは何連にもなっているチェーンタイプ。
その上黒いチョーカーまで身に着けていて、派手さは否めない。
限界社畜の自分とは似ても似つかない。
「…家…今帰れなくて…」
ピンク色の瞳がついと逸らされながら、小さくそんな声が返ってきた。
思わず目を見開いて、俺はその逸らされた目を追うように見つめ返してしまう。
キャップの下から覗く前髪も瞳と同じピンク色で、困ったように下げられた眉にかかっていた。
ここにいる理由はそれか。
酔っているわけでも体調が悪いわけでもなくて…。
気づくと、自分の鞄を持つ手にぎゅっと力がこもっていた。
「……じゃあ、うち来ます?」
どうしてそんなことを口にしてしまっていたのか…。
およそ自分らしくないそんな言葉が自分の耳を通して脳に返ってくる。
俺が自分に驚いたのと同じように、目の前の美青年も大きく目を瞠った。
そんな成り行きで家に連れ帰った青年は、「ないこ」と名乗った。
苗字は知らない。
一晩泊めてやるからと恩着せがましく無理に聞き出す気も起きなかった。
年は俺の2つ下らしい。
どこまで本当かなんて分からなかったけれど、それが嘘だとしても俺にとっては大した問題じゃない。
「何か食べる? って言ってもカップ麺とか冷凍食品みたいなんしかないけど」
年下と知ってすっかり敬語をやめ、ソファにちょこんと座った彼にそう声をかける。
遠慮しようとしていたらしかったけれど、腹の方が正直でぐぅと返事をした。
恥ずかしそうに俯いたないこに思わずふはっと笑って、俺は自分の分と一緒に買い置きしていたカップ麺に湯を注ぐ。
自分一人だったら、こんなインスタントの食事すらも摂らずにベッドに雪崩こんでいた。
こんなものでもちゃんと食べようという気になったのは、確実にないこのおかげだ。
大した会話もないまま、2人分の麺を啜る音だけが室内に響く。
ないこがスープまできれいに飲み干してローテーブルにそれを戻した頃、俺はようやく「…明日さ」と改めて口火を切った。
「俺、朝7時には家出るけど、好きなだけ寝て行っていいよ。帰るときは鍵かけてポストに入れて行って」
それだけ言って、食べ終えたカップ麺のプラスチック容器を手に立ち上がる。
そんな俺を、ないこは呆けたような顔で見上げていた。
「? 何?」
訝し気に眉を寄せてその視線の真意を尋ね返すと、あいつは「…あ、いや…」とまた目線を逸らした。
「…それだけ? 事情とか俺のこととか…聞かないの?」
思いがけない言葉が返ってきて、思わずキッチンに戻りかけていた足を止めた。
体ごとくるりと振り返って、ソファのないこを見下ろす。
「それ聞かれたい?」
「………いや」
「じゃあえぇやん、そんなんどうでも」
ふっと笑って言うと、ないこのピンク色の瞳がわずかに揺らいだ気がした。
あ、泣くかも。そう思ったけれど、ぐっと堪えたように眉間に力をこめているのが分かる。
「あぁ、帰るときは鍵はポストに入れてほしいけど」
さっきの話に付け足すように俺は続けた。
「帰りたくないんやったら、好きなだけおっていいよ」
この時何で自分がこんなことを口にしたのかは、後になっても分からなかった。
慎重で堅実。職場でそんな風に評されている自分の発言とは思えない。
ただ理解できたのは、ないこが俺の発言に心を揺さぶられたかのように唇を引き結んだということだけだった。
「いふさん今日ご機嫌ですね」
翌日の昼、休憩中に後輩にそんな声をかけられた。
社内食堂でうどんを啜っていた俺は、「そう?」と首を捻る。
「最近残業続きで家に帰ったってろくに眠れてないんじゃないですか? 俺なんてもうへとへとですよ…」
なのによくそんな元気いっぱいに仕事できますね、なんて嘆息したように後輩は言った。
その疲れきった表情は、確かに昨日までの俺と同じものだ。
今朝起きた時、ないこはまだソファで横になっていた。
声もかけずに出てきたから、俺が帰る頃にはもういないかもしれない。
それでも何故かないこは今日もそこに「いる」気がして、いつもよりも早く仕事を終わらせて帰りたい衝動に駆られていた。
普段なら終わりの見えないタスクを何とかこなすだけで精一杯なのに、今日だけは集中力が増す。
定時とはいかなかったけれど、いつもより短い時間で済んだ残業。
昨日ないこを拾った最寄り駅の花壇には、当然もうあいつの姿はない。
代わりにマンション前に着いたとき、自分の部屋の明かりが点いているのを外から確認しては、意味も分からないまま胸が少し弾んだ気がした。
「ただいま」
もうしばらく口にしたことのなかった単語が漏れる。
ひょこりとリビングから顔を出したピンク色が、「おかえり」と小さく応じた。
昨日よりは顔色がよく、生気のようなものも感じられる。
帰らなかったのか、とは、言葉にする気にはならなかった。
いくら俺の言葉が安堵の意味からのものだとしても、それを言ったらないこはすぐにでも出て行きそうな気がしたからだ。
本当は知りたいことも聞きたいことも山ほどある。
だけどそれを全て飲み込んで、全然違う言葉を口にした。
「なんか、いい匂いする」
すんと鼻を鳴らすと、ないこはキッチンの方を顎で示す。
あんなのうちにあったっけって思うようなフライパンの上で、肉と野菜が踊っていた。
「昨日のカップ麺と、一宿のお礼」
「え、ないこが作ったん?」
尋ねると「そう」と小さく頷く。
どこか気恥ずかしさも感じているのか、それを隠すかのように無表情のまま肉野菜炒めを皿に盛りつけている。
うちにこんな料理を作れる材料なんてなかったから、恐らく一度買い物のために外に出たのだろう。
今日はダイニングのテーブルで、互いに向き合って夕食を囲む。
食べている最中に、あいつの方が「…あのさ」と言いにくそうに口を開いた。
俺の皿の上はもうすっかり綺麗になりかけているのに、ないこの方はまだこんもりと料理が乗っかっている。
恐ろしく食べ進めるのが遅い。
「明日なんだけどさ」
俺に何かを話そうと、覚悟を決めながらも逡巡していたせいだろう。
「昼間ちょっと用事があって出かけるんだけど…」
言い淀むように、ないこは一度言葉を切る。
だからといって、俺の方はその先を勝手に引き取ったりはしない。
あいつが言葉を継ぐまで待つ態勢で、目線だけで促した。
「終わったら、夜はまたここに帰ってきたい」
一瞬躊躇したけれど、はっきりとした声でないこはそう告げる。
これまでの遠慮がちな小さな声の主と同じとは思えなかった。
一度目を丸くした俺は、微かに笑んで頷き返す。
「いいよ。昨日言うたやん、好きなだけおっていいって」
俺のその答えにないこがあからさまにホッと息をついたのが分かった。
胸を撫でおろし、すっかり安心したのかそこから勢いよく野菜炒めを口に運び始める。
それだけを言うのに、ないこにとっては相当の勇気が必要だったのかもしれない。
目の前のピンク色の瞳を見据えながら、「かわいいなぁ」なんて思う。
…思ってから、自分でも自然に沸いたその感情に驚愕した。
今…なに思った? 俺…。
思わず口元を手で覆う。
そんな俺に首を傾げたないこは、「…まろ?」と、名前の原型のない勝手につけたあだ名で俺を不思議そうに呼んだ。