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テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで
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部屋の鏡で身だしなみをチェックして、客室に向かう。

初めてのお客様はジェラード。あんまりお客様っていう感じはしないかな? ……まぁ、仲間だし。


客室は1階の、玄関近くにある部屋。

そういえば私も、ここに来るのはピエールさんに案内されて以来、2回目だ。

調度品も置いてあったりして、結構立派な部屋なんだよね。


そんなことを考えながらドアを開けると、上機嫌のジェラードが話し掛けてきた。


「やぁやぁ、ご主人様のお出ましだ♪」


「はーい、ご主人様ですよ~♪

ジェラードさん、こんにちは!」


「アイナちゃん、こんにちは!

それにしても凄いねぇ。数日の間に、こんな立派なお屋敷を持つだなんて」


「あはは。

工房をもらったら何だか付いてきました。私も驚きですよ!」


「用意してくれた王様も太っ腹だよねぇ。

メイドさんもしっかりした感じだし、良い雰囲気じゃない?」


「5人もいるんですよ! 皆さん、とっても素敵な方で」


「ふーん? 僕も加わってみようかな。なーんて♪」


「ぶっ!? そういえば女装……もとい変装をして、普通にメイドさんの中に紛れ込めるんですよね。

今度、しれっと紛れてみませんか?」


「んー、機会があったらにしようかな?

さすがに、何でもないときにそんなことやってたら変態っぽいし」


「私はそれでも良いですけど」


「いやいや、僕がダメなの!」


「そうですか、残念……。

ところで最近、どこかに行ってたみたいですけど、戻って来たんですね」


「うん、今日の昼過ぎにね。

宿屋に戻ったらアイナちゃんが引っ越したって聞いて、急いで来たんだよ」


「あ、伝言は上手く伝わりましたか。良かったー」


ここ数日、ジェラードがどこかに行っていたのかは気になるけど……それは聞かない方が良いのかな?


……うーん。

ルークは経緯を知ってるだろうから、ジェラードからルークに話がいくかもしれないし。


それなら又聞きって形にはなっちゃうけど、あとでルークに聞いてみることにしよう。

そこで聞けなかったら、きっと私が聞くべき話では無いのだろう。


まぁ、『循環の迷宮』でリーゼさんに裏切られたあとの話だから、それ関連だとは思うんだけどね。

実際のところ、聞くのが少し怖い……というのも、本音だったりして。


「ところでルーク君とエミリアちゃんも、このお屋敷に寝泊まりしてるの?」


「はい。1人1室割り振って、私室にしてるんですよ。

ああ、そうだ。夕食は食べていきますか? ご用意できますけど」


「本当? それじゃ、ご馳走になろうかな♪

あ、夜は用事があるから、夕食を頂いたら帰るね」


「そうなんですか?

みんな集まったところで、お話したいことがあったんですが……」


私の話したいこと――

……それは私の旅の目的、つまり『神器作成』。


全員にそれを伝えて、できれば皆に協力して欲しいのだ。

作るのは私だけでできるとは思うけど、素材を集めたりするのは一人では難しそうだから。

特にジェラードは情報収集に強みを持っているから、きっとお願いすることも多いだろう。


「話したいこと……。

それって大まかに言うと、どんな話?」


ジェラードは顔を真面目にさせて、私をまっすぐに見ながら聞いてきた。

緊張感というか、そんな何かが周囲に張り詰める。


「……えっと、私の旅の目的ですね。

王都まで来たのは目的があるんですけど、それをお話して、皆に協力をしてもらいたいなって」


「ああ、そういう感じの話ね!

うん、大丈夫だよ。是非、聞かせて欲しいな♪」


そう言うと、ジェラードは顔の緊張を解いて明るく笑った。


……その裏で、今ここで出されたくない話があるのだろう。

それは容易に想像が付いた。


『どのようなことがあってもジェラードさんはアイナ様の味方ですので……』


先日、ルークが言った台詞を思い出す。

ひとまず今は、不用意なことは言わないでおこう。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




その後、ルークとエミリアさんを加えた四人で夕食をとる。

昼に話をした通り、エミリアさんには3人前を用意してもらった。


今回の給仕はマーガレットさんとルーシーさん。

エミリアさんを気に掛けるように見ていたが、その見事な食べっぷりに、かなり驚いているようだった。

見た目的に、そんなに食べる人には見えないからね。


食事を終わらせたあと、メイドの二人には部屋から出ていってもらう。



「――さて。

少しお話をしたいのですが、よろしいでしょうか」


「え? 何かあるんですか?」


私が改まって話を切り出すと、エミリアさんが返事をした。


「四人が揃ったところで、お話したいことがあったんです。

たまに触れられそうになっていましたが、私が王都まで来た旅の目的を」


「あ……。

もうお話しても、大丈夫なんですか?」


「別に隠そうとしてたんじゃなくて、話すタイミングが、何となく無かっただけなんですよね。

……あと、私の覚悟っていうのかな?」


「覚悟……」


「ちなみにルークにも話していないことだから、本邦初公開です」


「おおー!」


「ふぅん? ルーク君も聞いていないんだ?」


「錬金術の関連とは聞いていましたが、具体的には聞いていませんね」


口々に言う三人の視線を、まずは集める。


「最初にですが、今回の話はここだけの話にしてください。

皆のことを信頼してるから、話すことにしたので」


三人は黙って、しっかりと頷いてくれた。


「……さて、どこから話しましょうか。

えぇっと、まず私は錬金術が使えます。それも、かなりの高レベルです」


「それは皆知ってるよね。僕の勘だと、50はいってるんじゃないかな!」


「「……」」


ジェラードは自信満々に言ったが、ルークとエミリアさんは少し自慢気な顔で彼を見ていた。


「あ、あれ? ルーク君にエミリアちゃん、どうしたの!?」


「アイナさんの錬金術、レベル99なんですよ!」


「……は?」


そう言いながら、ジェラードは信じられない表情で私を見た。


「はい、レベルは99です」


「……99なんて、実在したんだ……。

へ、へぇ……凄いね……?」


「懐かしい反応ですね、ルークさん」


「私たちもあんな反応をしていたんでしょうね、エミリアさん」


ルークとエミリアさんは、ジェラードの顔を眺めながらしみじみと言った。

確かにあんな反応だったよね。私もよーく、覚えてる。


「ちなみに余談ではありますが、鑑定と収納もレベル99です」


「……凄ぇ」


驚きすぎたのか、ジェラードの口調が何だかいつもと違った。

これはこれで新鮮だけど、何だか違和感もある。


「そこまでが前提です。

ここから、もう少し続きますね」


「「え?」」


ルークとエミリアさんが、同時に声を上げた。

『何かまだあるの?』といった表情だ。


「えっと、皆は『ユニークスキル』って知っていますか?」


「『ユニークスキル』……? わたしは知りませんね……」


「私も知りません」


「僕は聞いたことがあるよ。

確か、世界に1人だけ持つことが許される、伝説のスキル……だっけ?」


「はい、ジェラードさん正解!」


「……この流れ。

もしかして、アイナ様が持っている……ということですか?」


「はい、ルーク正解!」


「えぇ……。

でもアイナさんのことだから、いくつか持ってそうですよね……なんちゃって?」


「はい、エミリアさん正解!」


私の言葉に一同深く息をつく。


「……さすがです」

「……さすがです」

「……さすがだね」



『さすが』、3つ頂きましたー!!

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