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食堂での四人の会話は続く。
話の流れとしては、ひとまずユニークスキルについて触れたところだ。
「……さて。
ユニークスキルの詳しい話は、一旦置いておきます」
「え? 置いちゃうんですか?」
「はい、話が長くなりますので。
早速、本題の方に入りますね」
「ついに、アイナちゃんの本題か……。
僕、何を言われても驚かないようにするからね!」
そう言いながら、ジェラードは何度も深呼吸をした。
それに倣って、エミリアさんとルークも深呼吸をする。
「まずは、これです。
私は錬金術とユニークスキルが上手く影響し合って、こういうものを持っているんです」
私は自分のアビリティの一部を、鑑定ウィンドウに出して宙に表示させた。
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【極限の創造技術】
レベル99に達成した『鍛冶』『裁縫』『錬金術』スキルのいずれかに加え、
関連するユニークスキルを一個人で所有した場合の技術体系名
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「ふぇ……?
これはまた何か凄そうなものが……」
「えぇっと……?
これって、アイナちゃんがいつもバチッと作ってるアレのこと?」
「いえ、あれはレアスキル『工程省略<錬金術>』ですね。
収納スキルを組み合わせると、バチッと出来るんです」
「へ、へぇ……? 僕からしたら、あれも極限レベルの技術に見えるけど……。
ああいや、さらに『創造』が名前に入っているのか……。うーん、想像が付かない……」
「アイナ様、これは『凄いものを作れる』という理解で良いのでしょうか」
「ざっくり言うと、そんな感じ。
それで『極限の創造技術』で何が作れるかと言うと――
……私もまだ1つしか見たことが無いんだけど、それと同じようなものを作る……っていうのが、私の旅の目的なんです」
「おお、真相に迫ってきましたね!」
「アイナちゃんの作りたいもの……。うーん、何だろう……?」
「えーっと、前に鑑定した情報はウィンドウに出せるかな……。
ああ、出せそうですね。その答えは……これです!!」
そう言いながら、クレントスで鑑定したことのある、古い情報を宙に映し出す。
──────────────────
【神器】
極限の創造技術により生み出されたアイテム。
通常では見られない、様々な効果が付与される
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「「「…………は?」」」
三人は間の抜けた声を出したあと、それぞれ顔を見合わせた。
「クレントスで、ルークと一緒に『神剣デルトフィング』を見に行ったときの情報です。
そのときに私は神器を作りたくなって、王都まで旅をしてきたんですよ。いろいろな情報を集めるために……」
「……えっと、つまりアイナ様は……。
『神剣デルトフィング』のようなものを、作れる……と?」
「うん、その通り。
その素体にするために、アドルフさんに例の剣を作ってもらったの。『なんちゃって神器』の剣を」
「へ、へぇ……。あの剣が、いつか本物の神器になるのか……。
いやはや、何ともかんとも……」
「ちょっとわたし、理解が追い付いていません……。
現存する神器は、その来歴は全部不明なんですよ。
神様が作ったのか、人間か作ったのかも含めて……」
「……ふむ。
でもまぁ、アイナちゃんだからこれくらいはあり得るか」
「さすがにこれはどうですかね……?
でもまぁ、アイナさんだし、あり得ますか」
「そうですね、アイナ様は何でもできる方ですから。
充分にあり得ますね」
ひとしきり呆れられたり驚かれたりしたあとは、結局いつものところに落ち着いてきた。
まぁ、そうなるくらいには付き合いを重ねてきたということかな。
「実際、あり得ちゃったわけですけどね。
……というわけで、王都の生活も落ち着き始めた今が、話すタイミングとしては良いかと思いまして」
「アイナさんは、これからお店を頑張るのかと思っていたんですけど……。
まったく違う方向を見ていたんですね……」
「お店や工房、あとはこのお屋敷、ですか。
ここら辺は流れで手に入ったものですからね。
以前からやろうとしていたのは、神器だけです」
「それでアイナちゃん、これから具体的にどうするかは決まっているの?」
「まずは作りたい神器の詳細を決めます。
そのあと必要な素材を調べて、素材が集まったら作ろうかな、って感じですね」
「むむ? アイナさん、神器を作るのに必要な素材って分かるんですか?」
「はい、ユニークスキル『英知接続』というやつで調べられるんですけど……。
これを使うと、体調が悪くなるペナルティがあるんですよね」
「な、なるほど……」
「ちなみにこのペナルティですが、『安寧の魔石』で一応軽減できるんです。
だからこれも集めたかったんですけど……なかなか見つからないんですよね」
「『安寧の魔石』かぁ……。
これも、なかなかレアな代物だからねぇ……」
「無いなら無いで、1回我慢すれば何とかなるので……。
そのあとは、頑張って素材を集めるだけですね」
「それなら、まずは素材を調べるところからか……」
「はい。でも、オリハルコンは絶対に必要になると思うんですよ。
『神剣デルトフィング』も『神剣カルタペズラ』も、オリハルコンが使われているようなので」
「ふむ、さすがは『神の金属』と呼ばれるだけはありますね。
神の器を作るには、神の金属が必要……、と」
「なので、ジェラードさんの手が空くようでしたら、引き続きオリハルコンを調べて頂きたいな……って」
「了解っ!
ちなみにオリハルコンは、錬金術だと作れないの?」
「作れなくは無いんですけど、『賢者の石』ってアイテムが必要になるんですよね」
「『賢者の石』かぁ……。
それも伝説上のアイテムだからね……」
「作り方が書いてある本は見つけたんですよ。でも、それはそれで作るのがかなり大変そうで……。
それなら、まずはオリハルコンの現物を探したいな……と」
「オリハルコンは、王様が持っているっていう噂もあるからね。
それじゃ僕は、やっぱりそこを中心に調べてみようかな」
「無理しない程度にお願いします!」
「あはは、多少の無理はしないといけなさそうだけどね♪
でもそれくらいの方が、やりがいがあるってものだよ」
ジェラードはそう言いながら、良い笑顔を返してくれた。
さすがにオリハルコン入手の筋道を付けてきたら、臨時のボーナスくらいはあげないといけないかな。
「……っとまぁそんな感じで、以上が私のやりたいことでした。
これから大変なことをお願いするかもしれませんが、是非お手伝いをお願いします!」
「かしこまりました!」
「僕も了解♪」
「わたしも……何ができるかは分かりませんが、頑張ります!」
「三人とも、ありがとうございます!
それじゃ、今日は解散しましょうか」
まだ話したいことはあったけど、何だかんだで疲れてしまった。
ずっと秘密にしていたことをようやく伝えられたし、今日はもうゆっくり休むことにしよう。
「それじゃ僕は用事があるから帰るね!
何かあったら、すぐに来るから♪」
「あ、ジェラードさん。少しお話をしてもよろしいですか?」
帰ろうとするジェラードにルークが声を掛けると、二人はそのまま外に出ていってしまった。
この流れ、ルークはジェラードがいなくなっていたときのことを聞くのかな?
……まぁ、私は一旦忘れておこう。
二人を見送ってから視線を戻すと、エミリアさんが私をじっと見ていることに気が付いた。
「わっ!? ど、どうしたんですか?
私の顔に、何か付いています?」
「うーん……? 目と口が……!」
「鼻も付いているはずです!」
「ほ、本当だ……!!」
「……って、何を言わせるんですか!!」
おバカな話をしてから、何となく二人で笑い合う。
「いえ、とても現実離れしたお話だったので……。
ちょっと現実に戻っておきたかったな、と思いまして」
「そうですね。足元のしっかりした現実は必要ですからね」
「でも、アイナさんのことを知れて、今日は嬉しかったです。
……それにしても、秘密はあとどれくらい残っているんですか?」
「んー、そうですね。
2つか3つ……くらいでしょうか」
「えー!?
どれだけ凄い人なんですか、まったくもう!」
そんなことを言いながら、仕方なさそうに笑うエミリアさん。
まぁ、残りの秘密もいつか話すときが来るかもしれないよね。
……それが、いつになるのかは分からないけど。