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#シリアス
「……っ」
言葉が出なかった。
「あとなんで虐められた側が学校来れなくなんのって話。来なくなるべきなの、どう考えても虐めた方だろ?」
「…っ、」
そんなふうに言ってくれる人、今までいなかったから。
天馬くんは少しだけ困ったみたいに笑って、フェンスに背中を預ける。
「ていうかさ、水瀬って“自分が悪い理由”探しすぎじゃない?」
「え……」
「だって今の話聞いてたら、“いじめられた側”なのにずっと自分責めてんじゃん。なんか、水瀬優しすぎっていうか……?」
風が吹いて、僕の長い前髪が揺れる。
天馬くんはそれを見ても、前みたいに触れようとはしなかった。
ちゃんと、距離を守ってくれている。
「怖かったんだろ」
「……」
「でも学校来て、美術部入って、今も描いてる」
天馬くんは静かに続ける。
「それって普通にすげーことじゃん」
「…えっ…すごく、なんか……」
「すごいよ」
即答だった。
「俺、多分水瀬みたいなことされたら、描くの自体やめてる」
その言葉に、目を見開く。
「なのに水瀬、ちゃんと描いてるじゃん」
「……」
「好きだから、その好きを貫いてるんだろ」
胸の奥が、じわりと熱くなる。
誰にも理解されないと思っていた。
〝なんでそんなに絵描くの?〟
〝意味なくない?〟
〝気持ち悪いんだよ、お前も絵も〟
そう言われ続けてきたから。
でも天馬くんは、違った。
僕のことも絵を描くことも、“変”だと言わない。
「……っ」
気づけば、また涙が滲みそうになっていた。
慌てて俯く僕に、天馬くんが「あーもう」と小さく笑う。
「泣くなって」
「な、泣いて……」
「る」
「……っ」
否定できない。
すると天馬くんは少しだけ身を屈めて、僕の顔を覗き込むみたいにして笑った。
「少なくとも俺は、水瀬のこと変だと思ったことないから」
柔らかい声だった。
「むしろ、水瀬のこと良い友達だって思ってるし」
その瞬間。
屋上に吹いた風が、やけに優しく感じた。
胸の中で絡みついていた糸が、少しだけ解けた気がした。
◆◇◆◇
昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴り響いた。
涙は引っ込んだけど、
代わりに胸の中にずっとあった棘が、ほんの少しだけ和らいでいた。
「ほら、行こうぜ」
天馬くんが立ち上がり、僕に手を差し伸べる。
僕はその手を掴んで立ち上がる。
「そういや次の授業なんだっけ?」
「えっと、国語だったと思う」
「げぇ〜……サボりてぇ」
「ちゃんと、受けないとだめだよ」
「はいはい」
いつもの調子に戻った天馬くんに、僕は心の底からホッとしながらついていった。
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