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tamaki
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勇斗side
おかしい。
仁人がおかしい。
正確に言えば、仁人が俺に対しておかしい。
仁人にご飯に誘われたのを断った次の日から。
今までは何かと俺の隣に座りたがったり、くだらない話をしに来たり、家に帰ってからもメッセージを送ってきたり。
俺が適当に返しても、次の日にはまた話しかけてくる。
それが仁人だった。
なのに、何もない。
隣にも来ない。
話しかけても来ない。
メッセージも来ない。
……いや、別にいいんだけど。
俺だって毎回仁人の相手をしたいわけじゃないし。
仁人が俺に話しかけてこなくなったところで、俺には関係ない。
……はずなのに。
勇斗「……はぁ」
気づけば、何度目か分からないため息が漏れていた。
すると、隣に座っていた太智がこちらを覗き込んでくる。
太智「なー、勇斗」
勇斗「ん? どした?」
太智「勇斗、気づいとるやんな」
勇斗「何が?」
太智「仁人が勇斗のこと好きなん」
一瞬、心臓が跳ねた。
けれど、俺はなるべくいつも通りに笑ってみせる。
勇斗「……そうだけど、なんで?」
太智「いや、なんでって……」
太智は呆れたように眉を下げた。
太智「最近、仁人元気ないやろ」
勇斗「そう?」
太智「そうやで」
即答だった。
太智「いつもなら練習終わったあと、勇斗のとこ行くやん。今日もずっと一人でおったし、さっきから何回もスマホ見てたで」
勇斗「……ふーん」
太智「勇斗から連絡来んかなって思っとるんちゃう?」
勇斗「いや、知らないけど笑」
俺が軽く笑い飛ばすと、太智はしばらく黙って俺を見ていた。
その視線が妙に気になって、俺はスマホに目を落とす。
太智「……なぁ、勇斗」
勇斗「ん?」
太智「俺さ」
いつもの明るい声じゃなかった。
太智「出会った時から、仁人のことが好きなんよ」
指が止まった。
勇斗「……え?」
太智「別に今、告白しとるわけちゃうで」
そう言いながらも、太智の表情から笑みは消えていた。
太智「ただ、仁人には幸せになってほしいねん」
その言葉に、俺は何も返せなかった。
太智「仁人ってさ、ああ見えてめっちゃ我慢するやろ」
勇斗「……」
太智「嫌なことあっても笑ってごまかすし、寂しくても自分から言わへんし。好きな人のことになると、余計にそうや」
太智は一度、視線を伏せた。
太智「だから、仁人が最近あんな感じになっとる理由も……まぁ、なんとなく分かる」
勇斗「……俺が原因だって言いたいの?」
太智「そうは言っとらん」
太智は静かに俺を見る。
太智「でも、勇斗が何も気づいてへん顔してるんが、ちょっと腹立つ」
胸の奥がざわついた。
勇斗「いや、俺は別に仁人に何かしたわけじゃ……」
太智「ご飯断ったんやろ?」
勇斗「……」
太智「それだけやったら、別に悪いことちゃう。勇斗にも予定はあるしな」
一拍。
太智「でも、そのあと仁人がどう思ったか、考えたことある?」
答えられなかった。
考えたことなんて、なかった。
いや、正確には考えないようにしていた。
仁人が落ち込んでいるかもしれない。
寂しがっているかもしれない。
そんなことを考えたら、俺が何かしなきゃいけないような気がして。
だから、気づかないふりをしていた。
太智「俺な、仁人が勇斗のこと好きなん知っとるから、ずっと見とったんよ」
勇斗「……」
太智「勇斗の隣に座れた時、めっちゃ嬉しそうにしとる仁人も。勇斗に話しかけてもらえた時、顔に出さんようにしながら喜んどる仁人も」
太智の声が少しだけ震えた。
太智「そういう仁人を見てきたからこそ、今の仁人がしんどそうにしとるん、俺は嫌やねん」
俺は、膝の上で手を握りしめた。
太智「だから勇斗さ」
太智が少し身を乗り出す。
太智「仁人のこと、傷つけたら許さへんで」
コメント
1件
太智の告白、めっちゃ重かった……でも、なんか分かるなぁ。ずっと隣で仁人のこと見てきた人が、その幸せを願ってるのに、自分はその隣じゃないっていう切なさ。勇斗の「気づかないふり」してるとこも、なんかずるいし、でもそれが人間っぽくて嫌いになれない。次、どうなるんだろう。