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俺は、今千冬の墓の前にいる。
「ごめんな、守れなかった。」
誰も死なせないという俺の目標は目の前で無残に散ったのだ。
イヌピーくんとココくんは親とかがいないから、集団墓地?だっけ、に一緒に入るらしい。
結局、二人の死因は事故、という片付けになった。
俺は立ち上がって、千冬の墓の前から立ち去ろうとした。
その時に、俺と同じような格好をしたやつが目に入る。
俺よりもガタイはいい。
その人は、視えないであろう深さまでフードを被っていたが、少し顔を上げると、声を発した。
「タケミっち、久しぶり。」
その少し怖い低音ボイスは、まさしく彼のものだった。
「ドラケンくん…!?」
「…ああ。」
そう言って彼はフードを外す。
前と何も変わらない気の強そうな笑顔は、俺を安心させるには充分だった。
「龍宮寺堅、ドラケンだ。」
俺は今日は独りで走ってきたから、ドラケンくんの「家来る?」という誘いにもすぐ判断をつけれた。
「まあ、家っつっても、んな大層な物じゃねぇけどな。」
「大丈夫ですよ、そこは期待してなかったんで!」
「お前酷ぇな…。」
俺らはそんな下らない会話をしながらドラケンくんの家へと足を進める。
「前の家には戻ってないんすか?」
「戻ってねぇな。もう自力で稼げるし、いいかなって。」
「つよ…。」
やっぱり、時の流れって怖い。それを今、肌で実感した。
「で、一体どこなんすか…。」
「廃墟通りの西?だっけ。半間と会ったろ?そこらへん。」
「ああ…。」
俺は自殺未遂を止められたことを思い出す。
あの時のマイキーはなんかかわいく感じた。
…話は戻るが、この廃墟通りも意外と雨風をしのげるところが多いらしい。
そりゃ、大量の人が住みつくわけだ。
ニートやホームレスの方々、小さな子供までがそこで暮らしているようだった。
「半間と俺は腐ってもヤンキーだからな、こういう人通りが多いところに住むと怖がられるんだよ、主に女にな。」
ドラケンくんはそう言うと、路地裏に入った。
数分歩いて路地裏を抜けると、さっきまでの人だかりが嘘のように消えた。
「ここらへん。ま、半間が近くにいるだろ。」
ドラケンくんはそう言うと、周辺をぶらぶら歩きだした。
時々「半間~!」と呼ぶくらい。
自宅周辺になったのか、半間くんの顔が見えた。
「うるせぇぞ、ドラケンよぉ。」
「お前が出て来ねぇのが悪いんだろうが!」
「へーへー。」
「おっま…。」
半間くんはドラケンくんとそういうやりとりをした後に、俺の存在に気づいた。
「あ、おかえり。」
「ただいま…?」
「まあ、上がれよ。話聞くぜ?」
半間くんがそう言って自宅へと上がる。ドラケンくんも一緒に入っていったので、俺も後を追って入った。
その後は、近況を話して共有した。
ドラケンくんは後半につれて「うわぁ…。」と引いていったが、半間くんはそんなことがなかった。
「というか、松野死んだんだな。」
半間くんがそう言う。
「…はい…。」
俺は震える声でそう答えた。
「いいやつだったし、こいつの次にお気に入りだったんだけどなぁ…。」
「敵のお気に入りで話すな。そして俺が一番の体で話すな。」
「バハッ♡やっぱお前好きだわ♡」
「冗談のくせに…。」
ドラケンくんは超うざそうだが、半間くんは楽しんでいるように思えた。
そんな時、ドラケンくんがこっちを見て聞いた。
「なあ、タケミっち。」
「何ですか?」
「今のマイキーの居場所って分かるか?」
俺は、訳は分からなかったが、直感で「教えちゃだめだ」と思った。
「ごめんドラケンくん、知らない…。」
俺はそう答え、「時間だし、帰りますね。」と踵を返した。
その時、後ろから聞こえた声ですべてを察した。
「おまえらは、絶対に殺してやる。」
今、ヘイトが向いているのはマイキーで、俺はマイキーを守らなくちゃいけない。
きっと、三ツ谷くんはそれに失敗したんだ。
俺は再度振り返る。
そして言った。
「やってみろよ、守り抜いて見せる。」
夕日の赤は、今日だけ決戦の血の色に見えた。
マイキー殺害まで あと