???「よし、これで良い。あとは……」
ここは、橙の家。最近あえて大人しくし、一人になることに成功した「紫雲雨花」。橙に置き手紙をして、ある場所へ向かおうとしている。
雨花「武器は傘だけにしておこう。そして、長袖長ズボンのジャージを着て……っと。さてとそろそろ行くかな……」
「「妖怪の住む無法地帯へ!」」
雨花「とりあえず着いた。無法地帯の前までは……」
雨花がいる場所は、妖怪の住む『無法地帯』の前。中には妖術が沢山かかっており、神通力は通用しない。
雨花「妖術苦手だけど……使うしかないか……」
雨花は、傘を持ち『無法地帯』の入口まで近づいた。そして……
「な、何だ!?」
「急に灯りが消えたぞ!」
「落ち着け!早く灯りをつけろ!」
「敵襲か!?」
入口にいた男たちは慌てて灯りをつけた。
そこにはもう男たち以外誰もいなかった。
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雨花「よし、中に入ることできた。……けど、すごい暗いなぁ……わたしじゃなかったらみれないんじゃない?」
無法地帯は、大きなフェンスに囲まれており、周囲も中も真っ暗で霧がかっていた。
雨花「妖術の気が強くて神通力で闘うのは無理だな。」
雨花はなるべく目立たないように、建物の陰に隠れながら移動していく。
雨花「(この隙に『無法地帯』の範囲や構造を把握した方が良いかも。)」
雨花は、無法地帯内を練り歩いていく。雨花は決して記憶力は良くない。頭も良い方ではない。しかし、戦闘センスは抜群のため、感覚でどこに何があって、どういう構造になっているのか分かるのだ。つまり、もう一度ここに来た時、道に迷うことなく、無法地帯内を探索することが出来る。
雨花「少し飛んでみよう」
雨花は想いっきり、しかし、静かに地面を蹴って、空中に浮く。
雨花「でっかい建物……この形状の建物がいくつかある。そしてその中でも一番大きいのが……」
雨花の言っている建物は、昔神様が住んでいたであろう日本にある城のような建物があり、その周りを五重塔のような建物が四つ囲んでいる。その四つの建物を中心に四角い区画で町ができていた。
雨花「四つの町で構成されて、あの真ん中のでっかい建物が妖怪の長が住んでいる住処で、『堕天』の本拠地か。」
雨花は、着陸した。
雨花「(これで『無法地帯』の構造は分かった。……前に来た時は区画を調べる余裕なんてなかったし……あはは……)」
前に来た時とは、雨花が「独野黒花」だった時、「雫」に弟子にしてもらう為、妖怪狩りを『無法地帯』で行っていた時のこと。
雨花「……ん?」
誰かが雨花の跡をつけている。
雨花「(この気配は……なるほど)」
雨花はあえて尾行させた。
「……えい!」
雨花「…………」
雨花にぶつかると、その気配の正体は走り去っていた。
雨花「あはは!面白いなぁ〜」
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「やったか?」
「あぁ!やったぜ!」
「あいつはきっとボンボンだ!金たくさん持ってるに決まってる!」
「あぁ、早速中を……って!」
少年たちが盗った財布の中には「残念でした^⩌^」と書かれた紙が入っていた。
「ちっ、バレてたのか……」
「おい!どうする?もし、町長にこの知れたら……!」
「俺たちもあの大人たちみたいになるんじゃ?」
「やだ……やだやだ絶対やだ!」
雨花「何がそんなに嫌なの?」
「「!」」
少年たちの前には、雨花がいた。
「お前はさっきの……!」
「ふざけんな!大人しく金だけおいて立ち去れ!」
「おい、ちょっと待てこいつみたことあるぞ!」
「俺もみたことある。こいつのこの顔……」
「「黒い彼岸花だ!」」
雨花「君たちの若さで知ってるの?あっでも神様同様に妖怪も見た目じゃ年齢分からないのか!」
「俺たちを倒しに来たのか……!?」
雨花「違うよ。」
「じゃあ何しに来たんだ!?」
雨花「わたしは「堕天」が大嫌いなの。わたしはあいつらを倒したい。」
「「!」」
雨花「君たちのリーダーみたいな人いる?その人にお話したいんだけど。」
「まさか町長か!?」
「あいつならダメだ!あいつにもし盗みしたなんてことがバレたら……」
雨花「あぁ違う違う。君たち自身がリーダーとして認めてる人。君たちが信頼してる人。その人に話がしたいの。お願いします。」
雨花は、少年たちの目を真っ直ぐみる。
「…………分かった。連れてってやる。」
雨花「!、ありがとう!」
雨花は少年たちと移動することになった。
「あ、それから、」と雨花は、悪い顔をする。
雨花「良い?悪いことをする時はバレないようにやらないとダメだよ?ほら、言うでしょ?『赤信号みんなで渡れば怖くない』って!あはは!それにわたしなんかにバレてるようじゃ簡単に捕まっちゃうよ?」
「「は?」」
雨花「ん?何?」
「何でそんな……悪いこと言うんだ?普通怒るだろ……?」
雨花「わたしが自分の希望のために修行するように、あなたたちも生きるために盗みをする。表面的には違くても根本は一緒でしょ?寧ろ、わたしは生きるためなら何だってしてやろうという生きることにすごく貪欲な人わたし好きだよ?いっその事死んだ方が……とか考えても生きようと想えるんだから。とっても生き方がかっこいいよ!……わたしはそうはなれなかったし。あはは!」
「…………」
「こいつ悪いやつではないかもな?」
「確かに……」
「俺、嘘ついてる奴の顔ずっとみてきたから分かるぜ!あれは本音だ!」
「「何で妖怪狩りなんてやったんだろうな?」」
雨花「君たち早く案内してくんなまし〜」
「「は、はい!」」
「ばあちゃん!」
「おぉ。おかえり。坊やたち。……何かあったのかい?」
「実は……」
雨花「こんにちは。おばあさん」
「あなたは……誰だい?」
雨花「わたしは紫雲雨花と申します。おばあさん。あなたに一つお尋ねします。あなたは「堕天」についてどう感じていらっしゃいますか?」
「「堕天」か……あいつらは……あいつらは……!」
老婆は、強く拳を握りしめる。
「ばあちゃん……」
「あいつらが来てから献上金が増えた。ただでさえこの町に住む妖怪たちはお金がなく、毎日食べていけるかいけないかの瀬戸際に追い詰められていた。しかし、それでも生活はそれまではギリギリできていたんだ。でも……あいつら「堕天」が来てから妖怪の長やその配下たちは天使から力を借りる代わりに莫大なお金を天使たちに献上するようになった。どうしてそんなにお金が必要なのかは分からないが、「堕天」が来てから家計は火の車どころじゃない。だから、それに反発して幾人か妖怪たちが町長に闘いを挑んだが……やはり、ダメだった。この子たちは、その闘った妖怪の子供たちだ。」
雨花「…………」
「妖怪の唯一の居場所にあんな奴らが来てしまったせいで……くそっ……」
雨花「…………お話して下さってありがとうございました。」
「……こんな話して何になるんだい?」
雨花「……わたしも「堕天」たちが大嫌いです。」
「!」
雨花の目には憎悪とそして……空虚が現れていた。
雨花「あいつは自分のことを正しいと信じ込んでいる。あいつらは「浄化」という力を持つ自分たちが絶対的に正しいと思い切っている。魂を浄化されることが誰しもにとって正解で、そうじゃないものはいらないって簡単に捨てることが出来る。だってあいつらは間違いをただ正しただけだと思っているから。」
「…………」
雨花「わたし、自分のことを正しいと信じ込んでる奴大嫌いなんです。それが無自覚なら尚更。」
「だから、」と雨花は言い続ける。
雨花「あなたに頼みがあります。」
「……何だい?」
雨花「この町には大きな五重塔のような城が建っていますよね。そこにいるんでしょ?町長が。」
「まさか……倒しに行くつもりじゃ……!?」
雨花「そのまさかで〜す!あはは!」
「いいかい?妖怪の長の配下はあんたみたい若僧が簡単に倒せるような奴じゃない!」
雨花「おばあさん。大丈夫だよ。それで、もし倒せた時は、あなたがこの町のリーダーとして、この町を復興して欲しいんです。わたしが町長を倒せば、妖術の気が少しは収まりますよね?その時、この町の町人たち全員を死神組に移動させます。そして、法律で決まっていないのに勝手に献上金制度なんて作った町長を死神組の人たちに逮捕させます。そうすればあなたたちは、少なくとも今よりもっと金銭的に余裕のある暮らしができるはずです。それを約束します。」
「……それを約束できる根拠は?」
そう言われると、雨花はニヤッと笑い、こう言った。
「「一人でここまでわたしが来れたこと」」
そう言うと、雨花は袖とズボンを折り、傷だらけの体をみせた。
「どうしたんだよ!?その怪我!?」
「おだまり。簡単に口を突っ込んではいけないんだろう?この怪我」
雨花「……根拠になりましたか?」
「…………分かった。私が知っている町長のこと。全て話そう」
雨花「!、ありがとうございます!」
果たして、雨花は町長を倒すことができるのか。
【続く】
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