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「なんだぁ? てめぇは、部外者は引っ込んでろ! じゃねぇと只じゃすまねぇぞ? 」
テナントビルの屋上に若衆《準構成員》を含め総勢7人。龍神会の不良《ヤクザ》達が語尾を強める。男達が語尾を強めたのには訳があった。クロノスの社長と屋上で交渉を始めようとした矢先に、後ろの非常階段から得体の知れない者がゆらりと現れたからだった。
「なんだ…… まだ手を出されて無かったか、社長…… 」
「あぁ、天城《あまぎ》さん、すみません。ええ、まだ彼等からは何も」
焦った兄貴分とみられる人物が声を荒げる―――
「てめぇコラ! シカトしてっとやっちまうぞ! 」
「どうでもいいけど、お前らは直ぐに道具《武器》使うからな、道具無しならいつでもいいぜ。何なら全員でもな」
「クッ! てめぇ――― 」
今にも飛び掛かりそうな兄貴を前に一人の舎弟が慌てて止める。
「いや! ダメだ兄貴! ダメだよ。あの人はダメだ! 手出したらダメっス」
「何でだ? てめぇブルってんのか? おい」
「違います、あの人は天城さんっス、伯父貴《おじき》の麻雀仲間の人っスよ」
すると鈍い音と共に、暗闇の中に舎弟の一人がドゴンと打ち上り、力無くその身を固いコンクリートに横たえた―――
なっ―――⁉
「あ、悪ぃ…… 懐に手ぇ突っ込んだからつい…… 勘違いさせる動きすんじゃねーよ。まぁいいや、道具持ってんなら先だせや、勘違いしちまう」
「こっ、こいつ…… 」
―――今見えなかったぞ……
クロノスの社長がやれやれと呟く……
「三大流派の一派、那覇手《ナーファディー》。またの名を剛柔流空手。此処にいる全員が束になって掛かっても勝ち目は無いでしょうね」