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「沙紀、待って! ごめん、仕事の話。ホントに、仕事だから、その、ちょっとここで話させてもらっていいか?」
二人も一緒でいいからと言う大輝の言葉に、沙紀はどうしようか悩みながらゆっくりと座る。
絵里と菜々美がいれば大丈夫……だよね。
二人は私が捨てられたことを知っているから、いざとなったら助けてくれるはず。
沙紀がチラッと大輝の方を見ると、OKだと思ったのか大輝は沙紀の隣に座った。
「あのさ、俺、営業で他社を回る時、製品カタログを持っていくんだけどさ」
大輝が話し始めたのは本当に仕事の話。
営業先で「ここはどうなっているのか」「こういう機能はあるのか」と聞かれた時に製品カタログだけでは答えられないので、開発部のフォルダを閲覧可能にしてほしいという話だった。
「もっと製品に詳しくならないとダメだと思ったんだ。でも毎回担当者に聞くのも時間がかかるし、担当者も大変だろ?」
だから図面や企画段階から見ることができれば、今よりももっと製品がアピールできるのではないかと熱く語る大輝に、沙紀は驚いた。
「だから、西園寺CEOにそういう仕組みが欲しいって頼んでくれないか?」
「……もしかして、この前からずっと連絡をくれていたのは」
「あぁ、この話もしたかったし、沙紀とやり直したいというのもホントで……」
絵里と菜々美の視線に気づいた大輝は気まずそうに立ち上がる。
「昼飯中にゴメンな」
急いで去って行く大輝の後ろ姿を三人はなんとなくジッと見てしまった。
「……ホントに仕事の話だったね」
「最後、どさくさに紛れてやり直したいって言っていったけどね」
ちょっと印象が変わったなと言う絵里に、沙紀は「……そうだね」と気の無い返事をした。
昼休みから戻った沙紀は、西園寺と冬木に誰からの依頼ということは告げずに内容を話した。
「……なるほど。営業部がそんなことを」
「確かにカタログだけでは細かい質問に答えれませんね」
「だが、フォルダ内全部をのぞかれるのは嫌だろう」
「では特別共有フォルダでも作成しましょうか」
それぞれの部長に話をし、前向きに進めますと冬木は西園寺に返事をする。
「食堂で情報収集とは。すごいな沙紀」
「えっ、いえ、あの、たまたまです」
本当のことが言えない沙紀の心がチクッと痛くなる。
沙紀は午後からのスケジュールを確認しながら、大輝からの依頼だったと始めから正直に言えばよかったなと後悔した。
営業部はもちろん、第1~第3開発部の各部長も賛成し、すぐに特別共有フォルダが作られることが決まった。
社員全員に自社製品を知ってもらいたいと、全社員が閲覧可能なフォルダに。
ただしデータは閲覧のみ、複製も書き換えも不可という制限をかけることにした。
それぞれ他部に見せてもいいとプロジェクトリーダーが判断した資料のみ、そのフォルダに保存することになったが、第1開発部の資料を見た第2開発部が共同製作を申し出たり、技術的な問い合わせをしたりと、フォルダは製品紹介だけでなく、他の用途にも活用されることになった。
社内で協力し合う雰囲気が生まれ、以前よりも活気あふれる会社になったと思った。
第2開発部の林田部長から信じられない言葉を聞くまでは――。
「……特許を、先に取られた?」
「どういうことですか? 林田部長」
西園寺CEOに相談するために統括室へやってきた部長に沙紀は尋ねた。
「福岡に転勤になった木村くんがやっていた、あの案件だよ。近藤さんも知ってるアレだ」
「先に特許を出した会社はどこだ? 内容は?」
これですと部長が差し出した資料に西園寺は目を見開いた。