コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
――彼女は今日も、僕に告白した。
「ジェイド、好きです。付き合ってください!」
「申し訳ありませんが、無理です」
穏やかに、笑顔で断る。
いつもと同じように。
けれど、胸の奥が、わずかに軋むのは
――気のせいだと思っている。
彼女――ユメは、僕の幼馴染だ。
小さな頃から、ずっと一緒だった。
水底を並んで泳ぎ、毒の知識を競い合い、
フロイドとアズールと喧嘩して、笑って。
あの子は、昔から変わらない。
真っ直ぐで、騒がしくて、でも嘘がなくて。
そして今では、僕に恋をしているという。
「ジェイドってば、ぜーったいユメちゃんのこと好きだよねぇ~」
フロイドが、昼休みにのたまった。
「は?」
僕の言葉に、アズールが苦笑する。
「“は?”って、あなた……
そろそろ自覚してもいいのでは?」
「何をです?」
「ユメが他の男子と話してるとき、貴方
めちゃくちゃ威嚇していますよ。
目が完全に魚の狩りモードです。」
「……そんなことはありませんよ」
即答した。が、ふたりは呆れたように
顔を見合わせてため息をつく。
実際に心当たりは、ある。
この間も、ユメに近づいた下級生がいて。
何か、胸がざわついた。
彼女が、誰かに奪われるかもしれない。
自分以外の誰かと、笑って、隣に並んで――
(……いや、違う)
それはただ、幼馴染としての情、のはずだ。
彼女は放っておくと
どこにでも行ってしまうから、守らないと。
それだけのこと。そう、自分に言い聞かせる。