「……でもねぇ、ジェイド」
フロイドがポケットに手を突っ込んで、横目で俺を見た。
「オレ、つまんないよ?今のままじゃ」
「何がです?」
「ずっと“振られ続けるユメちゃん”と、
“自覚ナシの独占ジェイド”の茶番。オチはどこー?」
茶番、とは……
随分な言い様だ。
けれど――
このままで、いいとは思っていない。
ただ、どうして「無理です」と言い続けているのか。
なぜ、彼女のことを、あんなに見てしまうのか。
その理由に、僕自身がまだ、
名前をつけられていないのだ。
「……ユメ」
放課後の水路沿い、彼女がぽつりと
つぶやくのが聞こえた。
「もし、監督生が来るまでに、ジェイドが
私の気持ちを受け取ってくれなかったら。
……私、陸に上がるからね」
聞こえていたはずのその言葉に、僕は――
返事を、しなかった。
できなかった。
(……どうして、胸が、こんなに痛い?)
これは、恋ではない。
僕は、そう思っている。
思い込もうとしている。
だがその夜、彼女が僕以外の男と話す夢を見て――
僕は初めて、夢の中でユメに告白していた。
「……嘘でしょう、僕が……?」
夢の中の自分が、あの子に手を伸ばしていた。
指先が触れた瞬間に、泡のように彼女が消えた。
「……!」
目が覚めたとき、胸が酷く痛んだ。
まるで、誰かに置いていかれる夢を見た子どものように。
――これは、恋なのだろうか。
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