赤葦と番になった。
家族に紹介?報告?をしたら歓迎して貰えた。
そしてもう1つ ずっと考えていたけど、もっと早くこうするべきだった。
「あのさ、赤葦。赤葦が卒業してからじゃなくて今から一緒に住まない?」
「え…でも俺、まだバイトとかしてないからお金ないです。家賃とか生活費とか…」
「今まで俺一人で住んでた所に1人増えるだけだしお金とか別にいいよ。」
「でも…」
「俺はね、たとえ赤葦のご両親だとしても 赤葦を大切にしてくれない人と一緒にいて欲しくない。」
「木兎さん…」
もうひと押しかな。
「あと、俺 家事苦手だから分担してもらえると助かる。」
「確かに木兎さん、部屋散らかってましたよね…」
これはいける。
「お願い、赤葦。一緒に住みたい!」
「本当にいいんですか?」
「もちろん!ちょっと予定が早まるだけじゃん!」
「では、お言葉に甘えて…」
赤葦と一緒に住める!
これからは毎日赤葦と会えて、赤葦の手料理も食べれちゃう…?
そうと決まれば
「赤葦!荷物取りに帰るぞ!」
「今からですか?せっかく実家に戻ってたのにいいんですか?」
「大丈夫!早く荷物まとめて家に帰ろ?」
赤葦の腕を強引にひいて玄関に連れていく。
「母ちゃん!俺と赤葦帰るね!」
気をつけて、またいつでも帰ってきてと母ちゃんは見送ってくれた。
なんかあれよあれよという間に同棲?が決まり俺の家の前に来ていた。
木兎さんの実家から俺の家までずっと木兎さんは俺の手を握っていた。
正月だしもしかするとまだ家に親がいるかもと思っていたが既に2人とも出かけたようだ。
必要最低限の荷物を修学旅行で使ったきりのボストンバッグに詰め込む。
「お待たせしました。」
玄関で待っていた木兎さんに声をかける。
「もう大丈夫?なら行こっか!」
木兎さんは俺の手からボストンバッグを奪うとドアを開けた。
「自分で持てますよ。」
「いーの!ほら早く!」
自分も玄関の外に出て施錠する。
その鍵をチラシでいっぱいのポストに入れて置いた。
もうここは俺の居場所じゃないしこの鍵は必要ないから。
きっとあの人達はここのポストなんて滅多に開けないから気づかないだろうけど。
「行きましょうか、木兎さん」
今日で何度目かの電車に乗って木兎さんの家に向かう。
「着くまでまだもうちょいかかるから寝ててもいいよ」
「眠くないです。木兎さんまで寝て寝過ごしたら困るので」
とか言ったくせに気づいたら木兎さんにもたれて眠っていたようで
「赤葦〜着いたぞ!」
と起こされた頃には目的の駅に着いていた。
木兎さんの家に着いたのは22時を過ぎた頃だった。
「疲れたでしょ?今日はもう寝る?」
「そうですね、そうします。」
今日一日で色々あってとても疲れたな…
「まだ赤葦の部屋用意できてないから俺のベッドだけどいい?」
「大丈夫です。」
「場所わかるよね?先寝てていいよ。」
「分かりました。…木兎さんも早く来てくださいね?」
「すぐ行く!」
木兎さんの部屋に入ると直ぐにベッドへダイブした。
あっこのベッド、凄い木兎さんの匂いする…。
安心する匂いだな…
横になった途端一気に疲れと眠気が………
カーテンの隙間から除く朝日を浴びて俺は目覚めた。
昔っから寝起きが良いってみんなに言われてきた俺は今日も自然と目が覚めた。
いつも通りの時間。
でも今までとは違う。
それは隣に赤葦がいること。
昨日の夜、部屋に行った頃には既に夢の世界へと旅立っていた赤葦の横で寝た。
はずなのに何故か俺の上で眠っている赤葦。
部活の合宿の時も思ったけどコイツものすんごく寝相が悪い。
赤葦を起こさないようにそーっと転がしてベッドの上にちゃんと寝かせた。
寝顔が可愛い…
さらに、昨日番になるために噛んだ項とか首筋から胸元にまで散乱する噛み跡や鬱血痕がはだけた服の隙間から見える。
今すぐにでも抱きしめたいけど起こすのも悪いと思い音を立てないようランニングに行くため起き上がろうとしたらいつの間に掴んでいたのか赤葦に服の裾を引っ張られた。
「木兎さ…どこいくの…」
寝ぼけた様子でそう言ってきた赤葦の頭を撫でながら
「ちょっと走ってくる。もうちょい寝てていいよ。」
と言うとすぐにスヤスヤと寝息を立てていた。
「ただいま〜」
ランニングから戻ると部屋の中から美味しそうな匂い。
「おかえりなさい。朝飯、冷蔵庫の使って勝手に作っちゃったんすけど大丈夫でしたか?」
「全然大丈夫!むしろ自由に使って!」
机の上に並ぶ美味しそうな朝食とエプロン姿の恋人。
「ありがとう!赤葦!」
幸せだなぁ…
「俺、赤葦と結婚したい…」
気づけばそう口に出していた。
「えっ…と、それはプロポーズってことですか?」
「まぁそうだな!」
「俺まだ高校生なんで…」
「でも18でしょ?結婚できるよ?」
「…….」
黙り込んでしまった赤葦。
「え、赤葦は結婚とかしたくない感じ…?縛られたくない的な?」
番というもので既に縛ってしまっているけど…
「違います違います!ただ、結婚…ってなるならまずお互いの収入が安定したり色々落ち着いてからのがいいのでは…と思いまして。」
赤葦がまたなんか難しいこと考えてる気がする…
「仮に式とかやるならお金かかるし…他にも色々…」
「式はやりたい!でも、それは後からでもできるよ?赤葦は嫌じゃないんでしょ?」
「そりゃあ、俺だってしたいですけど」
「じゃあそんな難しいこと考えないでさ、俺と結婚してくれませんか?」
「はい。あっでもせめて卒業まで待ってください。」
顔を赤らめて返事をしたくせに、切り替えが早い。
まぁそんなとこも好きなんだけど!
「しょうがねぇなー待ってやろう!どうせならさ結婚記念日の日付とかこだわってみちゃう?」
「いいですね。王道なのはどちらかの誕生日とか記念日とかですよね。」
「うちの親はね、いい夫婦の日なんだ!2人の真ん中バースデーなんだって!」
「なるほど、真ん中バースデーか…俺と木兎さんだと10月28日ですね。」
「結構先だな…」
「なら、4月5日とかどうですか?」
「4月5日?」
「はい。梟谷の木兎さんの背番号と俺の背番号です。」
良くないですかと目で訴えてくる赤葦も可愛い。
「天才だな!それに4月5日って入学式もそれくらいだから出会った記念日かもじゃない?」
「確かにそのくらいですね。」
俺ら天才!っとハイタッチを交わすとカレンダーに結婚記念日と書き込んだ。
それを見て嬉しそうに笑う赤葦を見てまた幸せな気持ちになる。
早く4月5日になるといいな。
そして、
「赤葦さん、卒業おめでとうございますっ…」
「ありがとう。尾長なら大丈夫だから頑張れよ、キャプテン。」
「はい!」
卒業式に来てくれたバレー部員たちを代表して尾長から花束をもらった。
泣いてくれてる後輩たちもいて俺って慕われてたんだなぁって実感した。
「試合観に行くから」
「はい」
「呼んでくれれば試合相手にもなるよ。木兎さんたち連れて行く。」
「それは手強そうっすね」
最後にもう一度運動部らしく大声でありがとうございましたと言われ少し周りから注目を浴びた。
他に特に用もないのでまだ残ってる人は多いけど帰ろうかなと思っていたら門の外で俺を呼ぶ声がした。
「赤葦!」
「木兎さん。来てくれたんですか?」
「おう!卒業おめでとう!」
「ありがとうございます。」
そのまま家に帰り、家で簡単なお祝いをしてもらった。
「赤葦も卒業した事だし、これでやっと結婚できるな!」
「そうですね。なんか改めて言われると照れますけど…」
「今更!?」
「そろそろ実家にご挨拶しなくていいんですか?」
「あ〜、今週末とか行っちゃう?」
そんなショッピング感覚で行っていいものなのか…
「なら今度こそちゃんと菓子折り持って行かないと…あっ俺スーツとか持ってないです」
「そんなキッチリしなくても大丈夫だって!スーツは着たいなら俺の貸すよ?」
木兎さんのスーツ…
肩幅とか合わなかったら悔しいからな…考えとこう。
「てかさ、俺が一緒にいて欲しくないとかいっておきながら何だけど…赤葦の家は挨拶行かなくていいの?」
「必要ないですよ。あそこはもう俺の居場所じゃないです。俺の居場所はここしかないんですから。木兎さんが責任とってください。」
「とる!とります!」
木兎さん家への挨拶に行く前日の夜。
リビングで少し話があると言われ2人でテーブルについた。
何事かと思い少し戸惑ったが「そんな深刻な事じゃねぇよ」とのことだ。
「えっと、一応結婚するわけだから言っておくべきかなって思ったんだけど…」
「今更どんな事カミングアウトされても…たとえ殺人犯だったとしても嫌いになれる自信はないんで早く言ってください。」
「赤葦、お前かっこいいな!そんな深刻なことじゃないってば!それで、俺ね。
木兎家の本当の子どもじゃないんだ。」
「養子ってことですか?」
「そうらしい。でも赤ん坊の頃に引き取られたから記憶はないんだけど」
確かに言いづらかったのかもしれないが本当に大したことじゃなくて良かった。
「失礼ですが、お姉さん方は?」
「2人とも養子だって。だから似てないだろ?」
「まぁ顔とかはあんまり…でも雰囲気というかオーラ?はそっくりでしたよ。」
「ほんと!?」
「ええ。素敵な家族だなと思いました。」
木兎さん家への挨拶も無事済み、3月が終わった。
明日は4月5日。
そう、つまりは―
「結婚前夜だな!」
ウキウキの木兎さんにベッドへと運ばれ、
その後めちゃくちゃ…以下略。
……To be continued