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蒼月
2,751
一話完結型がよかったのに書きすぎたので2話連続投稿します。
長ったらしい文章ですみません。
こちらはにじさんじ所属伊波ライさん、緋八マナさんの二次創作小説になります。
センシティブではないですが、一応腐向け作品になります。苦手な方ご注意ください。
俺の部屋には、星がある。
正確には、星のふりをした小さな光だ。
天井に吊るした古い家庭用プラネタリウム。
電源を入れると、四畳半の狭い部屋いっぱいに、偽物の夜空が広がる。
本物の星には到底届かない。
数も少ない。
明るさだって、都会の街灯に負けるくらい弱い。
それでも俺は、この小さな宇宙が好きだった。
何かを始めるには狭すぎる部屋。
夢を見るには現実的すぎる部屋。
でも、誰かとの時間を大切にしまっておくには、ちょうどいい場所だった。
「まだそれ使ってるんや」
そう言って笑う声を、今でも覚えている。
緋八マナが初めて俺の部屋に来た日のこと。
外は雨だった。
春なのに少し冷える夜。
玄関に置いた傘から落ちた水滴が、床に小さな跡を作っていた。
「お邪魔します」
そう言いながら入ってきたマナは、相変わらず周りをよく見ていた。
散らかった本。
机の上の飲みかけのペットボトル。
壁に貼ったままの予定表。
「……生活感すごいな」
「悪かったな」
「いや、ええと思うけど」
そんな会話をしながら、マナは部屋の奥へ進む。
そして、天井を見上げた。
スイッチを入れた瞬間。
暗い部屋に、小さな星が浮かぶ。
その光を見たマナは、しばらく黙っていた。
「……綺麗やな」
俺は少し照れながら言った。
「安物だよ」
「知ってる」
「知ってるのかよ」
「前に話してたやん」
そう言って笑う。
何気ない会話だった。
でも、その瞬間。
この機械を買った意味ができた気がした。
マナは星を見るのが好きだった。
正確には、星を見る時間が好きだったんだと思う。
何か特別な話をするわけじゃない。
くだらないことで笑ったり。
将来の話をしたり。
何も話さず、ただ同じ景色を眺めたり。
そういう時間を大事にしていた。
ある夜。
いつものように天井を見上げながら、マナが言った。
「本物の星って、遠いよな」
「急にどうした」
「いや……」
少しだけ間を置いて。
「遠いから、見えるものもあるんかなって」
俺はその意味を、その時はちゃんと分かっていなかった。
ただ隣で笑っているマナを見ていた。
この時間がずっと続けばいいと思っていた。
俺はマナのことが好きだった。
友達とか仲間とか。
そんな言葉だけじゃ足りないくらい。
一緒にいると落ち着いた。
何でもない話をする時間が好きだった。
笑った顔を見るのが好きだった。
頑張りすぎるところも。
誰かのために無理をするところも。
全部、大切だった。
だから。
いつかも変わらず隣にいるものだと思っていた。
でも、星は同じ場所にあるから星でいられるわけじゃない。
遠くにあっても、同じ夜空の中にあるから綺麗なんだ。
そのことを知ったのは。
マナが遠くへ行くことになった時だった。
ヒーローとしての活動が本格的になって。
少しずつ、俺たちの生活は変わっていった。
予定が合わない日が増えた。
話せる時間も減った。
でも、関係が変わったわけじゃなかった。
会えばいつも通りだった。
くだらない話をして。
笑って。
昔と同じように星を見た。
ただ。
未来へ進む方向が少し違っただけ。
マナが西から東へ行くことになったと聞いた時。
寂しくなかったと言えば嘘になる。
でも、それ以上に思った。
「すごいな」って。
自分の知らない場所で。
自分にはできないことを。
この人はやろうとしているんだって。
引き止める理由なんて、どこにもなかった。
俺が好きな人が、夢に向かって進もうとしている。
それを止めることなんてできなかった。
最後の日。
マナは俺の部屋で、いつものように星を見ていた。
「まだちゃんと映るんやな」
「最近ちょっと怪しいけど」
「でも綺麗やん」
「……そう?」
「うん」
少し笑って。
「ここで見る星、好きやった」
その言葉だけで、胸がいっぱいになった。
駅までの道。
何を話したのか、あまり覚えていない。
ただ、最後に。
マナが振り返って言った。
「また見せてな」
「いつでも見せる」
俺がそう答えると。
マナは少し困ったように笑った。
「違う」
「え?」
「会えへん時も、ちゃんと見てってこと」
電車が来る。
別れの時間。
でも、終わりじゃない。
そう思わせるような笑顔だった。
「またな」
そう言って手を振る姿を。
俺は見えなくなるまで見送った。
コメント
1件
うわああああ……もう、めっちゃエモい……!!😭💕💕 プラネタリウムの星、ただの安物なのに、二人の思い出が詰まっててすごく尊い……。 「会えへん時もちゃんと見て」ってマナの言葉、めっちゃ刺さった……距離ができても繋がってるって感じがするよね。 さらっとした別れのシーンなのに、じんわり響く……藤森さんの文章、すごく好きです。次も楽しみにしてます!🌸✨