私
の名前は小鳥遊優衣(たかなしゆい)
高校2年生! 今日から新学期が始まるよー!! あぁ……なんでこんな日に限って寝坊なんてしてしまうかな~
せっかく新しい学校生活の始まりなのに、初日遅刻とかあり得ないよね!? とりあえず全力疾走で駅まで向かってるけど、間に合うかどうか微妙なところかも。
いつも通る道だけど桜並木は初めて見たかもしれないな。
キレイなピンク色に染まった木々を見上げながら走り抜ける。
まだ咲き始めたばかりのソメイヨシノの花びらが舞い散る中、ふと視線を下ろせば校門の前に見慣れない制服を着た女の子がいた。(あー新入生かな?)
そう思って少しの間眺めていると目が合ってしまった。
慌てて目を逸らすと再び女の子を見る。
その子はこちらを見上げながら不思議そうな顔をしている。
しばらく見つめ合っていると何かを決意したのか、真っ直ぐ僕を見て話しかけてきた。
「あの……すみません。入学式の会場を教えて頂けませんか?」
「えっとね、校舎の中に入ってすぐ左手にある掲示板に案内図があるからそれを見た方がいいよ」
「ありがとうございます! 親切なんですね!」
満面の笑みを浮かべる女の子を見ながら僕は苦笑いしかできなかった。
それはそうだ。
だって目の前にいる女の子は明らかに年下なのだから。
「じゃあそっちだから頑張ってね」
「はい! 頑張ります!」
元気よく返事をした少女は頭を下げてから駆け足で会場へと向かった。
その背中を見送った後、僕は自分の教室へと歩き出す。
(あんな子もいるんだなぁ)
今まで生きてきて同年代と思われる異性と話した経験がほとんどなかった。
しかし先ほどの女の子のおかげで少し緊張がほぐれた気がする。
そんなことを考えながら歩いているといつの間にか教室についていた。
黒板を見ると席順が書かれている。出席番号順に並んでいるようだ。
自分の名前を探すと一番後ろの窓際だった。
(よっしゃ!)
僕は喜びのあまりガッツポーズをした。教室を見回すとみんな嬉々として友達と話してる。隣の女の子を見てドキッとする。肩まで伸びた髪から覗く整った顔立ち、胸元にあるリボンの色は青なので同じ一年生らしい。僕に気づいて笑顔を見せる彼女に見惚れてしまった。
先生らしき人が入ってくる。眼鏡をかけた小柄な女性だ。教壇に立つと、チョークを手に取り黒板に何か書き始める。
「今日から新しいお友達が増えましたよ~」
(あぁ……またか)
クラス中がざわつき始めた。
「はい静かに!では入ってきてください!」
教室の扉が開かれ、転校生と思われる人物が入ってきた。その瞬間―――僕は思わず息を飲む。
綺麗な長い銀髪が揺れている。透けるような白い肌。人形のように整った顔立ち。華奢な手足。美しいドレス姿の少女が、俺の前で微笑んでいる。少女の名はアリスティア・フォン・マルドゥック。俺の婚約者である。
「うふふっ!タクミ様!」
そう言って笑う彼女から俺は目を離せなかった。
ーーああ……可愛いすぎる!! 天使かな?女神さまですか? こんな子が嫁さんとか最高じゃん! 異世界転生して良かったぁあああ!!! 俺の名前は安藤満流(あんどう みつる)。17歳の高校2年生。特に取り柄もない普通の高校生だったのだが、ある日突然トラックに轢かれてしまったのだ。
死んだと思ったら、何故か生き返った。
俺が死んだ瞬間の記憶がないから、何故そうなってしまったのかわからない。
ただ一つ言える事は、俺は一度死んでしまったという事実だけだ。
目が覚めたらそこは見知らぬ部屋だった。
見覚えの無い天井……知らない匂い。
体を動かそうとするも力が入らない。
そういえばさっきまで俺は何をしていた? 何かをしていた気がするが思い出せない。
ふと視線を感じてそちらの方へ目を向けるとそこには一人の少女がいた。
年齢は十歳前後だろうか? 綺麗な白髪で透き通るような青い瞳をしている美少女がベッドの横に座っていたのだ。
その子はこちらを見て驚いた表情を浮かべている。
「お兄ちゃん!」
女の子は叫ぶように声を上げた後、急いでどこかへと行ってしまった。
(一体何があったんだ?)
自分がどうしてこんな場所にいるのか理解出来ないまま再び眠りについた。
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