村での事件を解決し、ローザリンド、フィン、ドーベンは再び冒険者ギルドへ戻ってきた。ギルドの大広間は活気に溢れ、多くの冒険者たちが次の依頼を求めて集まっている。
「さあ、次の依頼を見つけるわよ!」ローザリンドは胸を張るが、すぐに受付にいるギルド職員の冷たい視線に気付く。
「あら、なんか冷たくない?」ローザリンドが首を傾げると、フィンが苦笑いで答える。
「いや、たぶんこの間の失敗依頼のせいだろ。モンスター退治に行ったのに、モンスターより先に昼寝した人なんてそうそういないからな。」
「あれは準備運動よ!結果的に解決したでしょ?」
「いや、ドーベンが全部片付けただけだろ。」
三人が掲示板で依頼を探していると、一人の中年冒険者が声をかけてきた。
「新入りだろ?ギルドの掟には慣れたか?」
「掟?そんなものあるの?」ローザリンドが首をかしげる。
中年冒険者は苦笑いしながら説明を始める。
「ギルドには暗黙のルールがあるんだ。報酬はギルドに納めるとか、モンスターの素材はギルドが優先的に買い取ることとか。」
「それって結構厳しいじゃないの!」ローザリンドは驚く。
「そうだ。だから俺たちも、依頼だけじゃ生活できなくて、サイドビジネスに手を出す奴が多い。」
「サイドビジネス?」フィンが訊ねると、中年冒険者は小声で答えた。
「たとえばモンスターをギルドに報告せずに裏で売るとか、依頼を達成したフリをするとかだな。」
「それ完全に不正じゃないか!」フィンが驚く。
「まあな。だが、この世界で生き残るためには必要なことなんだよ。」
その言葉に、ローザリンドは少し考え込む。
掲示板に張り出された新しい依頼に目を留めた三人。薬草の採取で、報酬は500ゴールド。しかしその横に小さな注意書きがあった。
「特別依頼のため、登録料50ゴールド」
「え、なにこれ?依頼に参加するだけでお金を取るの?」ローザリンドが不満を漏らす。
「そうだよ。これがギルドのやり口さ。」フィンがため息をつく。
「でも報酬が500ゴールドならいいじゃない。やりましょう!」ローザリンドが勢いよく言うと、フィンは困惑顔で答える。
「いや、お嬢様、ギルド税とか経費とか差っ引いたら、俺たちの手元に残るのはたぶん…30ゴールドくらいだ。」
「なによそれ!?貴族の私の時間がそんな価値しかないってこと!?」ローザリンドが叫ぶ。
「そうだね。あとドーベンの食費を考えたら赤字だね。」フィンが現実を突きつける。
夜になり、三人は宿屋で休息を取ることにした。だがフィンは眠れず、こっそりギルドの様子を探りに戻る。
すると、暗闇の中でギルド長が誰かと密談している声が聞こえた。
「新しい冒険者たちはいい金ヅルだ。高額な登録料と税金を払い続ける限り、俺たちの懐は安泰だ。」
「でも、あのドーベンとかいう奴は厄介ですね。あいつがいると、他の冒険者が萎縮しちまう。」
「心配するな。奴が何者か突き止め次第、ギルドの規律を理由に追い出してやるさ。」
フィンは息を飲んだ。ドーベンへの疑念がさらに深まる。
翌日、フィンはローザリンドに話すべきか迷いながら、次の依頼に向かう準備をしていた。だが呼び出しが突然届いた。
「ローザリンドさん、あなたの従者についてお話したいことがあります。」
「え?ドーベンのこと?」ローザリンドが驚く。
「そうだ。あの男はギルドの掟に反する行動を取っている可能性が高い。我々ギルドとしては看過できない。」
「そんな!彼は私たちを助けてくれる大切な仲間よ!」ローザリンドが抗議するが、ギルド長は険しい顔を崩さない。
「ギルドの掟に従わない者に未来はない。それを理解してください。」
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