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ギルド長の不穏な言葉を受けて、ローザリンドたちは宿屋へ戻った。
だが、そこにはいつもの無表情なドーベンが静かに座っているだけだった。
「ねえドーベン、あなた何か悪いことしたの?」ローザリンドが直接問い詰める。
「いいえ、私はあなたに仕えるために存在しています。」とドーベンは平然と答える。
「それ、いつも同じ返事だよな。何か隠してるんじゃないのか?」フィンがジロリとドーベンを睨む。
「…必要とあれば全て話します。しかし、お嬢様が知らない方が良いこともあります。」
「うわ、余計に怪しい!」ローザリンドが叫ぶ。
するとドーベンは一瞬だけ考え込んでから静かに口を開いた。
「…では、私の正体について少しだけお話ししましょう。」
「私の本名は『第47機動型従者試作モデル-D47』です。」
「…待って、なんで名前に数字がついてるの?」ローザリンドは困惑する。
「私は人間ではありません。王国で開発された人工生命体であり、かつて『戦場従者』として活躍していました。」
「え、えええええ!?」ローザリンドとフィンが同時に叫ぶ。
「戦場従者って、要するに兵器ってことか?」フィンが尋ねると、ドーベンは静かにうなずく。
「はい。私はかつてのあの戦争に利用され、任務をこなすためだけに生きていました。しかし…その役目が終わった後、研究所が閉鎖され、廃棄される運命にありました。」
「それじゃあ、あなたは…逃げ出したの?」ローザリンドが目を丸くする。
「いいえ。ある人物に救われたのです。その方こそ、今の私がお嬢様に仕える理由です。」
「誰?誰なのそれ!?」ローザリンドが食い下がるが、ドーベンはそれ以上語ろうとはしなかった。
その頃、ギルド内ではドーベンの正体について調査が進んでいた。ギルド長は部下に命じて王国の記録を調べさせている。
「やはりドーベンのような従者型の存在は厄介だな。何としてもローザリンドたちから引き離す必要がある。」
「しかし、人工生命体を追放するだけでは危険では…?」部下が恐る恐る提案するが、ギルド長は笑い飛ばす。
「だからこそ、ギルド法に基づいて徹底的に取り締まるのだ。ルール違反者として処分するだけの理由を見つければいい。」
翌朝、三人は新しい依頼に向かう準備をしていたが、フィンは昨夜の話が頭から離れない。
「なあドーベン。あんたを救ったって人、どんな奴だったんだ?」
ドーベンは一瞬言葉に詰まるが、静かに答える。
「…その方は非常に強い意志を持ち弱者を守ろうとする方でした。かつてお嬢様のお父上とも交流があったと聞いています。」
「え、父様と?」ローザリンドが驚く。
「はい。しかし、その方は記録から削除されており、私も多くを知りません。ただ一つだけ確かなのは…その方の意志を継ぐことが、私の使命だということです。」
「なんか壮大な話になってきたな。」フィンが苦笑いする。
「ええい、だったらその使命ってやつ、私を無事にお城に戻すことに使いなさいよ!」ローザリンドが腕を組む。
「もちろんです。お嬢様が安全でいられる限り、私は全力を尽くします。」ドーベンは深く頭を下げた。
だが、次の依頼の途中、ギルドの追手が彼らの前に現れる。
「D47。お前をギルド規約第12条『危険な存在の排除』に基づき拘束する!」
「何よそれ!? ドーベンが何をしたって言うの!?」ローザリンドが怒鳴るが、追手たちは容赦なく迫る。
「どうやら戦闘は避けられませんね。」ドーベンが無表情のまま剣を構える。
「おいおい、あんたが兵器っていうの、今ここで証明しなくていいからな!」フィンが慌てるが、ドーベンは冷静だった。
「心配無用です。お嬢様とフィン様を守ること、それが私の存在意義ですから。」