※リアム看守、スティーブ看守、生存if
PKST団としての活動をしていてとある兄弟と知り合いになった。
俺はあの人らのことをよく知っているけど、あの人らは俺のことはあまり知らない筈だった。
メデューサ号から無事帰還したぺいんとたちと、重傷を負ったものの助かった看守2人。
その2人お見舞いに行く3人を送り出して俺は自分のすることをしていた。
ステイサムさんの弟であるスティーブ看守とその上司のリアム看守。
ステイサムさんはステイサムさんで大怪我を負った(うちの仲間によって)ため長いこと入院していて、やっと退院。
となったところで同僚と弟が死にかけで運ばれてきたと連絡があった。
それと同じくしてぺいんとたちからも連絡を受けていたわけだが。
「すげー偶然」
そう思っていた。
まぁそんなある日、時々あった3人に連れられお見舞いに行くことになった俺はわちゃわちゃと会話するのを後ろから眺めていた。
リアム看守は(ぺいんととしにがみさん曰く)化け物並みの回復力でもうすぐ退院できるらしい。
何やかんやで喜ぶみんなを見てホッとする。
自分たちのせいだと罪悪感で悩んでいたのを見ていたから。
スティーブ看守はだいぶ動けるようになりリハビリをしているらしい。
ステイサムさんやクロノアさんから教えてもらった。
「俺、みんなの分の飲み物でも買ってくるから先に行ってて」
「「「わかったー」」」
3人の後ろ姿を見送って、いつものように飲み物を買いに踵を返す。
「…ん?…あれって…」
小さな噴水とかがある庭園のベンチに身覚えるのある人が座っていた。
この時間はリハビリに行ってるはずだけど。
「スティーブ看守?サボりですか?」
「うっわぁ⁈」
俯いていたスティーブ看守は俺を見てベンチからずり落ちそうになる勢いで顔を上げた。
「び、っくりした…!」
「ごめんなさい。…こんなとこにいたらリアム看守に怒られますよ?…サボるな!…って」
「ちょ、声真似やめて…っ」
座り直したスティーブ看守に首を傾げる。
「で?リハビリはどうしたんですか?」
「いやー……実は今日の担当の人がちょっと怖い人でねぇ…」
「え、逃げてきたってことですか?」
「うん、…そんな感じかな」
「……まぁ…ここまで逃げて来れるくらいには元気になったってことなんでしょうけど……ぺいんとたちがあなたがいないって探し回っちゃいますよ?自動的にリアム看守の耳にも入ると思いますが…」
この人が逃げるくらい怖い人ってリアム看守だけかと思ってた。
「うーん…リアム看守長はあんなんでも優しいとこあるから」
「あんなんって…」
スティーブ看守の隣に座る。
「トラゾーくんこそ、みんなといなくていいの?」
「あー……俺はあなたたちとそこまで関わりないですし。スティーブ看守もたまたま見つけたから声かけただけなんで。…それにみんなが話してるのを後ろで見てるほうが楽しいですし、知らない人間がいるより知ってる者同士で話したほうが気楽でしょう?」
これは本音。
俺だってあまり知らない人間がいると話しづらさというか気まずさがある。
おそらくリアム看守もスティーブ看守もそうだろうし、ぺいんとたちもそうだろう。
あいつらとこの人たちしか分からないことに俺が入ったところで空気を悪くする。
ならば最初から入らないほうが得策である。
「まぁ、そうかもだけど。…寂しくないの?キミは」
「寂しい……うーん、仲間の交友関係まで口を出す気はないですから、寂しくはないですよ」
「達観してるね。リアム看守長見てるみたい」
「いやいや、普通のことですよ」
寂しいと思ったことはない。
だっていつもひとりだったし。
それが当たり前だったから。
「…ねぇトラゾーくん」
「はい?」
「俺のリハビリに付き合うつもりでちょっとその辺歩かない?」
「え?」
「本音を言えばリアム看守長に見つかった時に助けてほしいなぁ…なんて」
手を合わせて見上げるように言ってくるスティーブ看守。
宛ら大型犬のような感じにも見える。
「……暇ですし、みんなの分の飲み物買うつもりでもあったんでいいですよ。助けるかどうかは置いといて」
「えぇ⁈」
「…ふふっ、冗談ですよ」
コロコロ変わる表情に思わず笑ってしまった。
「!」
「?、…ん?スティーブ看守?」
口を開けて固まるスティーブ看守の目の前で手を振る。
「おーい?」
流石に笑うのは失礼だったかと思っていたら菫色の目が見開かれた。
「……はっ!」
我に返ったスティーブ看守は顔を赤くして立ち上がった。
「そんないきなり立ったら危な…っ!」
案の定バランスを崩したスティーブ看守が後ろに倒れそうになる。
反射で手を引っ張った為、俺の上に乗っかるようにしてスティーブ看守は倒れ込んだ。
「もうほら言わんこちゃない!あんたまだリハビリ中なんですよ!」
「あわわわっ」
「ちょっと?…聞いてんのかよ」
1人百面相してるスティーブ看守を下から睨む。
というか重いな。
どうにか退いてもらおうと思案していたらベンチの背凭れから声をかけられた。
「おいウチのトラゾーに何してんすか」
「「うわぁ!!」」
聞き覚えありすぎる声の方向を見上げると、やっぱりぺいんとが俺らを見下ろしていた。
「ぺいんと」
「トラゾーはこっちにおいで」
「クロノアさんまで」
クロノアさんに手招きされて退いてもらおうとスティーブ看守の肩を叩く。
「あの?退いてくれますか?」
「わっ、ごめんっ!」
起き上がってクロノアさんの隣に行く。
「クロノアさんたちはスティーブ看守のこと探してたんですか?」
「それもあるけど、トラゾーがなかなか戻って来ないから心配して探してたんだよ」
「俺?いやいや…子供じゃないんですからそんな心配しなくても…」
柔らかく笑いつつもじぃっと翡翠に見つめられて、たじろぐ。
痛いくらいの視線には本気で心配していた、という思いが伝わってくる。
「ゔ…ぇ、っと、…ごめん、なさい」
これはこっちが折れるまでこの笑顔で圧をかけられるやつだ。
「分かればいいんだよ」
クロノアさんが俺の頭を撫でてきて、自分の背後に俺を下がらせた。
「んで?スティーブ看守はトラゾーに何してんですか」
ぺいんとはスティーブ看守を片目で睨んでいる。
「いや、話でもと思ったら、そのバランス崩しちゃって…トラゾーくんに、庇われた、感じかな…?」
「…へぇ⁇」
「ぺいんと、スティーブ看守は嘘ついてない。分かるだろ」
どう見ても事故だ。
何が楽しくて男が男を押し倒すんだよ。
「……そうだけど」
「何で怒ってるか分かんないけど、この人が所構わず人を襲うような人に見えるか?ぺいんとはスティーブ看守はそんな人じゃないって知ってるだろ」
「…ぅぐ」
クロノアさんの前に出てスティーブ看守に頭を下げる。
「すみません。ウチのが変な態度とってしまって」
そもそも俺がスティーブ看守に話しかけてなければこんなことにならなかったわけだし。
「いや…トラゾーくんは悪くないよ。彼らの言う通り調子乗っちゃった俺が悪いから。だから、顔を上げて」
顔を上げるとスティーブ看守は柔和な笑みを浮かべていた。
「俺がトラゾーくんと話してみたいなって思ったのはホント。たまに来るキミがここを通るのも知ってたから」
「偶然じゃなかったんですか?」
「いや?トラゾーくんとはなかなか会うタイミングが合わないみたいでねぇ。今日のは本当の偶然」
両手をぎゅっと握り締められる。
よくよく見れば俺よりも少し背の高い大人の男の人だ。
「けど、またこうやって俺と話してほしいな?」
「⁇、俺なんかで、よければ?」
「!!、ありがと!すっごい嬉しい!」
コロコロ変わる表情に大型犬のような人懐っこさ。
握られる俺よりも少し大きい手。
「っ、⁇」
ぽぽぽと顔が何故か熱くなった。
「トラゾーくんも話したいことあったら何でも言って?聞いてあげるくらいならできるから」
ね?と首を傾げる表情は俺を心配するような顔で。
ぺいんとたちにはない、言うなれば”大人”の顔だった。
「嬉しい、です。ありがとうございます…」
みんなには言えないこともあるけど、この人になら言ってもいいのかなって思う。
嬉しさに笑うとスティーブ看守は驚きと嬉しさの混じった顔で笑い返してくれた。
「だぁあ!!手ぇ離せ!俺のトラゾーに触るなよ!」
「は?いや、俺ぺいんとのモンじゃないし」
引っ剥がされて変なことを言うぺいんとを睨む。
「クロノアさんのモノでもないですよ。俺は俺のです」
口を開きかけていたクロノアさんはしゅんと肩を落とした。
こういう時悪ノリする人だから。
ため息をつきつつそう言えばと周りを見渡す。
「…ねぇ、しにがみさんは?」
こういう時に1番ふざけそうでふざけない人がいない。
「…あいつはお前が戻って来ないことで騒いでたらリアム看守に見つかっちまって、今は説教くらってる」
「ぁ…そ、それは、ごめん…」
「ほら戻るぞ。スティーブ看守、あなたはリアム看守が根性叩き直すって超笑ってましたよ」
「ひぇ…っ」
マジで怖い人なのか。
「スティーブ看守」
「ぅん…?」
「それ俺も一緒に受けますよ」
「ん?」
「助けてほしいって言ってた人を見過ごすわけにはいきませんから、俺も一緒に根性叩き直してもらいます」
手を伸ばしてスティーブ看守の手を握る。
「俺、あなたのこともう少し知りたいって思ったんで」
「「「!!」」」
「しにがみさんも助けに行かなきゃ。そんな怖い人ならそろそろ泣きながら逃げてきそうだし」
自分のものより少し大きな手に、心があったかくなるような嬉しくなるような。
どうしてそう思うのかを知りたい。
何故か熱の引かない顔を見られないように俺は泣き喚いてるであろう仲間と怖い人らしい看守の元へ、その熱を出させてるであろう人と走って向かった。
因みにホントにしにがみさんは泣き喚いていた。
ただ、俺とスティーブ看守を見た瞬間泣き止んでこっちに向かって浮気者たちめ!と意味不明に叫んできたけど。
助けに来たのにキレられる意味が分からんと首を傾げていたらスティーブ看守にはヤキモチじゃない?って言われ、それも意味が分からず謎は深まるばかりだった。
更に首を傾げたら一斉に鈍感と言われた。
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あれからスティーブ看守と2人で会おうとするたびに邪魔が入って、未だになかなか静かに話ができないでいる。
いや、あの3人にバレずにスティーブ看守と会うのは困難にも等しいけど。
「もう!あんたら俺の保護者か!邪魔すんなって言ってんじゃん!何で話すのダメなんだよ⁈」
「まぁまぁ、大人数の方が楽しいし。トラゾーくんもそんな怒りなさんなって」
「…スティーブさん”は”優しいですね」
「「「ゔっ」」」
「大人だから余裕あってかっこいいしな」
「そう言ってくれるのはトラゾーくんだけだよ…」
余程毎日リアム看守に絞られてるのだろうか。
まぁ抜けてると思うことは段々と見ていて思ったしぺいんとたちからも何となく聞いていたから。
「ぺいんとたちは、これ以上邪魔したら絶交するからな」
「「「え゛⁈」」」
固まる3人をじっと見るスティーブ看守は諦めたほうがいいよと肩を竦めていた。
「……」
「よし、…ちゃんと言われた時間には帰るから。友達と遊びに行くくらいなのに、なんでそんな怒るんだよ…」
「それは、俺が大人として教えてあげる」
にこっとスティーブ看守が笑いかけてきた。
「?、ホントですか?」
「うん。…うーん、そうなると帰れないかもだけど」
「⁇⁇」
どういう意味だ、と頭に疑問符が浮かぶ。
「まぁ、じゃあそういうことでトラゾーくんちょっと借りるね?…いろんな意味で返してあげれるか分かんないけど」
「「「!!」」」
「邪魔したら絶交」
「「「ぐっ…」」」
動き出そうとしたぺいんとたちは動きを止めた。
今度から無茶しようとしてたらこれ使お。
肩を引かれて歩き出すスティーブ看守に着いていく。
手を握られて嬉しく思った理由も、顔に熱が集まっていたワケも、この人になら全て打ち明けてもいいと思ったのが何故かも教えてもらった。
心と、身体に。
どう教えてもらったかって?
…それは、内緒だ。
コメント
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stytrッッ!?!? あまり見ないペアですけどちゃんとstyさんぽくて、大人の余裕ってものが見せつけられますね…( ≖ᴗ≖)ニヤッ 必死に止めようとしてるぺいんとたちも可愛いです笑