※短いし、雑文章。
第一印象はすごくすごい人、というものだった。
その次はホントに小さい人なんだ、だった。
長いこと一緒にいるにつれて面白いとか楽しいとか不機嫌になりやすいとか、いろんな一面を知ることができた。
意外、と言えば失礼かもしれないけど見た目に反して男らしい性格の持ち主であることも長い付き合いの中で知った。
それに自分にないものを持ってる人といるのは楽しい。
しにがみさんだけではなくて、ぺいんとやクロノアさんだってそう。
全く違うからこそこうやって長く一緒にいることができてる。
「トラゾーさん」
「はい?」
視線を少し下げるとしにがみさんが可愛らしく笑っていた。
「手を繋いでもいいですか?」
「?、いいですよ。はい」
自分の手に重ねられる手。
幾分か小さいけど、きちんと男の人の手をしている。
それにボルダリングをしてる為か手の平にはマメとかができていて固い。
「しにがみさんもちゃんと男の人なんですねぇ」
「ちょっと⁈当たり前のこと言わないでくださいよ。僕たち見てないとこないくらいの関係じゃないですか」
「…うーん、と…語弊を生みそうな言い方ですね…。強ち間違いではないですけど……俺ら日常組のみんながね?」
「旅行に行って裸の付き合いするくらいには仲良いですもんねー」
ぎゅっと握られる手。
「というか、なんで俺の手なんか握ろうと?」
「安心するじゃないですか、好きな人の手握ってたら」
「っっ、…そ、うです、ね」
語弊を生む言い方でもあったが、実際のところ語弊ではないという。
俺としにがみさんは所謂恋人という関係だ。
告白をしてきたのはしにがみさんのほうから。
全然、その気もなかったし寧ろ嫌われてるんじゃないかと思ってたくらいだから正直めちゃくちゃ驚いた。
すごい猛アピールの末、いつの間にか根負けして俺も好きになっていた。
「僕、トラゾーさんの手好きです」
「俺もしにがみさんの手も好きですよ?ちゃんと男の人なんだなってホントに思いますし、それにこの手から色々なものが作り出されてると思ったらすごく誇らしいです」
素直に、純粋にそう思って言葉に出すとしにがみさんは照れたのか顔を少し赤くして笑った。
「トラゾーさんに褒められるとなんか照れますね…」
「ええ?」
「だって、トラゾーさんだってすごいじゃないですか。脱獄シリーズも夢枕のだって。かなりの構想練られてて伏線回収した時なんか鳥肌ものでしたよ。コメント欄もすごかったですし。マップの制作もしたんでしょ。あなたも充分すごいですよ」
俺を見上げるしにがみさんは子供みたいにはしゃいでいる。
こう思ったことを素直に言えるところもいいなと思ったりする。
「すごい人に褒められると照れますね…」
「日常組はすごい連中の集まりなんですもん!」
「ふふっ、そうですね」
そのすごい連中の仲間に入れて嬉しい。
そう思って笑うとしにがみさんも笑い返してくれる。
「それにトラゾーさんのその素直な感情表現が僕好きですよ」
「ん?それ顔に出過ぎってことですか?」
顔に出やすいのは自覚してるけどなんだか恥ずかしいし、なんとなくムッとした。
「そうじゃないです。…って、ちょっと拗ねないでくださいよ」
「拗ねてねぇです」
握られる手をじっと見る。
クロノアさんとは違った綺麗な形をしてる。
きちんと手入れされてる為だろう。
「全く。可愛いですねートラちゃん」
「…ちょっと?トラちゃん呼びはやめてくださいよ」
「だって僕の手ばっか見てるからですよーだ」
「しにがみさんのほうが拗ねてるじゃないですか」
「拗ねてませーん」
ぷいとそっぽを向くしにがみさん。
これで、俺のこと組み敷いてるんだもんな。
普通逆じゃないかと思ったけど、ぺいんとたちには「いや正常」とばっさり言われた。
未だに納得いかない部分もあるけど、メンヘラっぽいと言われる彼だがそんなこともなく。
めちゃんこ甘やかしてくる。
砂糖に詰めたんじゃないかってくらい。
「もー…」
仕方ないなと思って、握られた手を引っ張って頭1個半くらい位置にあるおでこにちゅっとキスをした。
「!!」
「はい機嫌治りましたか?」
「スパダリかよ…」
「は?どういうこと?」
「僕には勿体無い人だと思うけど、誰にもあげたくないなぁって思っただけです」
にこっと可愛く笑ったと思ったら、手を引っ張られてキスされた。
勿論口に。
「っ、!よ…よ、く届きましたね…っ」
すぐに離されたけど、突然のことで顔が熱くなる。
そして咄嗟に照れ隠しで身長のことを揶揄ってしまった。
「うわ、……へー?じゃあ、身長のこと言うならトラゾーさんは僕なんかに可愛く啼かされてカワイソーですね」
すりっと指を撫でられてびくりと肩が跳ねた。
見下ろせば、さっきの可愛い笑顔が嘘のように男の人のカオになっている。
「〜〜!、」
「トラゾーさんはこの辿々しさが可愛くていじめたくなっちゃうんですよねー」
「もう!!人で遊ばんでくださいっ!」
言い合いになっても手を離したくないのは、この体温をまだ感じていたいから。
「まーまー!とにかく!僕もスパダリって言われるように頑張りますからっ」
「しにがみさんは今のままでも充分素敵だと思いますけど…」
まだ引かない熱を持った顔で思ったことを言う。
きょと、としたしにがみさんはまた嬉しそうに笑った。
「そーいうのが素で言えるあなたはスパダリ優勝ですね。負けたわ…」
「俺にとってはしにがみさんが1番です」
「もう!!そういうのだって言ってるじゃん!」
逆ギレされた。
しにがみさんがスパダリになるにはどうやら、まだまだ長い道のりがかかりそうだ。
でも、そんな長い道のりもずっと隣で一緒に歩いて行きたいなと思う。
口に出せばまたキレられそうだから胸の内におさめるけど。
俺のが年上なんだから思うことくらい許してほしい。
「不器用同士、一緒に歩いていきましょうね」
「置いてかないでくださいよ?」
「そっくりそのまま返しますよ」
「僕らなりに歩きましょう。トラゾーさんとならどんな道だって越えてけそうです!」
「えぇ俺もそう思います」
握り合う手をまた握り直して笑い合った。
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