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俺は街を探すために歩き続ける。
……と言いたいところだが、どうやらそれどころじゃない。
さっきから、あの獣人たちがずっと話しかけてくる。
「俺はレオ!よろしくな!
なぁ〜どこ行くんだ?
よかったらさ!俺と一緒に暮らさないか〜?」
――どんだけ呑気なんだよ。
俺はため息をひとつつき、レオから少し距離を取ろうとする。
「えっと……ごめん、街を探してるんだ。人間がいる場所、知らない?」
するとレオはピタッと横に並び、嬉しそうに尻尾を振った。
「街なら案内するぞ!任せとけ‼︎」
「本当か!」
助かったと胸を撫で下ろしたのも束の間――
「その代わり、一緒に暮らす約束な!」
「してないだろ!?勝手に条件つけるな!」
「え〜いいじゃん〜。人間でこんなイイ匂いのやつ、初めて会ったんだぜ?」
レオがぐいっと顔を近づけてくる。
「近い近い近い!やめろ!」
顔を赤くして慌てて押し返す。
……このスキル、もしかして想像以上にヤバいんじゃないか?
「ほら、さっさと行こうぜ!」
レオが俺の腕を掴む。
その時、森の奥から低い声が響いた。
「……そいつは俺が先に見つけた」
振り向くと、黒い毛並みの──大きな狼獣人がゆっくり歩いてきた。
黄金の瞳が鋭く光り、レオを睨みつける。
「お前は下がれレオ。コイツは俺と来る」
「はぁ!?お前こそどけよ!湊は俺と──」
レオと黒狼が火花を散らす中、
俺はただ震えながら思った。
(……街への道のり、険しすぎじゃない?)
湊の人外に溺愛される生活は、始まったばかり――。