コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
レベル3 畠山 里香
ハンドルを回し、病院の駐車場へ愛車を停める。
「ここが尾田和良中央病院ね」
ここに西村 研次郎とその娘 冴子が今でも入院しているはずだ。一階の受付で、私はこういうものだと名刺をだしたが。やはり、二人とも面会謝絶だった。
これでわかった。確かに、ここに今でも入院しているんだ。
西村 研次郎と冴子は……。
二人は生きていた……。
二人は一体どんな状態なのだろうかと、受付に言うと、担任の医師に電話をかけてくれた。医師が言うには西村 研次郎と冴子とも今でも意識不明の重体なのだそうだ。それから、私は病院をしばらく歩いた。西村 研次郎の担当はまだいるはずだ。やっと、見つけた看護婦たちの話では……。
西村 研次郎は意識のないままで、時々うわごとのように「level 4」と言い。ガタガタと震え、酷くうなされるのだそうだ。 それと、こうも言うのだそうだ。
「ゆ・る・さ・な・い」
西村 研次郎について、いや、きっと奥さんについて調べねば……。だが、意外な人物によって、簡単にとあることが判明した。それは動機だ。西村 研次郎の仕事仲間が時々くるというのだ。運良く今日も見舞いに来ていた。
「ああ、西村さんね」
「どういったことかわかりますか? あの市営住宅のエレベーターでの出来事です」
ここはカフェテリア。
私は中央のテーブルで、冷たいコーヒーを頼もうとしていた。男はお冷をしきりに飲んでいた。
「いやいや、実は私はその場にいたんですよ。あれは不幸以外の何ものでもなかったですよ……探偵さん」
「そうですか……それは大変心苦しいことを聞いてしまって……すみません」
「いえいえ、これも市が悪い。いや、この町がね。西村さんが引っ越してすぐですから。なんでも、欠陥だらけだったんです。あそこの住宅は」
「欠陥?」
「そうですよ。酷いですよね。工事会社が建設途中で倒産してしまったのに、そのまま人を住めるようにしたんですよ」
男はグビリとお冷を飲み下し、
「それから、西村さんはある記事では死んだとされていますから……余計に酷い……まあ、でも、かなり酷い怪我だったんです。私の目の前で……おっと、失礼」
男は一瞬、涙ぐんだ。お冷のおかわりをウエイターに頼んだ。
「冴子さんとは恋仲だったんじゃないかと、自分では思っていましたが、エレベーターに挟まって……顔も体も……以来、私は西村さんをずっと見舞うことにしました」
私は溜息をついた。これが、動機なのだろう。
西村 研次郎はこの町に恨みを持っていたのだ。
それも多大な……。