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突然の夕立で、校門前は騒がしかった。
「……最悪」
葛葉は空を見上げる。
「傘持ってねぇし」
『俺はあるけど』
「は?」
ローレンが小さな折り畳み傘を広げる。
『入る?』
「……しゃーねぇな」
二人で入るには、明らかに小さい。
肩が当たって、距離が近い。
「狭すぎだろ」
『文句言うな』
「お前が小さい傘持ってくるから」
『予報は曇りだった』
「言い訳すんな」
歩き出すと、ローレンの肩が少し濡れる。
「お前、濡れてんじゃん」
『いいよ、俺は』
「よくねぇだろ」
葛葉は傘を少しローレン側に傾ける。
『……くっさんが濡れる』
「別に」
『風邪引くぞ』
「それはお前だろ」
ローレンは少しだけ、むっとした顔をする。
『……くっさん』
「何」
『優しいの、無自覚なのずるい』
「意味わかんねぇ」
『……ほら、ここ』
水たまりを指さす。
『跳ねる』
「分かってる」
二人で避けながら歩く。
沈黙の中、雨音だけが聞こえる。
『……さ』
「ん」
『今日、クラスで』
『くっさんモテてた』
「は?」
『女子に囲まれてた』
「ただの質問攻めだろ」
『それが嫌』
「……」
葛葉は少し間を置いて言う。
「俺は」
「お前が他のやつと笑ってる方が嫌」
『……何それ』
「同じだろ」
ローレンは歩くスピードを緩める。
『……じゃあ』
『一緒に帰れてる今』
『結構、特別だな』
「雨なのに?」
『雨だから』
「……意味わからん」
『分かんなくていい』
ローレンは傘を少しだけ寄せる。
『……くっさんの肩』
『もう濡れてる』
「気にすんな」
『気にする』
「頑固」
『お互い様』
家の近くまで来ると、雨が少し弱まった。
『……もうすぐだな』
「だな」
『……また降ったら』
『また一緒に帰ろ』
「……当たり前だろ」
ローレンは小さく笑う。
『じゃあ』
『次もこの傘な』
「買い替えろ」
『嫌』
「なんで」
『……距離、近いから』
「……」
葛葉はそっぽを向く。
「……変なやつ」
『今さら?』
二人は並んで、同じ方向へ歩いていった。