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体育祭当日。
グラウンドは人でいっぱいだった。
「……暑」
葛葉はハチマキを頭に巻きながら、空を見上げる。
「日差し強すぎだろ」
『文句言うな』
ローレンは隣で、水の入ったペットボトルを振る。
『ほら』
「サンキュ」
一口飲んで、ため息。
「ローレン、何の競技出るんだっけ」
『借り物競走とリレー』
「リレー?」
『アンカー』
「……聞いてねぇ」
『言ってないし』
「お前な」
ローレンは少し笑う。
『くっさんは?』
「騎馬戦」
『……怪我すんなよ』
「心配?」
『当たり前だろ』
競技が始まって、時間が過ぎていく。
借り物競走。
ローレンは紙を引いて、走り出す。
『……「好きな人」……?』
観客席を見回して、目が合う。
「……は?」
ローレンは迷わず葛葉の前に来る。
『借り物』
「お前、堂々と来るなよ!」
『ルールだから』
先生の前まで引っ張っていく。
『この人です』
「……はぁ!?」
周りがざわつく。
《え、彼女?》
《男じゃね?》
葛葉は顔が熱くなる。
「お前……」
『ちゃんと連れてきた』
「真顔で言うな!」
結果、ローレンは一位。
戻ってくると、葛葉は腕を掴む。
「目立つだろ!」
『勝ったし別に』
「そこじゃねぇ!」
『……嫌だった?』
「……嫌じゃないけど」
『ならいいじゃん』
次はリレー。
ローレンはトラックに立つ。
『……くっさん』
「ん?」
『見てて』
「……当たり前だろ」
ピストルの音。
ローレンは全力で走る。
バトンを受け取って、最後の直線。
『……!』
ゴールテープを切る。
一位。
クラスが盛り上がる。
『……どうだった』
「……かっこよかった」
『今さら?』
「今さらだよ」
ローレンは汗だくで戻ってくる。
『のど渇いた』
「はい」
ペットボトルを渡す。
『……くっさん』
「何」
『さっきの借り物』
『本気だった』
「……知ってる」
『じゃあ』
『ずっと、俺のだな』
「……うるせぇ」
ローレンは少し笑う。
『体育祭』
『悪くないね』
「お前が目立つからだろ」
『くっさんが見てるから』
「……調子乗んな」
グラウンドの真ん中で、二人は並んで座った。
騒がしい体育祭の中で、そこだけ少し静かだった。