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グリルタ
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自宅の最寄り駅にたどり着き、晶子とカンナは並んで家までの道を歩いていた。帰りの電車の中で一口馬主の事を詳しくカンナから聞いていた晶子は尊敬のまなざしをカンナに向けていた。
「そんな難しい事よく出来たね、カンナ」
「あたいは晶子と違って学校の勉強は全然ダメだかんな。それにあたいが行ってる公立の中学は程度低いし、男子は悪ガキばっかりだし。別な事でがんばらねえと」
広い車道の脇の歩道側を歩いている時、突然後ろからブッブッというバイクのクラクションが鳴り、大型のバイクが二人のすぐ横に滑り込むようにして停まった。
乗っていた男性がヘルメットを取ると、もじゃもじゃの髪形に黒々とした口ひげの顔が現れた。カンナが声をかける。
「あ、父ちゃん。今日は仕事上がりなのか?」
カンナの父親はうなずきながら訊いた。
「競馬場行って来たんだよな。どうだった?」
「4着」
「はあ? じゃあ一銭にもならねえのか?」
「それは馬券の話だって何度も言っただろ。4着なら馬主には賞金出るんだよ」
カンナはショートパンツの尻ポケットからメモ帳を取り出して、さっきの計算を書き込んだページを見せる。
「多分今回はこのぐらいの儲けな」
「おほ! 入会金とか元が取れてるじゃねえか。じゃあ次のレースからは、これぐらい丸儲けになんのか?」
「5着までに入れればな。そん時はあたいの分け前忘れんなよ」
「分かってるって。あれ、友達と一緒だったか?」
カンナの父親が晶子に気づいて目を向ける。晶子はちょこんと頭を下げた。カンナが晶子の肩に手を回して上機嫌な口調で言う。
「いつも話してる晶子だよ。あたいの自慢の親友」
カンナの父親はバイクから降りて、少し膝を曲げて晶子の視線まで自分の頭の位置を下げた。
「ああ、あんたが晶子ちゃんかい。いつもうちの馬鹿娘につき合ってくれて、ありがとよ」
「あ、いえ。あたしもカンナといると楽しいんで。あたしこそお世話になってます」
「やっぱいいとこのお嬢さんは言う事が違うねえ。ま、こんな娘だけどこれからもよろしくな」
カンナの父親は再びバイクにまたがってカンナに言う。
「今日はどうする? 後ろに乗ってくか?」
カンナは首を横に振った。
「いや、晶子と一緒に歩いてく。そうだ、父ちゃん。途中でスーパーで米買ってきてくれよ。今夜の分足りないかもしんない」
「おっしゃ、分かった。いつもの5キロ入りでいいのか?」
「うん、それ」
「じゃあ、晶子ちゃん、うちの馬鹿娘よろしくな」
「いちいち馬鹿娘って言うんじゃねえよ! 飯作ってやらねえぞ」
「冗談だって、マジで怒るなよ」
そう言ってカンナの父親は少し顔を上に向け大きく口を開けてギャハハハと笑った。ヘルメットを被ると颯爽とバイクで走り去って行く。
その後ろ姿を見送りながら晶子がつぶやく。
「なんか、カッコいいお父さんだね」
「見た目だけだよ。高校中退の元暴走族で、日雇いだし。本人はかっこつけて、俺はフリーランスなんだ、なんて言ってるけどさ」
再びカンナと並んで歩きながら晶子は思った。さっき見たカンナの父親の笑い方はカンナのそれにそっくりだと。
カンナも笑う時は顔を上げて大きく口を開けてギャハハという感じで豪快に笑い声を上げる。あの笑い方は父親譲りなのだ、と晶子は思い、なんとなく微笑ましくなった。
コメント
1件
やっと第19話読んだよ〜。カンナのお父さん、見た目はワイルドだけど娘思いでいい人だね!「うちの馬鹿娘」って言いながらも、ちゃんと晶子にも優しくて。 何より、あの豪快な笑い声がカンナとそっくりって晶子が気づくところ、すごく微笑ましかった🥺 親子ってやっぱり似るんだなあ。こういう日常の温かい描写、好きです。