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中学3年生になると、カンナは新しくお金を稼ぐ方法を探し始めた。結局自宅の近くではらちが開かなかったようで、休日に晶子がカンナの姿を見かける事が減った。
5月の下旬の週末の昼下がり、たまたま晶子が家族で東京の浅草へ出かけた時の事。有名な観光地の中心である雷門の近くの道端に、カンナが何かを抱えて地面に座っているのを見つけた。
晶子が近づくと、カンナが「Show the Way」と書かれた段ボールに細い木の棒をくっつけた小さな看板を抱えているのが見えた。
「カンナ、何やってるの?」
不意に晶子に話しかけられたカンナは、ちょっと驚いた様子で立ち上がった。
「お、晶子じゃん。偶然だな」
「夏の新しい浴衣をお父さんとお母さんと一緒に買いに来たんだ。ええと、お母さんとは会った事あるよね。お父さんとは初めてかな?」
晶子はそう言って両親を手招きした。晶子の母親もさすがに驚いたようで、心配そうな口調でカンナに話しかける。
「あら、カンナちゃん。ずいぶん遠くまで来てるのね」
晶子の父親も、眼鏡の位置を正してカンナに声をかけた。
「やあ、君がカンナちゃんかい? 晶子から時々話は聞いてるよ。こんな所でアルバイト?」
カンナは指で鼻の下をくいッとこすって、いたずらっぽい笑い顔を浮かべた。
「いや、中学生は雇われて働くのは原則禁止だってからさ。ここで外国人の観光客の道案内してんの。自分で勝手にやる分にゃ自由らしいから」
晶子は心底びっくりしてカンナに言った。
「その看板みたいなの、そういう意味? 何て書いてあるの?」
カンナは見るからに手作りという感じの手持ち看板の上の、マジックで手描きした文字を指差した。
「ええと、道案内します、みたいな意味らしい」
「カンナ、外国語話せるの?」
「んなわきゃねえだろ。英語だって学校の通知表は最低の評価だぜ。観光客はたいてい地図持ってるし、身振り手振りで何とかなるもんだよ」
感心したという表情で晶子の父親がカンナに訊く。
「それで、いくらで案内してるんだい?」
「それはお客次第。目的地まで連れてってやると、適当に金くれるんだ。あ、そうだ、おじさん、これって何か分かる?」
カンナがジーンズのベルトに付けているポーチから一枚のお札を引っ張り出して見せた。やや赤い色のデザインで10と書いてある。
数秒それを見つめて晶子の父親が言う。
「ユーロだね。ヨーロッパの国で使われているお金だよ。案内した観光客にもらったのかい?」
「ああ。さっき浅草寺まで連れて行った外国人の家族にもらった。これいくらぐらい?」
「ううん、そうだな。今の為替相場だと、1ユーロで130円ぐらいかな」
「え! じゃあ、これ1枚で、ええと、1,300円てこと?」
「まあ、そんなところかな」
「これどうやったら日本の金に換えられるの?」
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グリルタ
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「銀行へ持っていけばいいよ。あと、外国人観光客が増えているから、こういう観光地だと外貨両替所ができているんじゃないかな? そういう所でも換えられるよ」
「晶子、今何時だ?」
晶子が腕時計を見て3時ちょっと過ぎと答えると、カンナは段ボールの看板を折りたたみ始めた。
「じゃあ銀行の窓口はもう閉まってるな。ええと両替所だっけ、そこ探す。そんだけ稼げてんなら、今日は終わりだ」
晶子は戸惑いながらカンナに訊いてみる。
「どうしてこんな事始めたの?」
「来年はあたいも高校じゃん。金準備しとかないとな、入学するだけでもいろいろかかるし」
「そうなんだ。大変だね」
「いやもう慣れてっから。じゃあ、あたいは行くよ。晶子、またな」
「うん、気をつけてね」
雷門の向こう側に走って行くカンナの後ろ姿をしばし見つめながら、晶子の両親は大きく息をついた。
「しっかりしてる子ね、うちの晶子と同い年なのに」
「全くだ。すごい行動力だな。僕の会社の若い連中に見習わせたいよ」
コメント
1件
え〜っ!カンナ中学生で浅草で外国人観光客の道案内してるの!?😳💦 手作り看板に「Show the Way」って書いて身振り手振りで案内するとか行動力バケモンすぎる…!ユーロもらって「これ1,300円!?」って計算してすぐ銀行行こうとするのも賢いし、高校入学のために準備してるっていう覚悟に胸が熱くなったよ🔥✨ 晶子パパが「会社の若い連中に見習わせたい」って言うの分かる〜!カンナのバイタリティ、マジでかっこいい!次も楽しみにしてるね!📖💕