テラーノベル
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翌日。私は約束していた時間に中庭に来た。
もう既に桃瀬さんは来ていて、何やら絵を描いている様子だった。
風に揺られて中庭の風景を描いていて、私には気づいていない。
集中している中話しかけるのはよくないと思うけど … 思い切って話しかけようっ。
「 桃瀬さんっ、お待たせしました … ! 」
駆け足で桃瀬さんの所に行くと、優しそうに微笑んだ。
「 いえいえ、全然待ってませんよ 」
桃瀬さんは優しいな。
きっと絵を描くほど待ってたと思うのに。
次からはもう少し早く来よう。
「 それで、どうかしたんですか? 」
そういえば中庭に呼ばれた理由をまだ聞いていなかった。
何か相談事かな?
「 実は僕、絵を描くことが好きなんです 」
桃瀬さんはそう言って、ニコッと無邪気な顔で笑った。
でも、絵を描くことが好きなことと中庭に呼んだのにはどんな意味があるんだろう。
「 人の似顔絵を描くことが得意で … 桜花さんの似顔絵描いてもいいですか? 」
目は見えないけれど、キラキラとした眼差しを向けているのは何となくわかった。
期待に満ちた声色と子供っぽさのある屈託のない笑顔が可愛らしい。
似顔絵を描かれるのは全然嫌じゃないし、むしろ凄く嬉しい。
どんな感じになるのかと緊張するが、桃瀬さんのお願いを快く引き受けた。
桃瀬さんは慣れた手つきでスイスイと鉛筆を泳がせるようにスケッチをしていた。
見られてスケッチされることには慣れてなかったから凄く緊張する … っ。
少ししてから桃瀬さんは鉛筆を置いてスケッチブックを渡してきた。
「 はい、出来ましたよ 」
あまりの速さに驚きながらもスケッチブックを手に取り、見てみると __
今までに見たことの無い似顔絵がそこにはあった。
どことなく美化されている気もしたけど … 触れないでおこう。
「 とっても上手っ、ありがとうございます … ! 」
「 … うん 」
桃瀬さんがいることも忘れてすっかり私はテンションが上がってしまっていた。
ひとりではしゃいでいる私を、桃瀬さんはいつもの子供っぽさは無く、まるで大人のような眼差しで優しく微笑みながら見ていた。
私はハッと我に返り、一気に恥ずかしくなった。
桃瀬さんはそんな私を見てクスッと笑った。
「 ふふっ、喜んで頂けて嬉しいです 」
これ … ずっと取っておきたいな … 。
そうだっ!
「 桃瀬さんっ、これ頂いてもいいですか? 」
「 え? 」
「 この素敵な絵、取っておきたいんです … ! 」
桃瀬さんは一瞬目を見開いたあと、嬉しそうに笑った。
「 勿論良いですよっ 」
桃瀬さんは無邪気な笑顔で似顔絵を渡してくれた。
その似顔絵をぎゅっと胸に抱いた時だった。
ガサッと角の方から足音がし、私と桃瀬さんは角の方に目を向けた。
__ そこに居たのは梶裙だった。
梶裙の表情はいつもの表情とは違っていて明らかに桃瀬さんを睨みつけた殺意のある眼差しをしていた。 ゾッと背筋が凍る。
「 あれ?梶裙? 」
そんな梶裙にお構いなくいつもの笑顔で話しかける桃瀬さんの声色は少しだけ怒っているようだった。
不穏な空気が流れ続ける。
「 … お前ら、何やってんだ 」
梶裙はギリッと唇をかみしめて桃瀬さんを睨みつけるように、重く低い声を発する。
何に怒っているのか分からない私は戸惑いながらもじっと梶裙の話を聞いた。
「 何って … お話してただけですよ 」
梶裙の問いに答えるようにニコッと微笑んだ桃瀬さん。
梶裙はそんな桃瀬さんを見て、悔しそうにしながらも落ち着いた声でまた話し始めた。
「 何を話すことがある 」
「 ん ー 、正確には似顔絵を描かせてもらってたんですよ 」
のほほ ー んと流暢に話すその姿が、まるで私のことを守ってくれているようでとても頼もしく見えた。
「 … そうか、もう昼休み終わるぞ 」
そう言ってゆっくりと近づいてきたかと思ったら私の腕を掴んで引っ張った。
「 わっ、梶裙 … ! 」
その行動を見た桃瀬さんは大きく目を見開き、そのまま何も言わずに固まったまま。
☆.*゚•*¨*•.¸♡o。+ ☆.*゚•*¨*•.¸♡o。
腕を掴まれたままたどり着いたのは教室。
ひたすらに私の腕を引っ張っていく梶裙をクラス中の人達は注目していた。
梶裙はそのまま自分の席まで私を連れていくと、ポスッと優しく座らせてくれた。
何を考えているかは理解しかねるけど、何となく怒っていることは分かった。
ずっと無言で行動する梶裙に困惑するばかり。
私を連れてお互い席に座ると、後ろにいた榎本裙と楠見裙は目を見開いている。
「 お前るぁ、どうしたんだぁ? 」
【 梶裙、怒ってる? 】
2人とも困ったように眉を八の字にしている。
「 桜花、あの人と仲良かったのか? 」
少しだけ優しい声色でそう聞いてきた。
疑問に思ったが、答えない理由もなくサラッと答えた。
「 う、うん … 転入手続きとか色々あって … 」
細かく説明すると長くなるから短く簡潔に答えた。
梶裙は再度グッと目を細めて険しい顔をした。
「 … それは? 」
私が先程からずっと持っていたスケッチブックを指さしてそう言った。
「 こ、これは … さっき言ってた似顔絵の … 」
梶裙は「 見せろ 」と言って強引にスケッチブックを取った。
榎本裙や楠見裙にも見せるように少しの間じっとスケッチブックから目を離さなかった。
「 おぉ、よくかけてるぅなぁ 」
【 ほんとだね、桜花さんそっくり 】
「 … 」
榎本裙と楠見裙は目をキラキラと輝かせているが、梶裙は不満そうにスケッチブックから目を逸らした。
「 えっと … 梶裙が何に怒ってるかは分からないけど、何かあったなら話は聞くよ? 」
そう言って梶裙の顔を覗き込んだ。
梶裙は一瞬目を見開くと、顔を赤くして再度顰めた。
【 ふふっ、桜花さんって鈍感? 】
どん … かん … ?
どういう意味だろう。
言葉の意味とか使い方は分かるけど私は決して鈍感ではないと思う。
きっと楠見裙の勘違いだ … !
「 桜花、これから昼飯は俺らとここで食え。どこにも行くな 」
「 え?う、うん 」
どうしてかは分からなかったけど「 どこにも行くな 」と言う梶裙はなんだかかわいかった。
☆.*゚•*¨*•.¸♡o。+ ☆.*゚•*¨*•.¸♡o。
あれから数日経ったある日。
私はいつも通りお昼を梶裙たちと食べようと思ってた。
でも朝にいきなり梅宮さんが教室に来た。
『 今日の昼休みに生徒会室来れるか? 』
そんな梅宮さんを見た梶裙は驚きながらも不満そうに梅宮さんを見ていた。
「 それじゃあ行ってくるねっ 」
手を振りながら教室を出て生徒会室へと脚を運ぶ。
さ、3回目だ … 。
コンコンッと軽くノックをすると梅宮さんが笑顔で招き入れてくれた。
生徒会室にはもちろん桃瀬さんたちもいるけど … 梅宮さんは違うお部屋に案内してくれた。
「 こっちこっち! 」
私の腕を引っ張って子供のようにはしゃぐ梅宮さんがちょっぴりかわいい。
着いたのは応接室。
学校とは思えないほどシンプルでオシャレなお部屋だった。
とても広々していて人ひとりが住めるような空間。
「 桜花、何飲む?好きな飲み物とか 」
応接室にある冷蔵庫を見ながら飲み物を出してくれる梅宮さんに感謝してココアをお願いした。
梅宮さんは「 アイスの方がいいよなっ 」と言って氷が入ったココアを淹れてくれた。
「 あのな、今日話したいことがあってな 」
梅宮さんは真剣な表情で私の目を見つめる。
め、目が逸らせない … !
「 桜花、生徒会に入らないか? 」
__ え?
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