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🌸「えっと … これで、あとは掲示板に回して__」
生徒会室の机に広げられた書類を、らんは丁寧にまとめていた。
分け隔てなく誰にでも優しい彼女は、仕事のときも柔らかな空気をまとっている。
そのドアがノックされ、静かに開いた。
🍍「失礼しまーす」
顔を出したのは、2年のなつとすち。
2人は肩を並べ、手に紙を持っている。
🍵「文化祭の展示の提出用紙、書き終えました」
すちが落ち着いた声で差し出すと、らんはにこやかに受け取った。
🌸「ありがとう! 美術部さんは毎年人気だから、今年も楽しみにしてるね」
🍍「うん、まぁ … 頑張ります」
なつは素っ気なく返すが、その言葉に照れが混じっているのは隣のすちにはわかっていた。
🌸「ほんとに2人とも絵が上手で羨ましいよ」
らんが微笑むと、すちは軽く肩をすくめて笑った。
🍵「いや、らん先輩のまとめる力の方がすごいと思いますよ。
俺らなんて、ただ筆を動かしてるだけですから」
🍍「そうそう。俺なんか特に、感覚で描いてるだけだし」
なつがさらりと言うと、らんは小さく目を丸くする。
🌸「え、感覚であんなに描けるの? やっぱりすごいよ」
ちょっとした褒め言葉に、なつは視線をそらし、耳まで赤くなった。
それを見ていたすちは、くすりと笑いを漏らす。
🍵「 … ひまちゃん、また顔赤いよ?笑」
🍍「っは、!? 別に赤くねぇし!」
🌸「ほんとに? ふふっ、可愛いね」
らんは悪気なくそう言って、資料を机に重ねる。
🌸「 … なんか、恋バナしてるみたいだね」
さらっと笑うらんの一言に、すちがわざとらしく相槌を打った。
🍵「まぁ、俺らの話はまた今度にして … 。
先輩こそ、誰か気になる人とかいるんです?」
🌸「えっ、私?」
突然の問いにらんは少し驚き、すぐに柔らかな笑みでかわした。
🌸「んー、秘密かな、笑」
その言い方は冗談めいていたけれど、なつとすちは思わず顔を見合わせた。
らんの優しさの奥には、誰にでも見せない想いがあるのかもしれない__
そう感じさせる一瞬だった。
生徒会室を出ると、夕暮れの光が差し込む廊下は静かだった。
なつが提出の控え用紙を折り畳みながら、ぽつりとつぶやく。
🍍「 … やっぱ、先輩ってすごい人だよな」
その横で歩くすちが、ふっと笑みを浮かべる。
🍵「ね ~ 、やっぱり、いるまちゃんの好きな人なだけあるね」
🍍「 … あー、まぁ、そうだな」
なつは曖昧に返しつつも、どこか納得したように頷いた。
すちはそんな相棒の反応に小さく肩を揺らし、笑いをこらえる。
🍵「いるまちゃん、ほんと一途だからねぇ」
🍍「 … うん。そういうとこ、嫌いじゃないけど」
2人の足音が、夕焼けに染まる廊下にゆっくりと響いていった。