テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
私は〝外〟では〝お金持ちのパパがいる幸せな娘〟を演じ、家の中ではひたすら暴力といやらしい視線とに耐え続けた。
家に帰りたくないのもあり、いい大学に入って高給取りになり、独立するために遅くまで図書館で勉強した。
少しでも継父に性的な目で見られるのを避けるため、私服は徹底的にダサくし、脚を出さず、胸元を強調しないよう努めた。
友人からは『お金あるんだし、もっとお洒落しなよ~』と言われたが、『あまり興味ないんだ』と誤魔化し、読書オタクキャラを貫いた。
大学進学と同時に一人暮らしを始めた時は、ようやく家から脱出できた喜びに満ちあふれていた。
それまで封じていたお洒落も解禁し、特に高価な物は持たないけれど、自分に似合う物を探して低予算で服やメイクを楽しんだ。
彼氏もできたし、すべて順調だったはずなのに、――一人暮らしのマンションに継父が現れた。
結論から言えば、最後まではされなかった。
でも学生の私には頻繁に引っ越しする財力がなく、物件も継父名義。
バイト代で安アパート暮らしするとしても、家賃を稼ぐ事をメインにすれば、勉強不足で望む会社に入れないかもしれない。
だから我慢した。
継父に触れられるたび、どんどん自分が損なわれていく気持ちになった。
どれだけ勉強して周りから〝才色兼備〟と褒めそやされても、中身は薄汚れた売女だ。
安らぎを求めて彼氏を作っても、その年頃の男の子は性欲に溢れている。
拒否感のあまり、ラブホテルに連れ込まれて行為に及ぼうとした時、吐いてしまった事もあった
勿論、その人とはそれっきりで、以降、合コンなどには消極的になった。
男友達の中には私に好意を抱いてくれている人もいたけれど、まともで素敵な人が、私のような汚れた女の相手になるのは駄目だと思い、徹底的に一線を引き続けた。
大学を卒業して、晴れて篠宮ホールディングスに入社できたあと、初めてのお給料を得たタイミングで継父の物件から引っ越し、祖父母に連帯保証人になってもらった。
祖父母は事情を知らないし、羽振りが良くなった娘から贈り物をしてもらって喜んでいる。
継父も祖父母の前では〝いい夫、いい父親〟を演じているし、真実を伝える事はないと判断した。
祖父母だって義息子を亡くして悲しんだだろうし、私たち母子がどうなるか心配したに決まっている。
やっと今お金持ちの継父と再婚し、幸せな生活を送っているように見えるのなら、わざわざ私からぶち壊しにする事はない。
自分が受けている被害を訴えたい気持ちはあったけれど、優しい祖父母には余生を穏やかに過ごしてほしい。
もしも真実を知る事があるなら、娘の口から聞かされるべきだ。
そう思っていたけれど、万が一の事を考え『理由は言わないけど、お願いだからお母さんたちに私がどこに住んでいるか聞かれても、絶対に答えないで』と土下座して頼んだ。
母は変わってしまったけれど、祖父母は常識人だから、私がそこまで言うには理由があるのだと察したらしく、『絶対に言わないから安心して』と言ってくれた。
その後も、関東近郊に住んでいる祖父母の家に、私一人で遊びに行く事はあり、彼らとはいい関係を結べている。
万が一、継父が一線を越えようとしたなら、私一人の責任で警察を呼べばいい。
けれどそうなる前に、両親に知られない場所に引っ越して、自分なりの幸せを掴むべきだ。
そのようにして、今までの住まいよりはずっと狭いけれど、落ち着いて過ごせる城を手に入れた。
勿論、防犯には気をつけているし、一人暮らしの女性が気をつけるべき事は、すべて頭に叩き込んだ。
両親からメッセージがこないよう、アプリのアカウントはブロックし、メールも拒否したし、スマホの電話番号も変えた。
それでも両親に見つかってしまい、住まいを点々として今に至る。
母は『育ててやった恩を忘れたの!?』と言い、父は『女の一人暮らしは危ないから、いざとなったら親が駆けつけられる所にいなさい』ともっともらしい事を言う。
――あんた達に見つかるのが嫌だから、こうやって逃げ回ってるんだろうが!
見つかるたびに地獄を味わい、誰の事も信じられず、出社してはひたすら働き、休日には中古で買った車をかっ飛ばして、思いきり体を動かした。
自分には男性の愛情なんて必要ない。
そう思っていたのに、御曹司のくせにどこか抜けた、それでいて自分と同じ匂いのする風磨さんと出会った。
コメント
1件
えぇ…主人公の壮絶な過去と、それでも必死に生き抜いてきた姿に胸が締め付けられたよ…😭 自分を「汚れた女」って思っちゃう描写が特に切なくて、でも風磨さんに出会えたことで少し光が見えた気がする! この人なら主人公のことちゃんと理解してくれそう…二人の未来が気になりすぎる!!🌸✨
臣桜
50,509
畝澄ヒナ
119
#短編
五來 小真
29