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ゆゆゆゆ
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ゆゆゆゆ
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ルナティック研究施設の最深部。
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そこは研究所というより。
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墓場だった。
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割れた培養槽。
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床を這う黒い蔦のような組織。
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脈打つ肉塊。
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壁そのものが生きているように見える。
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「最悪だな」
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Guestが吐き捨てる。
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「今までで一番嫌な場所かも」
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エリオットも珍しく顔をしかめた。
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ピザガイは無言で前を警戒している。
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シャーロットだけは。
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ただ前だけを見ていた。
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母を探して。
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何年も。
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ずっと。
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そのためにここまで来た。
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やがて。
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巨大な隔壁が現れる。
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研究施設の最奥。
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中央制御室。
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Guestが震える指で端末を操作する。
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古びた機械が唸り。
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重い扉が開いていく。
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ギィィィィィ……
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暗闇。
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冷気。
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そして。
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部屋の中央に。
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一人の女性がいた。
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長い栗色の髪。
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痩せた身体。
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白衣のような服。
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眠るように座っている。
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「……」
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誰も声を出せない。
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シャーロットだけが一歩前へ出る。
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「ママ?」
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女性の肩が僅かに動く。
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ゆっくり。
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本当にゆっくり。
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顔が上がる。
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その瞳は。
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まだ人間だった。
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「……シャーロット?」
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掠れた声。
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少女の目から涙が溢れる。
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「ママ!」
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駆け出そうとする。
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だが。
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Guestが腕を掴んだ。
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「待て」
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低い声。
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シャーロットが振り返る。
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Guestの顔は青ざめていた。
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デイジーの首筋。
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そこに。
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黒い模様が広がっていた。
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血管のような。
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根のような。
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ルナティック感染の痕跡。
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「……」
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デイジーも気付いていた。
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ゆっくり微笑む。
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昔と変わらない。
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優しい笑顔。
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「ごめんね」
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その一言で。
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Guestの顔が歪む。
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「やめろ」
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「探してくれてたんでしょう?」
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「やめろ」
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「ありがとう」
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「やめろ!」
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初めてだった。
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Guestが叫んだのは。
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何年も戦場で生き残った男が。
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今にも泣きそうだった。
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だが。
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その瞬間。
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施設全体が震えた。
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警報。
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赤い光。
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そして。
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天井のスピーカーから機械音声が流れる。
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『被験体反応確認』
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『侵入者排除シーケンス開始』
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「まずい!」
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ピザガイが振り向く。
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廊下の奥。
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無数の影。
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現れた。
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ルナティック。
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十。
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二十。
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五十。
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百。
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群れ。
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大群。
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津波のように押し寄せてくる。
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「くっ……!」
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Guestがライフルを構える。
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シャーロットは母を見つめる。
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デイジーは立ち上がれない。
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感染が進んでいる。
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身体が言うことを聞かない。
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絶望的だった。
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その時。
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カチャッ。
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アサルトライフルの安全装置が外れる音。
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エリオットだった。
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金髪の男は。
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いつもの笑顔を浮かべている。
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だが。
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その青い瞳だけは。
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戦場の色をしていた。
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「オーダー確認」
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ライフルを肩に当てる。
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「お客様一名」
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ニッと笑う。
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「温かいまま連れ帰る」
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ルナティックの大群が迫る。
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エリオットの笑みが深くなる。
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「配達開始だ」
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次の瞬間。
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銃声が轟いた。
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ピザガイがショットガンを撃つ。
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Guestが援護射撃を開始する。
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シャーロットは母の元へ駆け寄る。
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そして。
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デイジーの手を握った。
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温かかった。
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まだ。
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ちゃんと。
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生きていた。
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「帰ろう」
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シャーロットが言う。
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涙を流しながら。
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「みんなで」
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デイジーは娘を見つめる。
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そして。
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小さく頷いた。
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背後では。
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笑顔の配達員が。
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文字通り命懸けで。
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配達ルートを切り開いていた。
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