テラーノベル
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夜だった。
熱気は昼より少しだけやわらいでいるけど、それでも空気はぬるい。
「……暑いね」
プレイヤーは小さく笑った。
「当たり前だろ。ここはそういう場所だ」
グリーファーは木にもたれながら、ソーダを一口飲む。
「ほら」
ぽい、と缶を投げる。
「え、くれるの?」
「半分な。全部はやらねぇ」
「ありがと!」
プレイヤーは嬉しそうに受け取る。
その様子を横目で見て、グリーファーは小さく舌打ちした。
「……いちいち嬉しそうにすんな」
「だって嬉しいもん」
「……はぁ」
しばらく、静かな時間が流れる。
虫の音と、風で揺れる葉の音だけ。
「ねえ、グリーファー」
「なんだよ」
「今日さ、ちょっと無理してたでしょ」
「は?」
「戦ってるとき。いつもより動き荒かった」
「気のせいだ」
「違うよ」
プレイヤーはじっと見る。
「ケガ、してるよね?」
沈黙。
「……チッ」
グリーファーは顔を逸らす。
「大したことねぇ」
「見せて」
「は?やだね」
「見せてよ」
「しつけぇな」
腕を掴まれる。
「っ、おい!」
プレイヤーは無理やり袖をまくる。
そこには、思ったより深い傷。
「ほら、やっぱり」
「だからなんだよ」
「手当てする」
「いらねぇ」
「する」
「……お前さ」
グリーファーは少し睨む。
でも、その手を振り払わない。
プレイヤーは丁寧に傷を拭く。
「ちょっとしみるよ」
「別に平気だ」
「我慢しなくていいのに」
「してねぇ」
消毒液が触れた瞬間――
「……っ」
ほんの少しだけ、眉が動く。
「ほら痛いじゃん」
「気のせいだっつってんだろ」
「はいはい」
くすっと笑う。
「……ムカつく」
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「なんで!?」
手当てが終わる頃。
グリーファーはふと呟いた。
「……なんでだよ」
「ん?」
「なんでそこまでする」
プレイヤーは少しだけ考えて、
「大事だから」
って、あっさり言った。
「……は?」
「仲間だし」
「それだけかよ」
「え?」
「……いや、なんでもねぇ」
視線を逸らす。
「ねえ、こっち来て」
「は?」
「いいから」
腕を引かれる。
「おい、引っ張んな」
そのまま、プレイヤーの隣に座らされる。
距離が近い。
やけに近い。
「……なんだよ」
「こうしてると、安心する」
「はぁ?」
「なんかさ、君って強いから」
「当たり前だろ」
「ふふ、うん」
プレイヤーは少し寄りかかる。
「っ……!」
グリーファーの体が一瞬固まる。
「おい」
「なに?」
「離れろ」
「やだ」
「は!?」
「ちょっとだけ」
「ちょっとじゃねぇだろこれ」
「いいじゃん」
「よくねぇ!!」
でも――
押し返さない。
しばらくして。
「……なあ」
「ん?」
「重い」
「え!?そんなに!?」
「そういう意味じゃねぇ!!」
「え〜」
くすくす笑う。
その笑い声に、グリーファーはため息をつく。
「……ほんと、お前さ」
「なに?」
「無防備すぎんだろ」
「そう?」
「そうだよ」
少しだけ、低い声。
「他のやつにこんなことすんなよ」
「え?」
「……」
一瞬迷って、
「……ムカつくから」
ぼそっと言う。
「なにそれ」
「うるせぇ」
風が吹く。
夜の匂いがする。
「ねえ、グリーファー」
「なんだよ」
「僕、君といるの好きだよ」
静かに言われる。
グリーファーの思考が止まる。
「……は?」
「楽しいし、安心するし」
「……」
「ダメ?」
少しだけ不安そうな声。
その顔を見て、
「……ダメじゃねぇ」
と、小さく答える。
「ほんと?」
「……ああ」
「やった!」
嬉しそうに笑う。
そのまま、
ぎゅ、と少しだけ腕を掴まれる。
「っ、おい」
「もうちょっとだけ、このままでいい?」
「……好きにしろ」
顔を逸らす。
耳が赤い。
「……プレイヤー」
「んー?」
「……離れんなよ」
「え?」
「いや、今の忘れろ!!」
「ふふ、忘れないよ」
「マジで忘れろ!!」
「やだ〜」
夜は静かに更けていく。
熱帯のぬるい空気の中で、
2人の距離だけが、少しずつ近づいていた。
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