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※⛄で妄想、キャラ崩壊あり、死ネタあり、年齢操作あり
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目黒side
夕焼けが、やけに赤く感じた。
いつもの帰り道
何も変わってないはずなのに、
どこかだけがぽっかり抜けてるみたいで。
隣を見れば、
当たり前みたいに笑ってるラウがいて。
ラウール)なに、その顔
って、いつも通りの声
…ほら、やっぱりいるじゃん。
消えるわけない。
だって、あんなに一緒にいたのに。
頭のどこかで、
違うってわかってる気もするけど——
それでも、目の前にいるなら
信じるしかないだろ。
オレンジに染まった空を見上げて、
少しだけ目を細める
この時間も、この匂いも、この声も
忘れないように
色褪せないように
ぎゅっと、記憶に押し込むみたいに
目黒)なぁ、ラウ
呼んだ名前に、ちゃんと返事がくる
それだけでいいと思った。
今は、まだ。
佐久間side
笑い声が、ひとつ多い気がした。
夕焼けの帰り道
隣で話してる蓮は、
誰かと楽しそうに言葉を交わしてる。
——でも
その「誰か」は、見えない。
佐久間)なに笑ってんの?
軽く聞いたつもりだった。
いつもみたいに、ふざけて返ってくると思ってたのに。
目黒)え、ラウがさ——
当たり前みたいに出てきた名前に、
一瞬、呼吸が止まる
……やっぱり、か。
視線の先には、何もない。
風が通り抜けて
そこに“いるはずの温度”だけが、欠けている
忘れてない。
忘れるわけない。
でも——
残ってないんだよ、もう。
写真も、声も、触れた感覚も、
少しずつ薄れていってる。
それでも、蓮は笑う
目黒)ほら、今もさ——
そこにいるみたいに
胸の奥が、じわっと痛む。
言わなきゃいけないって、わかってるのに。
それでも、言葉は喉に引っかかる
形に残るものが全てじゃないように
そう思いたいのは、きっと同じで。
でも、
見えないものだけを信じ続けるには
少しだけ、現実は重すぎた。
ラウールside
声を出したつもりだった。
「ねえ」って。
昔みたいに、当たり前に
でも、風に溶けたみたいに
何も残らなかった
目の前で笑ってるのに、
めめの視線は、少しだけ、
どこか遠くを見ている。
佐久間くんは、気づいてる顔をしてるのに、何も言わない。
ねえ、ちゃんと話してたよね。
くだらないことで笑って、
どうでもいい約束して。
あのとき、
どうやって言葉を交わしてたんだっけ。
思い出せそうで、思い出せない。
言葉をもっと教えて
唇が動いても、音にならない
届くはずの距離なのに、触れられない
夕焼けの色が、やけに眩しくて目を細める
季節は巡っていくのに、
自分だけが取り残されているみたいだった。
夏が来るって教えて
あの頃みたいに、
「暑いね」って笑いながら言ってよ。
時間の進み方も、風の匂いも、
全部、曖昧になっていく。
それでも——
ふたりの隣にいたくて、
何度も同じ景色をなぞる。
手を伸ばしても、
やっぱり何も掴めないまま。
ふと、気づく。
自分の輪郭が、
少しずつ透けていることに。
ああ、そっか。そういうことか。
胸の奥で、静かに落ちていく答え
それでも、笑ってみせる
昔と同じ顔で
僕は描いてる
ふたりがいる、この夏を。
ちゃんと覚えていられるように、
消えてしまわないように。
眼に映ったのは
そこにいる“自分”だけが、
どこか現実じゃなくて。
夏の亡霊だ
風にスカートが揺れて
強い風が、通り抜けた
制服の裾がふわっと揺れて、
一瞬だけ視界が白くなる
その向こうに、
さっきまでいたはずの姿を探してしまう自分がいた。
——いない。
当たり前みたいに、隣にいたのに。
目黒)……なあ
呼びかけても、返事はない
さっきまで、確かに聞こえてた声も、
笑った顔も、
全部、風にさらわれたみたいに消えていく
認めたくない。
だって、まだ——
思い出せるのに。
くだらないことで笑ったことも、
帰り道、わざと遠回りしたことも。
でも、
思い出そうとすればするほど、
胸の奥が締めつけられていく。
だから、いっそ——
想い出なんて忘れて
そうやって、自分に言い聞かせるみたいに
息が、うまく吸えない
喉の奥が詰まったみたいで、
浅く、短く、呼吸を繰り返す
浅い呼吸をする、
額ににじんだ汗を、乱暴に拭った
じっとしていられなくて、
でも、どこにも行けなくて
空だけが、やけに明るい
何も変わってないみたいに、
季節だけが進んでいく
汗を拭って、夏めく
取り残されたのは、
きっと——俺の方だ。
※ラスサビへ飛びます
ラウールside
夕暮れが、少しずつ色を失っていく
隣に立っているはずなのに、
もう、同じ場所にはいないことくらい
わかっていた。
めめの声も、佐久間くんの視線も、
ちゃんと届いているのに
触れられない距離だけが、
どうしても埋まらない。
それでも、ずっと
このままでいられる気がしてた。
何も変わらないまま、
同じ夏を繰り返していけるって。
——でも
それは、きっと違う。
めめが、息を詰まらせるみたいに
空を見上げたのを見てしまったから。
佐久間くんが、何も言えずに
ただ立ち尽くしているのを知ってしまったから。
このままじゃ、ふたりを縛ってしまう。
だったら——
ちゃんと、終わらせないと。
一歩、後ろに下がる
距離はほんの少しのはずなのに、
もう二度と戻れないくらい遠く感じた。
ねえ、
ちゃんと聞かせてよ。
さよならだって教えて
笑ったままでいいから。
泣かなくていいから。
最後くらい、
“いつも通り”
でいいから。
視界の中で、揺れている夏の色
あの日と同じ景色なのに、
どこかだけが違って見える
それでも、まだ——
今も見るんだよ
2人と過ごした、あの時間を。
花が咲いて、風が吹いて、
何もかもが続いていくこの世界で
ふとした瞬間に、思い出してしまう。
夏に咲いてる
花に亡霊を
それでいい。
忘れなくていい。
ただ、前に進めばいい。
言葉じゃ、足りなかった。
どれだけ声にしようとしても、
伝えたいものは零れてしまうから。
だったら、
言葉じゃなくて時間を
一緒に過ごした、全部を。
それでも足りないなら、
時間じゃなくて心を
笑ったことも、泣いたことも、
全部、ちゃんと残ってる。
だから——
もう、大丈夫。
ふたりの前から、静かに一歩引く
風が吹いて、
自分の輪郭がほどけていくのがわかる。
息を吸う感覚も、もう曖昧になっていた
それでも、最後まで
この夏の中にいたくて。
浅い呼吸をする
少しだけ笑って、目を細める
滲む景色の中で、
ふたりの姿を焼き付けるみたいに。
汗を拭って、夏めく。
——これで、いい。
目黒side
風が、やんだ
さっきまでそこにあった気配が、
嘘みたいに静かになっていく
伸ばしかけた手は、
何も掴めないまま止まった
目黒)……らう
呼んでも、もう返事はない
わかってる。
さっき、全部見てたから。
あいつが、笑って
少しずつ遠くなっていくのを。
ちゃんと、見送ったはずなのに。
胸の奥だけが、
まだ置いていかれたままで
喉の奥が、じわっと熱くなる
それでも、声にはならない
ただ、ひとつだけ
浮かんできた言葉があった。
もう忘れてしまったかな
あのときの空の色も、
どうでもいいことで笑った時間も。
忘れたくないって、
あんなに思ってたのに。
——でも
隣で、小さく息を吐く音がした
佐久間)……忘れるわけ、ないだろ
佐久間くんの声だった
振り向くと、
少しだけ赤くなった目で、でもちゃんと笑ってる
佐久間)全部、残ってるよ
強がりでもなく、
無理してるわけでもなくて。
ただ、そう言い切る声だった。
その言葉に、
胸の奥がゆっくりほどけていく
風が、また吹いた
木陰の下、
揺れる光の中で。
——あの日みたいに。
ベンチに腰掛けて、
ぼんやりと空を見上げる
隣には、もういないはずなのに
不思議と寂しさは、さっきより少なかった
佐久間くんが、コンビニ袋を揺らす
佐久間)ほら、好きだったじゃん
取り出したのは、
あのときと同じ、氷菓
一口、口に放り込む
じん、と冷たさが広がって、
少しだけ、夏の匂いが戻ってくる
何も変わってないみたいに、
風を待つ時間も。
隣で笑ってた声も、
ちゃんとここにある。
見えなくても、触れられなくても——
消えたわけじゃない。
佐久間くんが、空を見上げたまま呟く
佐久間)なあ、ラウ
返事はない
それでも、どこかで聞いてくれてる気がした
木漏れ日が揺れて、風がそっと通り抜ける
夏の木陰に座ったまま、
氷菓を口に放り込んで
風を待っていた
ヨルシカ 『 花に亡霊 』