テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
教室の端でぼーっとしているロシア。
視界には有象無象がわらわらと群れを成している。どれもこれも、興味が湧かない。
当然、あちらから話しかけてくる、なんていうものもありはしない。
ロシアの噂を知らないなんて言うほどの無知は、国の象徴として存在してはいけないのだ。
ロシア(眠い……ていうか国連の奴、無理やり探し出して連れてきやがって……)
どうやらロシアは、国連に圧をかけられ渋々教室へ来たらしい。来るつもりなどなかったというのに。
何度目かわからないため息の後、そっと瞼を閉じかける。
「ぁ、あの」
ロシア「……?」
何か声が聞こえた気がして、無理やり目を開ける。そうして、声の主へと導いて視線を向けた。
日本「ロシアさん……ですよね? えっと、私日本っていいます……!」
ロシア「……は、」
ロシアは目を見開いた。目の前に国がいる。それだけでも信じられないのに、その日本と名乗った国は、こちらへおずおずと笑顔を向けていた。
ロシア(……でも、どうせ)
––––お前も離れるんだろ?
もう、ここで答えた後の結末は目に見えている。怯えて、責めて、否定されて、終わり。
ロシアは再び、聞こえなかったふりをして目を伏せた。
日本「ぁ……」
ロシア(これで諦めるだろ)
日本「き、聞こえにくかったですかね……?」
ロシア(は?)
思わず耳を疑う。この国は、何を言っているのだろうか。相手はロシアだというのに。
日本「ロシアさんっ! あの、私日本っていって……! よければ、仲良くしませんか!」
ロシア「……」
先程より大きめの声で喋られ、最早聞こえていないという演技は通用しそうになかった。
日本「ぁ、あの……」
ロシア「俺は、お前らと馴れ合いをするつもりなんてハナからない」
きっぱり、ロシアは言い切った。これがロシアの本心のはずだ。
しかしなぜか、ロシアの心は気持ちに反しズキリと痛む。
ロシア(は……?)
疑問に思いながら、さらにロシアは、その痛みを無視して言葉を紡ぐ。
ロシア「俺は気に入らないものは壊すぞ? お前……日本、だって、攻撃するかもしれないんだ」
ズキ、ズキ。
その痛みは強くなった。ロシアは眉間に皺を寄せる。本当のことを言っているはずだ。だから、傷つくことなんてないはず。
今までもそうだった。
ただ淡々と事実を口にすれば、誰もが怯えて逃げていったから。
それなのに、なんで。
ロシア(なんでこの日本とかいうやつは、俺に……)
心配そうな目線を向けるんだ……?
アメリカ「おいっ、Japan、大丈夫か⁉︎」
張り詰めた空気の中に、アメリカが割って入った。
そして日本を庇うように立って、ロシアのことをサングラスの奥、じっと細目で冷たく睨む。
アメリカ「ロシア……Japanに何かしたのかてめぇ」
ロシアはふっと息をついた。
やっと、痛みがゆっくり消えていくのを感じる。ホッと、安心する自分がいた。
ロシア「……さっさと立ち去」
れ、と続けようとしたところに。
日本「いえ、ロシアさんは悪くないんですよ! 私が無理やり話そうとしたので、邪魔しちゃったんです……!」
日本が、アメリカの後ろからひょこっと顔を出して、ロシアに被せるように言い放った。
––––瞬間、ロシアの胸に激痛が走る。
ロシア「ツあ゛……⁉︎」
突然胸を押さえて苦しみ、しゃがみ込んだロシアに日本は目を見開き、心配そうに近くに駆け寄ろうとする。
アメリカ「Japan! だめだ、そいつは敵だ……‼︎ 助ける必要なんてねぇ‼︎」
それでも日本は足を止めず、ロシアの肩に手を置いた。
しかしロシアは、苦しそうな顔を日本に向け、その日本の肩を掴み返した。
ロシア「……ツ俺に、近寄るんじゃ––––」
ロシアはその顔を間近で見て、目を見開いた。
確実にロシアのことを恐れつつも、心配してまっすぐ見つめてくる日本。
急いでこちらに駆け寄ってきて、息を上げている日本。
急に肩を掴まれて驚きつつ、少し照れているようにも見える日本。
日本日本日本日本日本日本日本日本日本
ロシア「ッッ……」
胸の痛みはいつか、昔感じた歪んだものを彷彿とさせた。
俺に近づくなら、俺に微笑みかけるなら、俺を心配するなら、俺に触れるなら。
いつまでも一緒にいて。
どこにも行ったりしないで。
俺を、一人にしないで。
置いていかないで。
俺に従って、俺の言うことを聞いて、俺に頷いて賛同して、俺の隣にいて、俺以外を見ないで、俺を愛して––––
封じ込めた黒いものが、ドロドロと外に流れ出すかのように、次から次へと頭の中に歪んだ感情が浮かぶ。
ロシア(そうだ、俺、俺は)
パキ、と何かが割れる。
それと同時に、幸せのような何かがロシアの心に急速に満ちた。
胸の痛みはいつの間にか、日本への執着へと様変わりしていた。
ロシアは、もう何かを愛さないように、誰かへの好意を、痛みだと無理やり思い込んだ。
でも日本は、それをいとも簡単に打ち砕いてしまった。
ロシアの歪んだ感情は、再び現れたのだ。
途端。
アメリカが、ぐいっと日本をロシアから引き剥がした。
いつの間にか、アメリカの後ろにはカナダもいる。
ロシアのことを警戒したか、日本を心配したか……もしくはその両方だろう。
ロシア「チッ……」
舌打ちをしつつ、ロシアは元の壁にもたれかかった。
しかし視線は、日本のことを追っている。
アメリカ「Japan、いこうぜ」
カナダ「そうだよ、日本くん。ロシアなんかとは関わらない方がいいよ」
日本「で、ですが……」
日本が何か言いつつも、ずるずると2人に連行されていくのを黙ってロシアは見つめた。
心の底に2人への憎悪を込めながら。
殺すのはさすがに得策ではない。なんせ相手は、世界をまとめていると言っても過言ではない北米の兄弟だ。
なら……。
ロシア(……惚れさせるしか、方法はないか)
日本が人混みに紛れて見えなくなってしまったところで、ロシアはゆっくり瞼を閉じた。
塩胡椒です。
皆様に質問があります。
このまま取り合い形式にするか、一つの国と日本が結ばれる、複数のエンディングを作るマルチエンディング方式とするか。
それを皆様にお聞きしたいです。
この結果によって、今後の話の展開が変わると思います。
取り合いならば、このまま少しずつ全員のヤンデレ化が進み、日本が囲われることに。
マルチエンディングならば、日本が一つの国と絶対に結ばれるというエピソードをたくさん作ることになります。
コメントお待ちしております。
あとは他に、「この国を出してほしい」などの意見がありましたら、そちらもコメントによろしくお願いします。
仰々しく喋ってきましたが、「自分はこれが好き!」と軽く言ってもらえれば……!
更新が遅くてすみません、それではまた!
コメント
4件
マルチエンディングがいいです!出してほしい国はパラオとフィンランドです!無理だったらどちらかでも大丈夫です!コメント失礼しました!
ヤンデレ化してくのがみたいですね(*^^*) 毎回こんないいものをかけるなんて神ですかっ!
私はマルチエンディングが好きです🎶出してほしい国はイギリスさんです! 今回も面白かったですꕤ︎︎·͜·