「ただいま安吾〜!」
「亦君はそんなびしょ濡れで帰ってきて…早く着替えてください!!」
「其処にいい川があったら飛び込む!当たり前だろう!」
此処は異能特務課。
安吾と私__太宰治の声が部屋に響く。
「あの川、水温も低くて流れも結構死ねそう……彼処に通ったらいつか死ねるかなぁ!」
此処に入ってから一年で与えられた自分の執務室。
濡れた服から替えの服に着替え、何時もの外套を羽織る。
此の外套はポートマフィアに居る前から使って居た物と同じ物だが、新しくサイズの大きい物を此処に入ってから買った。
「あーあ、もーう書類がこんなにいっぱい……終わらせなきゃまた安吾に怒られるなぁ、」
此処に入ったのは三年前、私が十九の時だ。
あの時は安吾に驚かれたなぁ…
「はぁ…」
カタカタ、とタイピング音と溜息が部屋に響く。
数時間。
「っはぁ〜〜、おわったぁ……今なら探偵社も未だやってるし、遊びに行こっかな」
「こんにちは〜」
「なっ…この前の太宰治!!」
「今日は依頼に来た…訳じゃないんですけど、暇なので遊びに来ましたあ〜」
軽く弾んだ声で言う。
之で此処に来るのは二回目だ。
一回目は確か___
〜
「…ちぇ、助かったか」
「え?」
其処から確か、自己紹介やらしてお茶漬け奢って……其れで行く場所も無いらしいから、探偵社を紹介したんだっけ。其の時に一回行って、今日が二回目だ。
〜
「まぁ、一寸の間居させて貰いますねぇ〜」
「異能特務課だろ、政府の人間が此処に居てて良いのか」
「おや、名探偵。貴方に云われるとは思いませんでした」
其処に在ったソファに寝転がり、目を瞑って居ると、武装探偵社の名探偵___江戸川乱歩。異能力「超推理」。
異能特務課である事は誰にも伝えて居ない筈。
嗚呼、之が江戸川乱歩の推理力。
想像以上だ。
「……あれ、安吾から電話…もうバレたかぁ」
電話に出ようとすると、江戸川乱歩に手首を捕まれ、携帯電話を弾き落とされる。
「…名探偵、如何してこうしたんです?先程貴方の言った通り、私は政府の人間です。」
「……分かってるよ、そんなの。」
突然パッと手を離されて戸惑うが、取り敢えず立ち上がって帰ることにした。
「……はぁーあ、…顔熱…」
鏡を見ると、耳まで赤くなっている自分が見えた。
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