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「敦くんがポートマフィアに拐われた!?」
執務室で探偵社から電話が掛かってきたかと思えば、先程叫んだ内容が其の儘伝えられた。
「……あ、いい事思いついた」
そう呟いて電話を切る。
「るるるる心中は独りじゃ出来ない〜♪うぉううぉう♪でもでも二人なら出来る〜♪♪」
瞬間、男の舌打ちが聞こえ、黒い獣のような何かが自分の首を絞める。
其れは男の“羅生門”であり、異能だ。
触れた瞬間、其れは青白い光に包まれ、消えた。
「___嗚呼、君居たの。」
「此処に繋がれた者が如何なる末路を辿るか、知らぬ貴方では無い筈だ」
「懐かしいねぇ、君が新人の頃を思い出すよ。」
「___貴方の罪は重い。突然の任務放棄、然して失踪。剰え今度は敵としてポートマフィアに楯突く。」
此方に歩み寄り、後一米(メートル)程の距離で其処に留まった。
「迚も元幹部の所業とは思えぬ」
「然して、君の元上司の所業とは…かい?」
煽る様に云うと、元部下の男__芥川龍之介に顔を殴られる。
余りの勢いに少し血を吐くが、気にしない。
ポキ、と指を鳴らして男は云う。
「貴方とて扶桑不滅では無い。異能力に頼らなければ毀傷出来る」
「___其の気になれば、何時でも殺せる」
「…そうかい、偉くなったねぇ。今だから云うけど、君の教育には難儀したよ。飲み込みは悪いし、独断選考許りするし。」
「__おまけにあのポンコツな能力だ。」
笑う様に云うと、芥川は拳を固く握り、云い返す。
「貴方の虚勢も後数日だ。数日の内に探偵社を滅ぼし、人虎を奪う。貴方の処刑は其の後だ。自分の組織と部下が滅ぶ知らせを、切歯扼腕して聞くと良い。」
入口の方を振り返り、背を此方に向ける。
「……出来るかな?君に。
私の新しい部下は君なんかより余っ程優秀だよ。」
___もう一度、顔に拳を叩き込まれる。
「ふぁ…っはぁあ……」
大きな欠伸を一つ、然して考える。
予想通りなら今頃彼方も___
「頃合かな」
コツ、コツ、と石と靴とがぶつかり合う音が辺りに響く。
「相ッ変わらずの悪巧みかァ?」
「……ッ其の声は…」
最悪中の最悪だ。
彼の狗か蛞蝓か分からないような彼奴が来た。
「良いなこりゃァ。最ッ高の眺めだ。百億の名画に勝るぜ」
ポートマフィア__幹部
_______中原中也。
能力名________
「汚れつちまった悲しみに」。
「えぇ?__太宰」
「最悪…うわ、最悪ぅ……」
途中まで降りていた階段から飛び降り、着地する。
然して此方に歩み寄ってくる。
来んな蛞蝓。
「良い反応してくれるじゃ無いか、縊り殺したくなる」
……。
少しの沈黙の後、其れを破ったのは私だった。
「___全然変わらないね、中也」
「あァ!?どういう意味だァ!!!?」
「…前から疑問だったのだけれど、其の恥ずかしい帽子は何処で買うの?」
「言ってろよ放浪者(バカボンド)。良い歳こいてまァだ自殺が如何とか云ッてンだろ?どうせ「うん。」
「……少しは否定する気配くらい見せろよ…」
昔と同じように云い合う。
「だァが今や手前は悲しき虜囚!泣けるなァ、太宰」
「…否、其れを通り越して怪しいぜ。」
私の頭を掴む。
「丁稚の芥川は騙せても、俺は騙せねェ。何しろ俺は手前の“元相棒”。だからなァ、…何する心算だ。」
「…何って見た儘だよ。捕まって処刑待ち。」
「彼の太宰が不運と過怠で捕まる筈がねェ。そんな愚図なら、俺がとっくに殺してる。」
半ば投げるように頭を掴んだ手を乱暴に離す。
「……考え過ぎだよ。何しに来たの?」
「嫌がらせだよ」
「ん?」
「あの頃の手前には散々弄ばれたンだ、だが___」
姿勢を低くし、一気に振り返り回し蹴りをする。
其の蹴りは私に向けられた物では無く、“私をつなぐ鎖”に向けられた物であった。
「そう言うのは大抵後で十倍で返される。手前が何を企んでるか知らねェが、俺と戦え、太宰。」
姿勢を低くした時に脱げた外套を肩に軽く掛け、右手を此方に伸ばす。
「手前の腹の計画ごと叩き潰してやる」
「……中也」
「んァ?」
パチン、と指を鳴らす。
瞬間、私を繋いだ鎖の鍵が外れた。
「……何時でも逃げられたッてか。」
「君が私の計画を阻止?…冗談だろう?」
少し笑うように云いながら、銀色のヘアピンを見せる。
中也も薄く笑うと、
「好い展開になって来たじゃねェかァ!!!」
と此方に飛び込んでくる。