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結果としてミーニャさんは食い倒れて、その場から動けなくなった。
アライアさんも昼食直後は動けなかったけれど、2時間くらいで無事家に戻ってきた。
なおかつアライアさん、15時には、何処からともなく取り出したパンケーキなんてのをぱくついていた。
よっぽど消化器官が強いのだろうか。
そして夕食も、似たような状態。
ジョンが今回、刺身1皿と揚げ物1皿を取ったくらいの違いだろうか。
なおミーニャさんは、同じく昼食後から動けない皆さんと、あれこれ話して村の最新情報を入手したらしい。
そして昨夜ほど無茶な食べ方をしていないからか、会話する余裕がある。
たとえば、ヘイニャさんについての最新情報。
「ヘイニャは来てすぐ、一緒に来た男と別れたそうニャ。理由はヘイニャのエンゲル係数の高さを知った男が、一緒に生活を続ける自信をなくして逃げたらしいのニャ」
確かにありそうな話だ。
なんて思いつつ、一応聞いてみる。
「そんなに食べるんですか、ヘイニャさんは」
「そうでもないのニャ。猫獣人の平均くらいニャ。私と同じくらいで、ホーニャよりは食が細いニャ」
いや、ミーニャさんと同じ位食べるのに、食が細いという形容詞を使うのはおかしい。
たとえ比較の意味で使ったとしても。
俺としては、相手の男性冒険者の気持ちがわからないでもない。
確かにミーニャさんくらい食べるのなら、普通の冒険者の収入では辛いだろう。
あと気になったので、確認してみよう。
「ホーニャさんは、そんなに食べるんですか?」
「5キロサイズのコイを、1日に5~6匹は食べるのニャ。でも身長は伸びないし太らないのニャ。全部胸に行っているのニャ」
5キロサイズを6匹なら、30キロになる。
もちろん骨とかエラとかヒレとか食べられない場所も多いだろう。
そうだとしても……
「食費は大丈夫なんですか?」
「だから養魚場をやっているのニャ。あそこニャら、それくらい食べてもニャんとかニャるニャ。それにホーニャがやるようになってから、コイの育ちがよくなったのニャ。あのエサも、ホーニャが作った畑や藻場、養殖したミミズで作るオリジナルで、効果抜群ニャのニャ」
適材適所というべきなのだろうか、これは。
あと全部胸に行っているというのは……
確かに身長の割に、かなり大きめだとは感じた。
でもそれ以上は、今は考えないことにしよう。
さて、昨晩と違い、ミーニャさんもだらだら食べ続けるのではなく、夕食をきっちり終わらせて帰るそうだ。
「今日からは、自分のベッドに帰らニャいとまずいのニャ。明日の朝から、危険ニャ時間に突入するのニャ」
何が危険なのかは、すぐにわかった。
でも食事終了後でも、食卓では言わない方がいいだろう。
「わかりました。明日の朝食はどうしますか」
「インガンダ・ルマは今晩で終わりのようニャ。ニャので、明日以降はここまで来る必要は、必ずしもニャいのニャ。明日の朝食以降は、家の玄関外に人数分の食事を宅配して貰えるのニャ。シーツや下着も1日1人3枚宅配してくれるのニャ。使用済みのシーツや下着も、その時に配られる防水布に入れて次回出せば、回収してくれるニャ。配給の食事では足りニャい時だけ、集会所に追加で食べに行けばいいのニャ」
なるほど。
「良く出来ていますね。家の中からほとんど出なくて済む訳ですか」
「そうニャ。動くと漏れるので、家から出るのは最小限にするのニャ。ただ今は動けニャいのニャ。ニャので収納して部屋まで運んで欲しいニャ」
これはまあ、昨晩というか今日の早朝と同じ。
ここへ放置するよりは安心だし、仕方ない。
「はいはい」
「私は後で自力で帰る。だから大丈夫」
アライアさんは消化器官が強そうだし、便利な魔法もそれなりに持っていそうだ。
だから心配はいらないだろう。
「わかりました」
ということで、ミーニャさんを収納。
アライアさんはそのままにして、ジョンと2人で家に向かう。
ところで何か、今日は疲れた気がする。
食事を食べるくらいしかしていないのに、何故だろう。
何となくジョンに聞いてみた。
「今日は祭で食べるくらいしかしていないけれど、何か疲れた気がする。俺だけかもしれないけれど」
「食べ過ぎたせいだろう。食べた物を消化するのは、けっこうエネルギーを使うらしい。だから何かありそうな時は、1回の食事量を減らして、そのかわり食事回数を増やせと教わった」
なるほど、そんなこともある訳か。
「知らなかった。食べ過ぎでも疲れるというのは」
「仕方ない。村での生活だと、食べ過ぎるほど食事があるなんてことは、まず無い。ただ狩人をしていると、たまに獲物の肉や脂分が余るほどある時がある。そんな時に、親父に教わった」
なるほど、ジョンの言う通りかもしれない。
なお俺の前世では……
食べ過ぎて疲れた実例は、結構あった気がする。
仕事が忙しいときは食べる暇どころか用意する暇もないから、食事を抜くことは珍しくない。
だから一段落した時に、つい余分に買い込んで食べまくって……
そんな後は、意識を失うようにばったり寝るなんてのがほとんどだった。
ばったり寝るというのは、仕事だけでなく、食べ過ぎで疲れたという理由もあるのかもしれない。
そして確かに今日、俺はあれこれ食べ過ぎている。
ミーニャさんやアライアさんと一緒に食事を取っているから少なく感じるけれど、考えてみればいつもの俺の倍近くは食べているようだ。
「確かにそうだな。これからは気をつけよう」
「まあ別の意味で気をつける必要があるようだけれどさ、明日からは。エイダンは魔法で何とか出来る様だけれどさ」
もちろんこの気をつけるというのは、漏れることについてだろう。
「ジョンはあまり食べていないから、大丈夫じゃないか?」
「だといいけれどさ。一皿だけでも、実はそこそこ量があっただろう。美味しかったし、後悔はしていないけれど」
そんなことを話しながら歩けば、家はすぐだ。
二階にあがって、ミーニャさんの部屋の扉をあけて、散らかっている下着類は見ないようにベッドに近づいたところで。
どうやらミーニャさん、朝のうちに準備をしていたなと気付いた。
あの黒い分厚い布のシーツが、既にベッドに敷かれていたのだ。
ミーニャさんは、昼はこの部屋に帰っていない。
だからシーツを敷いたのは、朝のうちだ。
俺が手出ししないで済む部分が増えて良かった。
そう思っておこう。
ということで、ミーニャさんを収納からベッド上に出す。
「ありがとニャ。あと服がきついのニャ。脱がして欲しいニャ」
昨日よりはよれよれではないので、少しましな口調だなと思いつつ。
「脱ぐのは自分でやってください」
昨日と同じように、そこで放置。
部屋を出て、扉を閉めて、自分の部屋へと向かう。
コメント
1件
うわー、お腹いっぱいで動けなくなるっていうあるあるを、猫獣人たちの個性豊かな食事情と一緒に描くのが面白かったです。ミーニャさんの「動くと漏れる」から明日の宅配・回収システムまで、祭りのあとの段取りがしっかりしていて、世界観の厚みを感じます。ホーニャさんの5キロのコイ6匹と養魚場の話とか、エンゲル係数で逃げた男の話とか、さりげない情報がキャラの掘り下げになってて好きです。