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翌朝も、明け方少し前に目覚めた。
半ば無意識で家の中の魔力を確認。
4人ともいるけれど、明らかに居場所が微妙な人が1人。
具体的に言うと、ミーニャさんの居場所がトイレになっている。
そして、動かない。
意識はしっかりある様だけれど。
きっとこれは、触れない方がいい奴だろう。
だから気にせず、散歩に出ることにする。
さっと着替えて、魔法で洗面その他全てを済ませて、トイレに近寄らない様にして外へ。
うっすらと、酸化した機械油の匂いを感じた。
ただそういった整備が必要な機械類は、まだホウトン村では見かけていない。
アライアさんが魔道具を整備したのだろうか。
それとも俺が知らないだけで、ホウトン村もそういった機械類があって、整備をしたのだろうか。
でも祭の後の夜に、わざわざ整備する必要があるのだろうか。
少なくとも昨日は匂っていなかったから、毎日整備する必要があるという訳じゃないだろうし。
ただ機械類には、前職での関係もあって個人的に興味がある。
ということで、匂いが強い方へと向かって歩いてみる。
あっさりと、祭の会場だったあの広場に到着してしまった。
機械油の匂いがかなり強いのに、該当する機械類は見当たらない。
見えるのは食事配給ブースと、テーブルと、食い倒れた猫獣人の皆さんだけだ。
何処に機械類があるのだろう。
あとこの匂いだと油が酸化しまくっているから、替えた方がいい気がする。
一度脱脂して、新たにグリスを塗りつけて。
ここは前世で使用した、臭源探知の魔法を使って確認するとしよう。
摺動部や熱で焼けたとか、絶縁が剥げて神力が短絡して焼けたといった故障箇所を探すのに便利な魔法だ。
そういえば保守費用をケチって、整備不良で神力機器をぶっ壊しまくる支部なんてのがあったなあ。
他の支部に比べてあまりに損耗が大きいから、監査を出して発覚したんだっけか。
壊れる度にに修理に行くのだけれど、毎度毎度保守担当に対して余りに酷い態度だったから、責任者が更迭されたと聞いてざまあみろと思ったけれど
なんてことを思い出しつつ、臭源探知魔法を発動する。
臭源反応があるのは、幾つかの椅子と近くの通路、そして一番強いのは、食い倒れて仰向けに伸びている猫獣人の皆さんの下半身と直近の椅子……!
俺は、理解してしまった。
この匂い、いや臭いは酸化した機械油ではない。
尻から漏れている何かの臭いだと。
魔法で確認すると、食い倒れている何人かの座面付近に、見かけは辛味油のような赤いものが漏れているのがわかる。
臭源反応は、まさにその赤いものに反応している様だ。
おそらくこれが、漏れ出したインガンダ・ルマの脂なのだろう。
生物的な臭いではなく、鉱物油系の機械油の臭いだけれど。
なんて思ったところで、ようやく俺の頭ははっきり理解した。
これは体内を通って、便と同じルートで出て来たブツの臭いだということに。
そしてその臭いに、現時点で包まれてしまっているということに。
『消臭殺菌魔法!』
反射的に魔法を発動する。
臭いは消えた。
と思ったら、またすぐ臭う様になった。
この程度の消臭魔法では、どうやら勝てない様だ。
ならとっておきの魔法を披露するとしよう。
『強力消臭殺菌魔法!』
ホウトン村の隅々に、俺の魔力と魔法効果が広がっていく。
これは、『空気中の臭いを分解するだけでなく、臭いの元となる物質も手当たり次第分解して臭いを完全に消し去る魔法』だ。
これで消えない臭いなど、世界に存在しない。
そう言っても過言では無い、最終消臭魔法。
俺の全魔力の半分くらいが、一気に持って行かれた。
そして確かに、臭いが消えた。
大分魔力を消費してしまったけれど、これで一安心だ。
そう思った次の瞬間、俺は気付く。
また臭いがしてきたことを……
そうか、俺は悟った。
臭いと臭いの源を一時的に完全に消し去っても、無駄なのだと。
何せちょっとでも時間が経てば、臭いの源が漏れてきてしまうのだ。
漏れる源を断たない限り、事態は解決しない。
しかし源=猫獣人の皆さん。
断つことは不可能だ……
◇◇◇
ミーニャさんとジョンがいるから、村から逃げ出すことは出来ない。
それに俺自身の身体からも、あの機械油の臭いがしている気がする。
漏らさなくとも、汗か何かがそういう体臭を発しているようだ。
それに安心のしるし・一晩中安心夜用超プラス長時間安心魔法でガードしていても、出したものは何処かで処分する必要がある。
いや、出したものではなく、出てしまったものか。
本当に意識せずに漏れ出てしまうから。
確認した際に、知らないうちに魔法でキャッチしていることに気付いて驚いたのだけれど。
家の中にいる時は、適宜『強力消臭殺菌魔法!』を発動させて耐える。
そして昼間は、極力村から離れる。
そうやってごまかして、そして一週間後。
「やっと赤い脂が混じらなくなったニャ」
「確かにああいう下着やシーツが必要だというのを、理解した。ただもう二度と理解したくはない」
「やっぱり効果は強烈。でも美味しかった」
そんな感想の3人と俺自身に『強力消臭殺菌魔法!』を発動させた後。
俺達はドーソンへの帰途につくのだった。
※ 現実のバラムツも、食べ過ぎると身体から臭います。そして臭いが酸化した機械油っぽいのも、色が辛味油(というかラー油)っぽいのも現実準拠です。
それ以上を知りたい方は、『バラムツ 漏れる』あたりで検索してみてください。何なら駿河湾あたりの釣り船に乗ってGetしてEatみてください。きっと後悔しますけれど……
(以上、自分の身体で確かめた作者より)
※ あと一話、おまけの話の後、しばらくこのお話は休止します。また時間が出来次第、再開する予定です。
コメント
1件
あっ、この話……なるほどそういうオチか(笑)「機械油の匂い」ってミスリードから、まさかのバラムツネタに繋がるとは思わなかったわ。ファブリーズとかリセッシュ除菌とか現実の商品名をそのまま魔法名にしてるの、ツボった。ラストの「もう二度と理解したくはない」には笑いと共感が同時に来た。こういう現実のネタをファンタジーに落とし込むセンス、好きだわ。おまけも楽しみにしてる!