五月目。
「太宰、大丈夫か?」
「はい、ええ、まあ」
覚束無い返事。
何時もなら、もっときちんと返事出来るのに。
そんな気力も湧かない自分に、限界を感じる。
もう無理なんだ。
怖くて、怖くて。
堪らない。
「太宰」
「はい」
後ろから呼び掛けられ、振り向く。
いつの間にか、唇を重ねていた。
ああ、きもちいい。
ここちいい。
この時間だけが、つづけばいい。
呼吸を忘れて夢中になっていると、顔を離される。
もう終わりですか?
そう強請るように見上げてみると、もう一度口付けをしてくれた。
あは、乱歩さん。
好きです、この世の何よりも。
どうすれば、この世を最初から始めることができるのだろうか。
そう、何でも知る名探偵に問いたくなったが、今はこの時間を堪能していたいのです。
貪欲になる自分を、許して欲しいと言う言葉は飲み込む。