「アック様アック様! 彼らは一体何者だったんでしょうか?」
「あぁ、それは……」
「アック! シーニャも聞きたいことがあるのだ! スキュラはどこにいるのだ? もう戻って来ないのだ? 人間のことを教えて欲しいのだ」
「わらわも、わらわも!」
まずは出会った人間を整理する。
レイウルム半島で出会ったのは地下都市で盗賊をしているジオラス、そして相方のアクセリナ。彼らからの依頼は剣士である弟のデミリスを探すこと。はぐれたシーニャとフィーサの二人は、デミリスと行動を共にしていた。おれはルティとアクセリナだった。
砦で再会を果たせたのは偶然とはいえ、上手く行ったといえる。それからザーム共和国の沢山の冒険者に薬師イルジナという謎多き女との遭遇か。まだ敵と認めたわけではないが、シーニャとおれだけが感じた黒い気配――あれは闇を纏う女だった。
いずれどこかで会う……いや、ザーム共和国の動向が気になっている以上、必ず会うことになるはず。そもそも賢者テミド・ザームの国だから何かあるだろう。
「ふんふん……?」
「レイウルムにもいずれ行くと思う」
「それがいいのだ!」
ザーム共和国と敵対するシーフェル王国はスキュラだった彼女が第二王女として、果たして潜入を果たしているかどうか。彼女と再会して、もう一度仲間に戻るかは不明だ。それにアグエスタで逃亡の手引きをしてくれた貴族騎士アルビン・ベッツの行方も気になる。願わくば、シーフェル王女と成り代わった彼女と行動していて欲しいものだが。
リエンスとかいう騎士見習いも今はどうしているのか。
「アック様! 襲って来た彼らは~?」
実力は確かだったがSランクの魔術師ヴィレム・バロシュという男。そして短剣使いのヘルガ・コティラという女は、獣狩りをしていた。だが力の弱い荷物持ちと回復士を引き連れていた辺り、何か目的があっての動きにも見えた。
おれの相手にはならなかったが、相性という点ではシーニャでは厳しかった。シーニャが弱いわけでは無いのは確かだが。そして気になるのは強化者の存在だ。
丁寧な口調の強化者だったが、大人しくしていたのが不気味だった。強化者としてのありがたみに加え、奴らが強気に出れない態度が分かりやすすぎた。
おれの目の前で忽然と姿を消した辺り、人という存在ではないと感じる。だが今の時点で敵とは呼べないだろう。
「イスティさまなら、何が来ても問題なの! でもでも、神族国家には注意を払って欲しいなの」
「たどり着いてから考えるよ」
「わらわを使いこなしていないイスティさまは、まだまだ全然なの!」
「……気を付けるよ」
これからも何者かに出会うだろうが、味方となることを願うばかりだ。
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